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土は素材か生き物か。(2)「アマゾン、人工森林説?」

畑の進出、森の出自

Google Mapで世界を散策すると、
世界の耕作地の多さに驚かされます。
砂漠、高山地帯に関係なく、地球の表面は畑だらけ。
その規模は寒気すら覚えるほどです。

そのことについて良し悪しを判断することは、
私にはできない。
寒気を覚えるくらいだから、良いとは思っていないけど、
そこに住む人の生活を考えれば安易に否定することが正しいとも思えない。

それに、おそらくは環境的要因が顕著な高温地や寒冷地では
大規模な耕作を行った形跡はあるものの、
耕作地として機能していないと思われる場所も少なくなかったりする。
場所を作ることはできても、
使い続けることは思った以上に難しいのかもしれない。

見えてる自然は自然じゃないかもしれない

近年になって、
失われ、埋もれた歴史の解明が進んできているけれど、
その中で南アメリカのアマゾンで興味深い発見が相次いでいるのだそう。

ナショジオだったかな。
南アメリカの国々が豊かになって多くの大学が創設されるようになり
そこで学ぶ学生たちの間で
自分たちのアイデンティティを探る取り組みが進んでいて、
それまで未開拓だったアマゾン地域の文明の調査を始めたら
鬱蒼とした森の下から広大な耕作地の遺構が次々と発見されているという。

最初は考古学的観点から調査していたけれど、
耕作地の可能性があるならと、植物学者も参加するようになり、
耕作地と思われる地域の植生を調べたら、
自生している植物の分布が自然界ではありえないものだった。

アマゾンは何千年か前は広大な耕作地で、
文明が滅びた後に今の密林ができたなんて、俄には信じ難いけど、
アマゾンの地層を調べると
ある地点で赤土が黒土に変化しているのだけれど、
その境目がくっきりすぎるのだそう。
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(土の境目については江戸時代の御殿場の開墾、農業の歴史に
 似たような地層があります。こっちは災害によるものだけど、
 土の境目ができるケースの一つとして参考になります)
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面白いのは、ユーラシア大陸では小麦を育てることに特化してきたため
整然とした畑作りがポピュラーだったのに対し、
南アメリカ大陸では、キャッサバやとうもろこし、パパイヤなどを
混植する農法が選ばれていたらしく、
それはアマゾンの植物の分布を調べることで解明されつつある。

驚くのは、耕作地だった期間が100年とかそんな短い期間ではなく
もしかすると1000年くらいは続いていたんじゃないかということで、
耕作ができるくらい人工的に堆肥を作り、使い続けてきたからこそ、
人がいなくなった畑の良質な土を糧にアマゾンの広大な森が
出現することになったんじゃないかっていう仮説が立てられている
とのことで、
土的にも歴史ミステリーとしてももの凄く興味深くてロマンがある!

なんてことが現在進行形で研究されているらしいので、
この仮説を信じるならば、現在の地球の不可能耕作放棄地も
どこかのタイミングで森化するなんてことがあるかもしれない。

本当ならね。

畑の土づくりはタイパかコスパか

アマゾンの出自が人工の畑だったかの真偽については
今後発表されてゆく研究結果を待ちたいところですが、
この話の中の、小麦耕作圏ととうもろこし耕作圏という
農法の違いって、もの凄く面白いと思うのですよね。

近代日本の農業形態は小麦圏的考え方に沿っていて、
そこに疑問を持った若い農家さんたちの農法はとうもろこし圏の考え方に
寄っていっている。
ガッツリ混植ではないけど、組み合わせ農法とか、
堆肥づくりに創意工夫を凝らすとかそういう方へシフトしてゆく
考え方の選択が特に日本人的で興味深い。

では、小麦圏的近代農業と、とうもろこし圏農業の明確な違いは何ですか?
っていうと、コスパか、タイパかってことになると思います。

何度も言いますが、どちらが正解かという話はしたくありません。
私はコスパよりのタイパを目指しているし、
主にその方法を広めたいという立ち位置です。

若干小麦圏的近代農業に否定的な書き方になるかもしれませんが、
本来、それも場所や、やり方次第では理にかなった方法だと思います。

全ての土地に対して共通する農法も、セオリーも存在せず、
土地や環境に左右されない農業はインドアプランテーションだけ
なんじゃないかなと思うけど、皆さんはどう思いますか?

コスパ農業のメリットは高い、その分リスクリターンも早い

ともあれ、コスパを追求する現代農業では、
どんな土地であっても、最初に土地自体を平均化するというか、
初期化するというのが基本で、平均的、画一化された土壌に対して
化成肥料や追加消毒を行い、平均的か、それ以上の収量を安定的に生産する
というのが定石なのだと思う。

土の初期化とは、耕作地から虫も雑草も排除して
土自体を徹底して殺菌消毒し、
自然の気候天候以外に関する全てをデジタル化というか、マニュアル化して
名目上は誰でも病気や虫害が少ない少人数でも回せる農業を実現するための
土づくりをすることで、
確かに、この方法は微細な鉱物の土さえあれば、
それほど知識がなくても、経験がなくても、どこでも、誰でも
農業ができる仕組みではある。
額面上は、限りなくコスパがいいこと間違いなし。

「鉱物の土さえあれば」というところが味噌で、
鉱物の土以外のものは薬品を使って死滅させることが正義だから、
土の汚染に関してはそこまで関心があるようには思えない。

極端な話、多少の毒が含まれていようとも、
物理的に食べ物が取れなかった地域で、食べ物が生産できるのであれば
それは良しとすべきかもしれないとも思う。

その結果が、農薬や殺虫剤の使い過ぎによる健康被害や
悲しい事件を引き起こしたこともあったけど、
空腹に起因する戦争や、貧困問題を考えると難しい問題でもあると思う。
ワンピースのワの国編みたいだな。

タイパ農業のデメリットは、長い目で見て人にも環境にも優しいのは確か

一方、土の初期化は取り入れつつも、一部の虫や、
ミミズの力を借りるなどして「生きた土」を目指し、
堆肥を利用した農法にシフトしている人たちは、
それなりの苦戦を強いられている。
なぜなら、耕作を行う上で、土の状態を自然に近づけるほど、
自然が畑に寄ってくるという現象が起こる。

消毒や殺菌を控えめにすると、
畑の周辺から、あるいは風や雨、鳥や虫などの媒介で
野菜にとって歓迎できない病原菌や、キノコ菌、害虫が
住みやすい土になってしまうから。

しかも環境要因による問題にも向き合う必要があるので
マニュアル農業化することが難しい。

正直、コンポストの正しい使い方は確立されているとは言い難いし、
何よりも管理がめんどくさい。

その上、堆肥の品質が一定ではないというのがこれまた問題で、
どうしたらいいのかわからなくなってしまう人も多いように思う。

しかし、西東京や世田谷(他にも頑張っている人はいる)の
気骨のある農家さんたち達のように果敢に挑み、
自身の土地の土と向き合えばタイパ農業は必ず応えてくれるというのも
揺るぎない事実だと思う。

使い古された言い回しだけれど、生きた土で作る野菜は、
安全で美味しく、環境にも優しい。

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