暇空Colabo裁判の感想と本件の生活保護費について若干の補足

7月19日

この件、判決が出ましたね。
第三者として感想をつらつらと書きます。

1、判決について

  • ざっくり言うと被告(暇空さん)は原告(Colabo側)へ計220万円を払えという判決が出ています。

  • 裁判では被告側の情報発信を具体的に「狭い部屋に3人を押し込めていた(タコ部屋)」「Colaboは生活保護費から65000円を取って私益を図っていた」ということの事実の適示として扱っており、当該『事実』を暇空さんが証明できなかったのが名誉毀損が認められた主要因の一つということになっています。

  • Colabo側はこの動画の1時間14分くらいで、その辺りを説明しています。

  • 動画を見るのがまどろっこしい方は文字起こしを何となく読めば良いと思います。

  • 被告側は当該情報発信はあくまでも公開情報をから組み立てた意見論評であること。

  • またその具体的事実は立証できないにしても、当該意見論評に関係する別の不正の事実等はあった?(※詳細不明)ことや、当該動画発信等は公益に適う活動であること、仮にそれで原告の社会的評価が下がったとしてもその原因の一部は原告にあること等々の理由で、名誉毀損は成立しない等の主張をしていましたが、それは認められなかった形です。

※以下記事の墨塗り部分に当該主張がある様子です。真偽不明。

  • 若干正確性に欠けるかもしれませんが、数行で説明するとしたら大筋ではこの読み方で合っていると思います。

  • 被告側は上告するようですので、地裁では考慮されなかった部分が高裁で考慮されるかを注目したいと思います。

2、生活保護費について若干の補足

  • 個人的には生活保護費の一部の扱いについてはやはり適切ではない可能性があるので、判決の中で汲まれても良かったのかなあ?という気はしています。

  • 生活保護費の住居扶助費に関して、生活保護者とそれ以外の賃料に差をつけるのはいいの?という疑問を既に以下の記事にまとめています。

  • さらに付言しますと、原告側は家賃に加え「光熱費、インターネット代、お米などの提供食品や生活支援などのサポートを含めて」、生活保護を受給していない入居者は3万円が基本、生活保護受給者の家賃は53,700円と裁判で表明しています。

  • もちろん、あえて生活保護受給者から徴収している費目を「家賃」とだけ書いているのは意図があってのことだと思いますが、別途それ以外の利用料等の名目でお金を徴収していないとも述べている以上、「光熱費、インターネット代、お米などの提供食品や生活支援などのサポート」もそこに付随しているとも読み取れます。

  • 53,700円というのは文脈からも「住宅扶助費」であると読んで良さそうです。

裁判資料より
  • しかし「住宅扶助費」は「純粋な家賃のみ」と解されて運用されているのが実情なので、ちょっと危なっかしさを感じます。

  • この東京都の答申がわかりやすくまとまっています。

↑の52番ですね。
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/12houmu/pdf/toushinnaiyou/28/52.pdf

上記URLより
  • 「共益費は住宅扶助費から賄ってもいいじゃん」という主張が「共益費等は生活扶助費から支出されるべきものだ」「家賃の中に家賃以外の費目が含まれているなら、それらを差っ引いて住宅扶助費を支給すべし」ということで退けられています。

  • 現実的には家賃との垣根がないに等しい共益費ですらそうなのですから、「光熱費、インターネット代、お米などの提供食品や生活支援などのサポート」等の費目については明らかに住宅扶助費で賄うのは不適切に見えますが、どうなんでしょうか。

  • 通常は生活扶助費から賄うべき費用を住宅扶助費から支出させてしまうと、生活扶助費の一部を二重取りさせていることになりますので、問題があるように見えます。

  • 特定団体(原告)の支配下にある物件の入居者の家賃が生活保護を受給していなければ3万円、生活保護を受給していれば53,700円ということは明らかになっています。

  • 被告側から見ると、標準家賃を3万円として考えると、「賃料相応以下の狭い部屋に住まわせた」(≒タコ部屋)、「53,700円と3万円の差額を収奪した」(≒生活保護費の収奪)という主張は成り立たなくもないかもしれません。

  • また住宅扶助費に生活扶助費を実質的に含めることにより、生活扶助費を二重取り「させている」という事象も、この見方が正しければ不適切ではありますから、これらが意見論評の結果として出てきたことは裁判で評価できなくもない気はします。

  • 特に「生活支援サポート費用」は原告側の手間賃という位置づけでしょうから、これを住宅扶助費から取っていることは、被告側が主張する「原告は生活保護費で私益を図っている」ことと整合してしまわないか、心配です。

まとめ

  • 2022年秋頃の被告の情報発信は今と比べるとかなり先鋭的でした。東京都という権力と戦うために世論に働きかける必要があった等の意義を勘案しても、問題がないわけではありません。

  • また生活保護費の扱いについては、個人的には上記の通り問題がないではない気がするのですが、今回の判決を見るとそこは考慮されておらず、単に「被告の情報発信は意見論評ではなく事実適示であり、かつ当該『事実』は事実ではないので名誉毀損だ」等として結論が出されています。

  • この捉え方が覆らなければ高裁での見方もまた厳しくはなるでしょう。

  • 被告側がどのような戦略で高裁で戦うのか注目したいと思います。

以上

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