懐かしさも、切なさも、何もない6月
湿気混じりの6月の空気を少し吸い込んでくしゃみした。時折襲う悲しみがどれほど凡庸でどれほど切実か。それを忘れることのないように刻み込んでいこう。勝手に嘆いて、勝手に捨て去らないように。
「もうあの頃の僕じゃないですよ。」
15年振りに会った後輩が言った。
「上司が右向けって言ったら向きますもの。」
彼は当時かなりのパンクスで、攻撃的で人を寄せつけないような雰囲気を放っていた。
今はかなり落ち着いた雰囲気で当時の面影もない。
「世の中に簡単に揉まれてしまったんですよ。とんがって