見出し画像

宅地建物取引士試験合格までの道のり㉘

第2部 宅建業法⑪ 宅建業者自らが売主の場合にかかる制限

その1 売主制限の意義と内容について

§宅建業者自ら売主制限の意義

宅建業者が自ら売主となる場合に、買主が宅建業者ではないことで悪意により買主へ不公平な取引を持ち掛けることを防止するため8種類の制限を設けることとしたのである。

§制限の適用範囲

先ほどの意義に触れたように、無知な取引先(宅建業者)に不公平な取引を持ち掛けないようにする事を目的とするため、適用範囲は売主が宅建業者であり、買主が宅建業者でない場合に適用となる。

§8種制限の内容

8種類の制限内容とは下記

①クーリングオフ

②予定損害賠償額の制限

③手付額と手付の性質についての制限

④手付金などの保全措置

⑤宅建業者所有でない物件の契約制限

⑥契約不適合担保責任の特約制限

⑦割賦販売解除などの制限

⑧所有権留保の禁止

以上が、制限となる。

その2 8種制限①(クーリングオフについて)

§クーリングオフって何?

クーリングオフとは消費者が無条件で契約を解除できる制度である。※契約解除による損害賠償発生もなし。

§クーリングオフができなくなってしまう契約の場所

申込や契約締結の場所によって、クーリングオフが適用できません。下記の場所では適用外である。

①宅建業者の事務所

②専任の宅建士設置義務のある案内所※簡易案内所は対象外

③売主依頼による媒介業者①と②

④買主指定の勤務先・自宅など

※申し込みと契約が異なる場所である場合には、申込場所で適用か否かを判断する。

§クーリングオフができなくなってしまう要件

下記の要件が満たされた場合には、適用外の場所に関わらずクーリングオフが適用とならない。

①クーリングオフについての説明と書面での通知を受け取った日を含めて8日を経過してしまった

②買主が目的物の引渡しをしてもらい、且つ代金を全額支払ってしまった

以上、2点のいずれかの要件を満たした場合にはクーリングオフは適用外となってしまう。

§クーリングオフの仕方と効果の発生時期

クーリングオフは書面で行い、その効果の発生時期は書面を交付した時に発生となる。

§クーリングオフ適用となった場合

クーリングオフ適用となった場合には、売主は速やかに代金を買主に返還し損害賠償や違約金の一切を請求できない。※無条件での契約解除なので買主に不利な特約は無効となる。

その3 8種制限②(予定損害賠償の制限)

§損害賠償の規定(民法)

権利関係で学びましたが、損害賠償額は事前に決めておくことができ、損害が実際に生じた場合には決めておいた額となる(増減なし)が決めていなかった場合には実際に被った損害賠償額を算定し賠償額が決まる規定となっている。

§損害賠償の規定(宅建業法)

先ほど民法での損害賠償請求に関しての定めについて触れましたが、宅建業法にある自ら売主制限に関わる損害賠償額には制限があり、予定する損害賠償額・違約金等の合計額が代金の10分の2を超えてはならない(超えた分は無効)とする制限がある。※予定額が決まっていない場合には、民法が適用となり実損分を算定し賠償が決まる。

その4 8種制限③(手付額と手付の性質についての制限)

§手付の性質の制限

手付の取扱いに関しては当事者間で決められますが、自ら売主となる場合には解約手付での取決めのみの制限となる。※買主に不利な特約は無効

§手付額の制限

宅建業法の自ら売主となる場合には、手付金額は代金の10分の2を超えてはならないとされている。※超えた分は無効となり返還しなければならない。

その5 8種制限④(手付金などの保全措置)

§手付金と中間金

8種制限には契約時から引き渡し登記までの間に支払いのある手付金と中間金(手付金など)を保全する義務がある。

§手付金などの保全措置の目的と方法

保全措置とは、契約後などに宅建業者に問題があり目的物の引渡しができなくなってしまった場合に、既に支払ってしまった代金の一部(手付金など)を返還できるように整備しておく事をいう。※宅建業者が保全措置を講じない場合には、買主が手付金などの支払いをしなくても債務不履行とはならない。

保全措置の方法として未完成物件か完成物件かにより可能か否かが変わってくる。

①金融機関保証委託契約→未完成物件〇 完成物件〇

②保険会社保証保険契約→未完成物件〇 完成物件〇

③第三者機関への手付金等寄託契約→未完成物件✕ 完成物件〇

以上が、保全措置として可能か否かになる。

また、特定の要件を満たすと保全措置を講じなくてもよいとされている。下記

①手付金・中間金の合計額が少額

未完成物件→代金の5%以下、もしくは1000万円以下

完成物件→代金の10%以下、もしくは1000万円以下

②買主が所有権登記をした場合

以上、いずれかの要件を満たした場合には保全措置は必要ない。

その6 8種制限⑤(宅建業者所有でない物件の契約制限)

§民法の解釈と宅建業法の解釈

他人物売買は、民法では有効である。しかし宅建業法で自ら売主となる場合には原則、他人物売買は無効となる。

§他人物売買の特例要件

先ほど、宅建業法上で自ら売主となる場合には他人物売買は禁止とされていたが一定の要件を満たした場合には有効となる。それは、目的物の所有者と宅建業者との間で目的物の取得契約又は取得予約をしている場合には買主と宅建業者での売買契約は有効となる。※所有者と宅建業者との間での停止条件付契約においては特例とはならない。

§未完成物件の特例要件

宅建業法上自ら売主の場合、未完成物件を売ることは禁止となっているが、一定の要件を満たす事により可能となる。下記

①手付金などの保全措置がある場合

②手付金などの保全措置要件を満たしていないとき(講じる必要がない)

以上となる。

その7 8種制限⑥(契約不適合担保責任の特約制限)

§民法の解釈と宅建業法の解釈

民法では、契約不適合担保責任を負わないとする特約は有効となっているが宅建業法上の自ら売主の場合ではこの特約は無効となる。

§特約制限の内容

宅建業法上自ら売主の場合、契約不適合特約は民法よりも買主にとって不利であってはならない。(民法は不適合を知った時から1年間の責任)

しかし、特例があり引渡しから2年以上とする担保責任の特例は有効とされている。

その8 8種制限⑦(割賦販売解除などの制限と所有権留保)

§割賦販売とは

代金を1年以上の期間で2回以上に分けて支払う方法をいう。現在、不動産取引においては銀行などの住宅ローンなどを用いて一括で業者に支払いをするのが主となっている。

§民法の解釈と宅建業法の解釈

民法では、代金の支払いがされない場合には相当期間を設けて催告しそれでも履行されない場合には契約解除となる。

宅建業法上の自ら売主となる場合には、詳細になっており30日以上の相当の期間を定め、書面で催告し、それでも履行されない場合には契約を解除できるとされている。

§所有権留保の要件

宅建業者は買主から代金の10分の3以下しか支払われていない場合には宅建業者の所有権留保が認められている。※それ以上の支払いの場合には買主に所有権移転をしなければならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?