何をするにも中途半端

今日は我が人生最悪の一日だった。

まず、朝起きて歯磨き粉と間違えて、洗顔フォームで歯を磨き、ワイシャツを着たらボタンが取れ、階段で躓き、財布を忘れてうちに戻り、それが元で会社を遅刻。上司に叱られ、LINEで彼女に別れを告げられ、スマホを落として画面が割れて、只今携帯ショップで修理を待ってるところだ。

あー、マジ、人生最悪の日だわ。

こんな日は憂さ晴らしに、映画でも観るしかない。パーっと派手な映画がいいな。洋画かアニメ。
オレはチケットと飲み物やお菓子を買い込み
座席に座った。
大音声と共に映画が始まった。主人公は会社員で、財布を忘れて、大急ぎで自宅に戻っている。

あはは。ダメだなぁ。コイツ！今朝のオレみたい。絶対遅刻だよ。だけどオレもダメだよな。出かけるとき、財布がカバンに入っているか、きちんと確認しとけば良かったんだよな。あと、やっぱり、PayPayとかああいうのスマホに入れといた方がいいのかなぁ。財布忘れてもなんとかなりそうだし。だけどオレ、スマホの扱い苦手なんだよね。だから彼女から、使えないとか言われるんだよな。あと、だらしないとも言われたな。部屋もさ、物があっちこっち散らばってて、ごちゃごちゃだから、洗顔フォームと歯磨き粉間違えちゃうんだよなぁ。それにしても、めっちゃ口の中、泡立ってた。うがいしてもなかなか泡が切れなくて、何回もうがいしちゃったよな。あれじゃ、財布忘れてなくても、多分遅刻だな。だけど遅刻したくらいで‥

こうしてオレは朝からのことをグダグダ反芻していると、突然スクリーンから、主人公の男の顔がにゅうっと、オレの目の前に突き出てきて、そして驚いてるオレに向かって、

憂さ晴らしに来たんだろ？だったら嫌なことは忘れて映画に集中しろ！こっちはな、お前の為に真剣にやってやってんだぞ！

そう言って、怖い顔でオレを睨み付けた。

（了）