ビギナーちゃん

ろくに運転をしないうちに、免許取得から1年が経ってしまった。

この間、車の運転をしたのはわずかに一度。
帰省の際に中国山地の合間を軽自動車で走っただけだ。


免許取得後1年という節目は、多くの人たちにとっては嬉しいものなのだろう。しかし僕にとっては都合が悪いばかりの節目である。

僕を悩ませる最たる問題が、「初心者マークをつけることができなくなる」というものだ。
これは免許を取りたての頃から運転をしてきた新人ドライバーの皆さんにとっては嬉しいことなのだろうが、僕のようにこの期間まったく運転をしなかった人間にとっては大変な問題なのだ。


初心者マークの効力は凄まじいものである。

人によっては初心者マークをつけた車に対して意地悪なことをするドライバーもいるのだろうが、そういう連中はだいたい細々としたしょうもない自損事故を繰り返しているようなどうしようもないやつらなので放っておいていい。
そういうことをする連中の車は、だいたいバンパーが凹んだままになっている。


そうではない多くの熟練ドライバーの皆さんは、少しぎこちない運転をする車がいてもあのマークがついているのを見れば納得してくれるものだろう。

トロい車に対しては車の中でボロカスに文句を言う僕の母も、初心者に対しては優しい。
右折に手こずっている初心者を見ると「今!今よ!」などと、これまた車の中で励ましている。
これがお年寄りだった場合は…まぁ想像してみてもらえればいい。

とにかく、多少オヨヨな運転をしても広い心で許してもらえるのが初心者マークの効力であり、初心者の特権なのである。


だから新米ドライバーはこの期間を利用して堂々と運転の実践練習ができるわけだが、僕はそれができないままにその特権を奪われてしまったことになる。

これは非常に由々しき問題で、僕の運転スキルは初心者と同等なのにもかかわらず、世間からは初心者だという扱いを受けることができなくなってしまったのだ。

高齢者マークのように自己申告でいつでも付け外しができる仕組みならまだしも、初心者マークを付けられる権利を有しているのは最初の1年限定だというのも不親切である。
1年経っても上達しない人だってたくさんいるだろう。


だから僕は、あれを「初心者マーク」ではなく「自信ないですマーク」にしてくれればいいのにな、と考えている。

初心者だからといって誰もが運転が下手なわけではないし、逆に何年も乗っているのにド下手なドライバーもいる。
そういった中で普通の車がトロいと皆がイライラするし、初心者マークに追い抜かされると「なんじゃコイツ初心者のくせに」となる(?)

また、どれだけ運転に慣れている人でも、初めての土地での運転は戸惑うことも多いだろう。
例えば、普段田舎で暮らしている人が都会の片側4車線みたいなのにすぐ適応できるとは限らない。
だから、普段はつけずに慣れない土地でだけあのマークをつける、といったことも可能になればいいのではないだろうか。

結局のところ、他のドライバーに伝わるべきなのは「あの車は運転に自信がないんだな」ということだ。
それがわかれば、運転が得意な人も不得意な人も、初心者も熟練ドライバーも、誰もが気持ちよく運転を楽しむことができるのではないかと思っている。


ただ、こうなったら向上心のない僕はあのマークにものを言わせてまったく運転を練習せず、バック駐車でもたついたり発進時にエンストを連発したりすることをよしとしてしまうだろう。

それどころか、常にあのマークを自分の背中に貼って、あらゆることに対して「僕、あんまり自信ないです~」という言い訳のための道具にしてしまうかもしれない。


じゃあダメかー。


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