#15 これが、イチャイチャなのか?
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青丹の顔が頭のてっぺんに押し当てられている
頭のてっぺんが生温かくなって息がかかっているのがわかる。
状況の把握が出来ずに体は硬直。
でも、私は青丹より年上だし、狼狽えちゃいけないんだ。
『当たったって、こんな感じ?』
『あ~うん、そうかな』
『楽しいんだ?』
『さぁ、今は・・うん、どうだろう』
とにかく慣れてないことに気づかれてはいけない。
息が上がってきて、みぞおちがあがってくるような
むずむずする感覚に襲われてパニック状態になっていることを
隠し通さないと!
何度か頭のてっぺんに唇が押し当てられたかと思ったら
青丹の唇が頭のてっぺんから降りてきた!
もう、どうしよう!
青丹の唇が私のおでこに押し当てられている。
『楽しい?』
青丹は唇を一つ押し当てるたびに聞いてきた。
『ん・・多分』
一つ、一つ
『楽しい?』『ここは?』
『・・大丈夫』
突然、唇の動きが止まったと思ったら
寝息が聞こえてきた。
芝居の稽古、ダンスクラブ、珊瑚さんの部屋
青丹は稽古の前に大学にも行っていたんだろう。
疲れていたのか、ちょっと体をゆすっても目を覚まさなさそうだ。
でも、でも、とにかく助かった。
これ以上は、やばかった。
大学生で年下で弟みたいな存在でも
経験値はわたしよりはるかに上だった。
ちょっとひょろっとしているけど、筋肉のある二の腕
見上げると顎先までで、塩顔の端正な顔は見えなかった。
青丹の顎から首元までが私の鼻先にあたる。
青丹のくせに!と思いながら
私も青丹の首元に唇を押し当てた。
青丹が目を覚まさないのを確認してから
鎖骨の近くある黒子にも唇を押し当てた。
もう外が白んで部屋まで明かりが入り込んでいた。
電車は動いているはず。
私は二人を起こさないよう慎重に体を起こし珊瑚さんの部屋を後にした。
青丹は、1限に間に合うかしら?
靴を履きながらチラっと思ったけど
おでこに唇を押し付けた罰だ。遅刻もいいだろう。
問題は『今日の稽古でどんな顔して会えばいいの?』
青丹との出来事は男慣れしていない私にとって
衝撃的だった。
イチャつく、とか耳にしたことはあるけど
東京の人はみんなこんなことしてるの?
こうやって密着した後、会社や学校では普通に過ごすんだ?
わからない。
頭の中だけで色々考えすぎたのと、ダンスクラブや青丹との緊張感で私もやっぱり疲れていた。始発に近いガラガラの電車に乗りこみ呆けていた。
考えてもわからない。そして、とにかく体中が汗とタバコと酒臭い。
早く帰って、シャワーを浴びて横になりたい。
もう簡単な事しか考えられないし。出来る気もしなった。
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