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高校無機化学#5(17族)~ハロゲン化水素①~

ハロゲン化水素とは、ハロゲン原子と水素が共有結合で結びついた分子の総称である。

概論

スクリーンショット (28)

ハロゲン化水素の特徴をまとめたのが上の表だ。

HFに注目してほしい。沸点は他の3物質より圧倒的に高く、溶解度は∞、水溶液は1つだけ弱酸性となっている。(表の赤文字部分)

このHFの特異性を理解するキーワードは、ずばり、「水素結合」だ。

まず、HFaqが弱酸性であることから説明しよう。

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上の図のように、HFはHFとの分子間に水素結合を形成している。したがって、HFが電離して、H+とF-になるには、H-F結合と分子間の水素結合の両方を切断するだけのエネルギーが必要となる。この分だけ、電離が起こりにくくなり、弱酸性となるのだ。

次に、沸点について。

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上の表の沸点の値を表に書くと上のようになる。

まず、沸点がHCl<HBr<HIとなる理由が分かるだろうか?ファンデルワールス力は、分子量が大きいほど、そして、分子の表面積が大きいほど大きくなる。ここでは、ファンデルワールス力が分子量の大きさの大小からHCl<HBr<HIとなり、沸点もこの順に高くなる。

したがって、HFの分子量から推測される沸点は表の緑丸くらいに当たる。しかし、前述の通り、HFは分子間にファンデルワールス力とは比べ物にならないほど強い水素結合を形成しているため、沸点は分子量から推測される値に比べて極めて高くなるのである。(緑矢印)

最後に、溶解度について。HCl,HBr,HIも極性分子であるため水によく溶けるが、HFはH2Oとの間に水素結合を作ることが出来るためいくらでも溶けることが出来る。

説明は以上。水素結合が物質の性質に大きな影響を与えるということが理解できたであろうか。

各論

①HF

(製法)

HFの製法は「フッ化カルシウム(ホタル石)に濃硫酸を加えて加熱」である。反応式は次の通り。

スクリーンショット (59)

この反応式を見て、ただの弱酸遊離反応だとは思わなかっただろうか。ただ、この反応には注意点がある。

先ほどのHFの性質を思い出してほしい。そう、HFの水への溶解度は∞であった。ゆえに、水溶液中でこの反応を起こすと、発生したHFはすべて水に溶けてしまう。これでは、HFを気体として取り出せず、製法として意味をなさない。

そこで、加熱して、水に溶けているHFを揮発させることにする。ここで、気をつけなければいけないことが1つ。弱酸を遊離させる強酸は気体となって反応系から取り除かれてはいけない。使用する強酸が気体となってしまうと根本的に反応が起こらなくなってしまうからだ。

そこで使うのが、濃硫酸H2SO4。のちに出てくるが、濃硫酸は不揮発性であり、気体となって出ていくことがない。これでめでたく、HFだけを気体として回収できる。

スクリーンショット (57)

このように、何らかの理由で、弱酸遊離反応のうち「濃硫酸を加えて加熱」という操作をして揮発性の酸を遊離させる反応をとくに、「揮発性酸遊離反応」と呼ぶ。(「濃硫酸の不揮発性を利用する反応」という表現がなされることが多い。)高校無機化学で覚える必要のある揮発性酸遊離反応は3つである。後の2つも、近々、でてくるのでセットで覚えよう。

ザッツオール。次回は、HFの性質から。では。

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