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✴︎人間失格

4月のお供は太宰治さんの『人間失格』

わたし、春がだいすきで、いつもこの季節は駆け出したくなるほど身も心も軽くなって、世界の色もぐんと鮮やかになるし、たくさんの音が聴こえるようになる

なのに、どうしてそんなかろやかな季節にじっとり重たいこの作品を選んだのか、自分でもよくわからない


さておき、読んだ
衝撃だったのがひとの死だった

たった1行のあいだに、
たったの10文字のうちにひとが死んでしまって面食らった

あぁ、でもひとが死ぬことって、そうだよなあとも思った

死ぬことに付随する感情や記憶はたった1行でおさまるものではないかもしれない
けれども、ひとが死ぬ、その事実はたった10文字におさまるほどあっけないことなのかもしれない
自分が想像するよりも遥かに刹那のことなのかも

生きて死んでいくことは当たり前のことで、
例えば、宇宙が近すぎて いま自分が宇宙の中にいるということをつい忘れてしまうような、そういうことと似ている気がする


太宰さんの作品はほとんど初めて読んだのだけれど、ことばに温度が宿っていて、生きていた
生きていることばだと感じた
太宰さんが死して数十年、ことばとして生き続けているのだと思った

そのことばや感覚の生々しさはもちろん興味深いものだったのだけど、
ことばや内容より、文章構成(構図とも言えるのかな)がことば以上に物事を語っていてかっこよかった

例えば先にあげた、ひとが死んだこと
死んだということば以上に、その記述の短さ、簡潔さから死がどういうことなのかを想像した
そういうことが、読んでいるあいだ何度もあった

ことばで成り立っている物語でありながら、ことば少なな印象を感じるのが不思議
他も読んでみようと思う


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