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ロードスターのすゝめ

マツダが30年以上前から出しているオープンカー、ロードスター。
ロータリーエンジンを搭載するRXシリーズと双璧を成していた、同社の二枚看板のひとつだ。
手頃な値段で車を操る楽しさ、そしてオープンエアの爽快感を味わう事ができる。クルマ好きの間ではオープンカーの代名詞になっているほど有名なので、詳しくない人でもどこかで聞いたことがあるかもしれない。

そのコンセプトは「人馬一体」。
自由自在にクルマを操る「楽しさ」をウリにしているのだが、ここが通常のクルマと大きく異なるところで、「楽しさ」という感性や感情に訴えかけるクルマを目指したのである。

最初のロードスターを作る時、マツダの開発陣はその落とし所を見極めるのに大変苦労した。開発前にマーケティングを行い、ある程度の需要は見込んでいたものの、はたして「自分たちが楽しいと思った車を作る」という開発者のエゴ丸出しで良いクルマが作れるのか。
そしてそんな車が本当に売れるのか。

それに当時はあまり予算も出なかった。
コスト削減のため、エンジンもボディも他車種から流用し、組み立てラインも専用ではなく他の乗用車と同じラインで作られる。
良く言えばコスパが良い、悪く言えば余り物を使って作ったツギハギのような車であった。

結果として、ロードスターはめちゃくちゃ売れた。


そしてロードスターは今日までにモデルチェンジを繰り返しながら、国籍や年代問わず様々な人たちに愛されてきたのだった。その証拠に世界で最も売れたオープンカーとしてギネスブックに載っている。

軽いボディ、シンプルで扱い易く小気味よい操作感、パワーが無い分回して遊べるエンジン。
日常使いでも十分荷物を載せられるスペースを確保しており、手頃な価格帯で売り出す事で多くの人に受け入れられた。

ちなみにユーノスロードスターは元々北米市場をターゲットにした車で、セクレタリーカー(勤め人の若い女性向けの車)として売り出された。
ところが思ったより色々な年齢層にウケてしまった…。
そこからが歴史の始まりである。

実のところ、ロードスターの魅力は世界中のユーザーによって語り尽くされているし未だ話が尽きない。もし、このテキストを見ている方がもし詳しい知識を得たいのであれば、他にも解説されているブログや書籍が沢山あるのでそちらを見て頂いた方が役立つだろう。
ここではロードスターに乗りたい方向けに、どんな人がどの世代のロードスターに向いているのかちょっとした解説をしたいと思う。

「誰もが幸せになる」が初代のキャッチフレーズ。

初代、ユーノスロードスター。
型式から取ってNAロードスターと呼ばれることもある。1.6リッターと1.8リッター仕様があり、人馬一体の始祖とも言えるその走りは色褪せない楽しさがある。

初代はリトラクタブルライトを装備した唯一無二のロードスターでもある。リトラの車にどうしても乗りたい!という方にはピッタリだ。
が、出鼻をくじくようで申し訳ないが、ここでひとつ哀しい事実を述べなければならない。
ここ最近、中古車市場でスポーツカー高騰している(2022年1月現在も)
もちろんロードスターも例外ではなく、30年以上前の車なのに状態の良い個体は200万後半から…と高額で売られていることもあるのだ。
酷な時代になったものだ。

安い個体を探すと整備不良であったり、内外装の状態が悪いものが多くなるので、自分で直せる方はレストア前提で買うのもいいかもしれない。
ちなみに部品はマツダが率先して復刻してくれているので、同年代の他スポーツカーよりは比較的維持しやすい方だったりする。
もし買うなら「主治医」を事前に見つけておくことだ。できればロードスターを専門に診てくれるお店が望ましい。
発売から30年以上経過し、もはや「歴史遺産車」と化してしまったNA。
コンディションを保つには手厚いケアが必要だ。
オイル交換をサボるようなオーナーには向いてない。
選択肢から外すべきだ。


次は二代目ロードスター。
型式から通称NBロードスターと呼ばれる。
排気量はNAと同じ1.6、1.8リッターの二種類。
このロードスターからマニュアルモデルは5速MTと6速MT(1.8のみ)を選べるようになった。

僕の一番好きなデザインのロードスター。かわいらしい姿をしているが、エアロ等で飾ると途端にイケ車に。著者的にはマツダスピード一択である。異論は認める。
あと昔のコルベットによく似てる。

こいつも一昔前はかなり安く買えたが、先述の価格高騰により少しづつ値段が上がってきている。
それでもNA よりは落ち着いているので買いやすいが。状態が良い高年式の個体は200万前後。
NBの車体そのものはNAと同じものを使用しているので実質バージョンアップ版と言えなくもない。そのためNAと共通のパーツがあり、流用し合う事ができる。ただし年式が古いものが大半(20年以上前)なため、NA程ではないが整備には気を遣ったほうが良い。

NBから1.8リッターエンジンに可変バルブタイミング機構が付いたためパワー感が向上している。
長距離ツーリングでは疲れにくく、追い越しなどもスムーズに行えるだろう。6速MTならある程度の燃費向上も期待できるか。

