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スタートアップの採用は、個別最適解を追求することが重要である。

こんにちは。3-thinkの小野です。スタートアップ向け採用総合支援サービス『Reesus』を運営しています。

スタートアップ企業にとって最適な採用手法とは何なのか。情報があふれ、施策がコモディティ化するなか、最適な採用手法を見極めて適切に実施していくことの重要性が年々高まっているように感じています。今回はスタートアップ企業にとって、採用の最適解とは何なのか。それを実現するためにはどういうプロセスを踏むべきかについて、私の考えを述べさせていただきます。

採用手法の選択に画一的な正解はなく、取捨選択とアジャストを "正しい順序で" 行うことが重要

スタートアップに限らず国内の採用手法は、エージェントやスカウトなどの多種多様なサービスが乱立しています。またVC各社のHR支援体制の強化や副業・フリーランス人事が増えてきていることもあり、採用に関する情報にも容易にアクセスできる状況となっています。

しかし、スタートアップ企業(中でもアーリーフェーズ)が最適な採用手法を選択するに当たり、「画一的な正解はないと私は考えています。つまりは、ある事業ドメイン、ある事業フェーズの会社であれば、この求人媒体を使うと上手くいく、この採用エージェントに依頼すればいい、このポジションを採用するならこの手法がいい、という型にはまった正解はなく、どんな手法が最適なのかは企業により異なります。

採用を始めたばかりの企業によくある失敗例として、とりあえず採用をスタートさせることを目的として、やみくもにHowに走ってしまうことが多く見受けられます。採用サイトやDeckを作ってみるものの、伝えるべき情報を求める人材に対して適切に伝えられていなかったり、必要以上のスカウトやエージェントを契約するもコストだけが膨らみ、本当に欲しい人が採用できなかったりという事例は多く見られます。

スタートアップが採用を始める上で重要な点は、どの施策を選ぶべきかというHowの部分よりも、そもそも何から手をつけるべきなのかというWhatの部分に立ち返り、正しい順序で採用施策を設計していくことです。その上で各種手法を取捨選択し、アジャストしていくことが採用施策の最適解に辿り着くために重要となります。

採用手法の取捨選択に関わる三つの要因について

採用手法の取捨選択と施策の設計に関わる重要なポイントについて述べたいと思います。Reesusでは、採用支援のご依頼をいただいた際に、要件定義の前に重点的にヒアリングしていることが三つあります。それは「事業内容」「ファイナンス状況」「ファウンダーの思想」です。この三つが採用手法の設計に大きく関わります。

まず事業内容についてです。事業の魅力が求職者に適切に伝わるかどうかは、採用成功に大きく関わります。そのため、自社の事業ドメインやプロダクト、保有している技術などが求職者に伝わりやすいか、興味を持ってもらいやすいか、それらを適切に発信できているかを客観的な目線で考えることは重要です。事業ドメインがニッチで企業理解が難しかったり、またそれを適切な伝え方で発信できていなかったりすると、求職者との距離が遠くなり、結果的に採用が難しくなります。採用サイトの文章や、ジョブディスクリプションの内容も含めて、事業の魅力をしっかりと発信できているかという点は採用の成否に大きく影響します。

次にファイナンスの状況です。直近の資金調達額やラウンドなどを伺い、採用にかけられる予算がどれくらいあるのかは、採用施策の選定に大きな影響があります。例えばシード期で資金も潤沢ではない場合、エージェントなどの費用が高額な施策は避けたい。また、一人を採用することで会社に与えるインパクトも大きいため、自社にフィットする人材を採用できるまで、予算をかけるよりも時間をかけて見極めることを重視した方が良いという場合もあります。あるいは本当にそのポジションを今採用すべきなのか、まずは業務委託や外部企業への委託からスタートするのはどうかを見直すことも場合によっては検討する必要があります。

三つ目にファウンダー自身の思想や哲学、つまり採用において何を重視するかという点です。とにかく早く採用可否の結論を出すことを目的とし、その結果と反応をもって素早くPDCAを回したいと考えるのか。または時間をかけてでもしっかりと納得できる人材と出会いたいのか、等によってアプローチは変わります。ただしアーリーフェイズの場合は、採用を現場任せにせず、代表が採用にコミットしていくことはとにかく重要です。社員を一人採用することの重要度を鑑み、最終面接までのコミュニケーションのプロセスや文脈を理解し、採用することのリターンとリスクも見極めた上で代表自身が責任持って意思決定することが必要になります。

Reesusが採用を支援する際は、これらの要因をもとにやるべきこと、やらないことを取捨選択し採用プロセスを設計しています。ただし、重要なのは、「どの施策をやるべきか」ということよりも、「施策をどういう順番で導入していくか」を設計し、試行錯誤を繰り返しながらアジャストしていくことです。

