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日本とドイツと米国の労働生産性からみた日本企業のあるべき姿

日本とドイツは、第2次世界大戦を同盟国として戦い、1945年に共にがれきの山の中から再出発した。終戦後、東側と西側に分断されかけ、日本はそれをまぬがれ、ドイツは東西に分割占領されてしまった。そういう意味では、復興へ至る道は、ドイツの方がより厳しかったように思う。その、東西ドイツの再統一は31年前の1990年のことだった。学生時代を冷戦終結前に過ごした筆者にとっては、それが実現される日が来るとは予想だにしなかった。

終戦から76年目を迎え、最近の日本とドイツとを比較すると

平均年間総実労働時間(2018)
日本 1,680時間 VS ドイツ 1,363時間 (参考に米国 1,786時間、実は米国の方が日本よりも長時間労働)

有給休暇
日本 20日与えられて取得は10日程度 VS ドイツ 30日与えられて完全取得(参考に米国は14日程度与えられて10日程度取得。言うほど休まない)

一人当たりのGDP(以下US$)
日本 41,420 VS ドイツ 49,690
ちなみに米国は、65,000 で、中国は 10,100 (米国と中国の国力の違い?)

国民性には大きな違いがあり、
日本は、仲間意識、ルールは場の雰囲気で決まり、公私の分別が不明確。
ドイツは、個人主義、ルールは規範に基づき、公私の分別が明確
といった違いがあるとなっている。

労働時間という観点でいうと群を抜いてドイツが効率的といえる。

日本とドイツ、日本と米国を比較し、国民性の違いや、法律を比較して、日本はこうあるべきといった記事を見るが、ここに記した国民性だけでいうと、ドイツと米国は全く同じだ。でもアメリカ人は有給を取ることに罪悪感を感じ、ドイツ人は感じない。米国には、有給休暇に対する法律の規制はなく、全く与えないという会社もある。日本は有給休暇に対する法律の規制があり、企業に対して取得を強制させようとまでしている。ドイツには法律による規制もあり、罰則もあり、有給を取ることに対する抵抗感がない。

日本ではアメリカ人はよく休んでいるという印象を持つ人が多いのではないかと思うが、実態はそうではない。わが社はドイツの会社と取引があるが、アメリカ人は、ドイツ人は休んでばかりで連絡が取れないと苦笑いをしている。でも必ずその期間他の人が、対応してくれる。アメリカはその人が休んでいるとちょっと仕事が止まることがある。

このように考えると、法律で規制する云々前に、社会環境、人間性などを整えないと、なかなか難しいのではないかなと思う。

休みを取るとやる気が無いように思われる、人に迷惑をかけるのではないかと思ってしまうという意見があるが、決してそんなことはない。考えようにもよるが、本当にそうならその人は全く休むことが出来ず、どんなプロジェクトにも欠かせない人間となる。とにかくまずは、こういった思い込み、これを払拭しないと...。決して不必要だから休んでいいなんてことはない。人間は休まないとダメな生き物なのだから。

会社の経営者は、社員がある一定の休暇を取っても、機能するようにするのが手腕であり、利益を社員の犠牲の上に成り立たせること自体がその企業の存在価値を薄める。実労働時間が短くても売上も利益も出せる経営体質が求められるものである。240日のうち20日を休みとして与えるのであれば、8%分余分に人を雇うか、8%分効率を上げるかどちらかしかない。企業が効率化で勘違いしているのは、目に見える効果だけで、それ以外を数値化しないことにある。また最近の企業はどこを向いて仕事をしているのかよくわからないところがあり、皆が株をやるようになったせいなのかよくわからないが、株主第一主義の会社が増え、社員や地域をおろそかにしてしまっているような気がする。社員が働きやすく、社員自身が評価する会社が何者にも代えがたいということを忘れてしまっているような。

筆者は人のことを断じ、代わりを務めるような能力はないが、それでも次のようには考えている。

会社は社員第一主義でないとダメだ。一方で社員は、会社第一主義ではだめ。会社のために仕事をするのではなく、自身と、顧客、利益を考えて仕事をすべき。

日本のようにみなで一つのものを成し遂げるなどという考え方は、達成感の共有は出来るものの、権利を主張する人ははみ出すことにならざるを得ないでも、人間としての権利が踏みにじられては本末転倒だと思う今日この頃。休みたい時に休める、でも少しばかり譲歩しして権利ばかり主張しないそういう社会の実現を目指したい。

ただ、本当に仕事が好きな人はどうしたらいいのだろう?


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