1.6リッターは複雑な機構が無い分レスポンスよく回る元気の良いエンジンで、純粋に走りを楽しみたい人にオススメできる。
5速MTはギア比も比較的ローギアードなので、気持ちよく峠を飛ばすなら最適だ(飛ばすな)
ぼくの友人にかなりチューニングを施した1.6のNBに乗っているやつがいるのだが、まさに峠専用マシーンといった具合で乗ってて非常に楽しい。
弄っても楽しい。
それがロードスターなのである。
もし死ぬほどお金持ちになっても、ガレージの隅に一台置いておきたい。
そんな魅力がある。


自分が一番オススメしたいのが現行型ロードスター。通称NDロードスター。

最近「990S」という豪華装備てんこ盛りのお得モデルが出た。かなりオススメである。

排気量は1.5リッターのみ。後述する電動ハードトップモデルは2.0リッターのみ。変速機は6MTとオートマがある。この代から5MTは完全に無くなった。
新車購入できるし、現行故にトラブルが少なく、中古車でも新車とほぼ変わらないコンディションの個体が多い。NDは初代ロードスターのリメイク版とも言える車で、人馬一体をモダナイズさせた新世代のロードスターだ。

値段も最初期モデルなら200万前半で買えるため、スポーツカーの入門には最適である。無理してNAを買うぐらいならこちらを買ったほうが絶対に良いが、NAならではの良さを求める人ならこの限りではない。どの世代のロードスターもそれぞれ個性がある。それは時代の要件だったりその時代の技術であったり、同じコンセプトで作られた車だが目指すところはただひとつ。
初代から受け継がれし「クルマを操る楽しさ」だ。
…が、古いクルマはカネが掛かる。外観に拘りがないならNDを強くオススメしておく。

幌車以外にもRFという電動ハードトップ仕様のNDもラインナップされている。こちらは少々値段は張るが幌に比べて排気量が上がり、ゆとりある走りを楽しむことができる。

RFは完全なオープンスタイルではなくタルガトップ


そしてNDを検討しているならもうひとつ提案がある。三代目のロードスター、通称NC ロードスターである。

実はRX−8とほぼ共通のシャシーを使っているため、非公式ではあるが一部のパーツを流用することができる。


排気量は2リッターのみ。変速機は6MTと5MT(幌モデルのみ)もちろんオートマもある。
2005から2014年まで生産されており、ロードスターフリークの間では2005〜2009年を「NC1」、2009〜2011年を「NC2」、以降2014年までのモデルを「NC3」と呼ぶ。
(NC1からNC2に移行期間に発売されたNC1.5というモデルもあるが長くなるのでここでは省く)
何故ここまで細かく分けるかと言うと、変更点が多いからだ。
特にNC1→NC2移行時にエンジンパーツ、内装、バンパー形状変更、足回りや変速機の改良などが一気に行われており、中古市場で価格帯が100万ぐらい違っていた(現在はNC1も値上がり傾向にある)
NC2→NC3移行時は更にバンパー形状変更、衝突安全装備が追加されている。

ここでひとつ申し上げておきたいのだが、変更点が多いといえど、NC1がNC2以降より出来が悪いわけではない。
マイナーチェンジ事にまるで新型車を出したような仕様変更をしまくるマツダが異常なのだ。
NC1を選ぶ利点としては、車体価格が比較的安く、改造範囲が広い所が挙げられる。例えばヘッドライトにイエローバルブを使えるし、中間排気パイプを触媒レスにする事ができる。(NC2以降は車検でアウト)
騒音規制が緩いのも見逃せないポイントだ。
弄ってサーキットをガンガン走りたいなら敢えてNC1を選ぶのもアリだろう。

NCロードスターにも電動ハードトップモデル、通称「RHT」があり、発売当時は世界最速で屋根の開閉が出来ていた(12秒)

何と、屋根を収納するスペースとトランクスペースは別々になっている。しかも幌モデルより収納量が多い。

NDと合わせてオススメしたいのはこのRHT モデルである。NDロードスターの電動ハードトップモデルの「RF」は新車で買うと400万超え。中古市場を除いても最初期型で安くても200万後半から〜300万と少し高い。NCのRHTだと200万前後で買えてしまうため、電動ハードトップを希望しているならオススメの選択肢にはなる。(NC1のRHTは更に安い)幌モデル同士の比較だと、NDの1.5リッターかNCの2リッターで差別化出来ているのでお好きな方を選べばよいだろう。実はNC2以降のモデルならND初期型と値段はそこまで大差なかったりする。

もしあなたに「ロードスターを手に入れるほんの少しの勇気」があれば、きっとあなたの人生は幸せなものになるだろう。
確約はできないが、あなたの車に対する価値観はきっと大きく変えられることは間違いない。
なぜそう言えるかって?
答えはぜひあなたがロードスターを所有して、運転して確かめてほしい。
なぜならとても言葉で表せないから。

ロードスターを運転していると「繋がる」瞬間をしばしば体験する。
まるで自分の手足がロードスターと繋がるような、まさに「人馬一体」をその身で味わうのである。
その瞬間、何とも言えない高揚感と気持ちよさに包まれる。
そう、自分もロードスターに価値観を変えられたひとりだ。

こういう文章を書いていると乗りたくなってくるから始末が悪いものだ。



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