重要なのは採用手法そのものではなく、導入する順番である

採用施策をどういう順番で導入していくかについて、具体的な支援の事例をもとにご説明します。

一つ目は大学発の研究開発型のAIスタートアップの事例。支援を開始し、まず課題であると感じたのは企業の魅力を適切に表現できていないことでした。コーポレートサイトや求人票で自社の強みである技術力や事業・プロダクトの魅力がしっかりと表現できていなかったため、エージェントに紹介を依頼したりスカウトを送っても求職者から興味を持たれず、応募もスカウト返信も少ない状態でした。この状態で施策をやみくもに回しても、穴の空いたバケツに水を入れることになってしまいます。そこでまず採用の基盤を整えることから着手することに。Reesusのデザインチームと連携してコーポレートサイトの制作を行い、採用ピッチデックやジョブディスクリプションの内容も大きく見直しました。

同時にファウンダーの考え方にしっかりと寄り添いながら目線を合わせていくことも重要でした。ファウンダーと会話するなかで、選考プロセスの中で、現場から高評価であっても、ファウンダー自身が納得する人材を妥協せず採用したいという意向が強いことがわかったため、時間をかけてでも納得いく採用を根気強く行っていくことが重要だと判断しました。そのため応募者の数を増やすことよりも、いかに採用確度の高い人材に応募してもらうかを重視し、エグゼクティブ系のエージェントを中心に紹介を依頼等を通じて、複数名のCxO候補およびボードメンバーの採用決定に至りました。

この事例の場合は、総合型の求人媒体やエージェントを漠然と利用するよりも、まず基盤部分から見直し、情報を整えた上で採用確度が高い人に会ってアトラクトしていく、というプロセスを踏んだことが、成果に繋がったと考えています。

二つ目のバーティカルSaaSスタートアップの事例では、逆に短期間で採用可否のPDCAを回すことを優先し、成果を出すに至りました。その企業のファウンダーは採用のマーケット感をキャッチアップした上でいかに早く効率的に採用期待値を判断することを重視する思考であったため、ブランディングや採用の基盤作りよりも、数字に基づいてすばやくPDCAを回すための採用活動を設計していきました。

このポジションをオープンしたら何%の期待値で、いつまでに採用できるのか、それに必要な母集団はどのくらいかを算出し、エージェントやスカウトなど応募数が集まるオーソドックスな手法を用いて多くの求職者に会ってもらうなかで、採用の市場感や求める人材のレベル感をすり合わせながらスピーディな採用計画の達成を目指しました。

このように、アーリースタートアップの採用手法の最適解は画一的なものではなく、自社の課題やファウンダー思考によってまったく異なるため、適切な取捨選択とアジャストを行い、自社にとっての最適解にすばやく到達することが重要になります。

採用の最適解へ最短で到達することは、事業成長を大きく左右する

採用の最適解とはどういう状態なのか。あえて言うと「自社にフィットする人を、早く、最小のコストで採用し続けられる」というのが一つの答えなのかもしれません。しかしReesusが重視しているのは、採用目標人数の達成や採用施策を精度高く回すことだけではなく、本当に納得感ある採用を実現できているのかということです。ファウンダーが何を重視して採用に取り組むのかを明確にし、事業の内容を求職者にどのように伝えるべきか、自社のファイナンス状態に沿った無理のない手法はなんなのか、それらを試行錯誤するプロセスを歩めているかも含めて「最適解」だと考えています。その状態を実現するための大枠を高い精度で組み立てつつ、PDCAを最短で回し、ハンズオンで施策を実施していくところにReesusのアセットの価値があると思っています。

また当然ながら企業にとって人材を採用することはゴールではありません。あくまで採用は事業成長のための手段の一つです。しかし、採用の最適解が実現できていれば、事業課題や経営課題に対して割くことができるリソースが大きくなります。採用が上手くいかないままでは採用へのアテンションが高まってしまい、結果として本来取り組むべき課題解決が後手に回り、グロースしたいタイミングでリソースを割くことができないということになりかねません。そのため、採用の最適解に最短で辿り着くことは事業成長を大きく左右すると言っても過言ではありません。

Reesusが本当に目指しているのはスタートアップ企業の事業成長支援です。プロダクト、ファイナンス、組織など、日々さまざまなことに考えを巡らせているスタートアップの経営者が、より事業を左右する本質的な問題に思考を費やして欲しいという思いがあります。「この事業領域の、このフェーズであれば、今のタイミングで取るべき施策はこれだろう」という仮説を精度高く、最短で提示し、一緒に汗をかきながら事業成長に伴走したいと考えています。それがスタートアップ企業に特化して採用支援を行ってきた私たちの思いであり、価値だと自負しています。

まとめ

主張:
採用手法には画一的な正解はなく、取捨選択とアジャストを正しい順序で行わないといけない。

課題:
採用手法がコモディティ化し、共通解的な最適な施策設計が難しくなっている。

対策:
HowではなくWhatに立ち返り、自社の思想に沿った順序で施策を導入、実施する。

具体対策案:
 1. 事業内容、ファイナンス、ファウンダーの思想などをもとに手法を導入する順序を設計する
2. やらないこと、採用しないことも含めて手法の取捨選択を行う

採用総合支援サービス『Reesus』では採用課題の明確化から、最適な採用プロセスの段階的な構築まで、スタートアップ企業の採用力向上を一気通貫で支援しています。ぜひお気軽にご連絡ください。

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