NPOは「対価」を用いた寄付募集ができないのに、ふるさと納税を使えば可能になることの是非について
2024年1月5日
(1/7微修正)
この記事の補足です。
寄付には現物寄付等もありますが、以下で述べているのは主に現金での寄付を指しています。
① NPOの寄付募集に関する「対価」提供の制限
以下2つの資料が優れていますので、興味がある方はご覧ください。
https://www.npokaikeikijun.jp/wp-content/uploads/kifu-taika-paper.pdf
原理原則の話ですが、寄付という行為は無償で行われる行為を指します。よって、対価がある場合は寄付と認められません。
これは別にNPOへの寄付に限った話ではありませんが、わかりやすく定義されているのでNPOを事例に見ていきましょう。
まず内閣府のNPO法のQ&Aを見てみましょう。質問内容自体は認定NPOの認定基準についてのものですが、寄付の対価性をどのように判断するかが書かれています。
もう1件、今度は法律ではないですが、NPO会計に関する考え方が示されているNPO会計基準より。(長いので読み飛ばしてください)
以上の通り、NPOが単独で自身と関連が薄い返礼品の提供による資金の獲得を意図した場合は、寄付者は税控除を受けられませんし、受け入れた資金も収益事業収入として納税対象になります。
要は実施するのは難しいということですね。
対価の伴う寄付が非課税事業収入にならないという考えはNPO以外の公益目的の任意団体や一般社団法人の収入もそうです。
② ふるさと納税の「寄付」としての性質
ふるさと納税も「寄付の対価」を認めないという原則は例外ではなく、返礼品はあくまでも自治体の「お気持ち」という扱いです。
「お気持ち」の範囲は寄付金額の30%までとかなり大きく、実質的には「対価」なのですが、まあそういうものですから仕方ありません。
自治体が自身で返礼品を設定して寄付を集めて、自治体のために使うのであれば別に「それはそれでいいか」という感じではあります。
またNPO等への支援についても、『自治体が』集めた資金をNPO等に交付金として振り分ける分は別に構わないと思います。
しかしながら、一部自治体ではNPO等自身が独自の返礼品を設定することを認めています。
外形的には消費者から集まった「寄付」は自治体へ向けられたもので、自治体はそれを原資にしてNPO等に交付金を別途支給するという立てつけではありますが、「魅力的な返礼品があります!」で寄付を募る場合はどう見ても実質的に資金が集めたのは返礼品を送るNPO等ですよね?という話です。
NPO等が寄付を集めるにあたって「対価」に該当する返礼品は認められませんが、ふるさと納税を介した場合は寄付額の30%までは返礼品という実質的な「対価」を送ることができるのは妙な話です。
ふるさと納税の寄付先に指定されたNPO等は返礼品を活用できるため、他の団体よりも有利に資金を集められるということになります。
③ 補足
上記は主に返礼品ありのふるさと納税のことを扱ってますが、返礼品を抜きにしてもふるさと納税による集金は効率が良いです。
認定NPOへの寄付は控除を受けられますが、ふるさと納税よりも控除率は悪いです。
また、認定NPO以外のNPO、一般社団法人、任意団体等への寄付はそもそも控除の対象になりません。ふるさと納税を介せば控除を受けられますし、返礼品があれば二重にお得。
ふるさと納税の趣旨は寄付対象の「自治体を応援」することです。返礼品の有無に関わらず、特に大手のNPO等が大々的に広告を打ってインフルエンサーを動員して単なる活動資金(特にその自治体に関連しない活動のための資金)を募ることについては特に慎重に判断されるべきでしょう。
④ まとめ
ふるさと納税を使えば対価を提示して寄付を募ってもオーケーになる仕組みについて、NPO等への本来の意味での無償の寄付文化を壊すことに繋がると批判的な見方も多いようです。
「ふるさと納税を通して寄付をすれば返礼品ももらえるし、有利な控除も受けられる。控除が不利な認定NPOへのただの寄付や、そもそも控除されない普通のNPO、一般社団法人、任意団体への寄付なんて馬鹿馬鹿しい」と考える方が多くなれば、ふるさと納税に参加できないNPO等へ資金が集まらなくなるかもしれないという危惧は理解できます。
ふるさと納税の「自治体を応援」という趣旨を満たさない、単に活動資金集めのツールとしての脱法的な活用が許されてしまうと、自治体に無理を通すパワーを持たない団体の資金調達が非常に難しくなります。
そういう脱法行為を許容して行き着く未来は、行儀の悪い少数の大手団体による、公金や寄付金などの慈善資金の寡占です。
昨今のふるさと納税に関する話題を考える上で、一応知っておいた方が良いと思いましたのでまとめました。
以上
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