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石上車輌株式会社(代表取締役社長:石上義高)

会社名:石上車輌株式会社
住所:北海道札幌市清田区美しが丘1条4丁目1番12号
代表取締役社長:石上義高
創業年:1971年(創業者:石上満)

【会社のあゆみ】経理畑の祖父が脱サラし”自動車解体業”をスタート

札幌市に本社を構える石上車輌株式会社は、自動車解体業をはじめ、中古車販売やスポーツ用品のリサイクルショップの運営など、多岐にわたり事業を展開しています。
現社長の祖父であり創業者である満さんは、もともと大手企業の経理部長だったそうですが、ある時「これからは自動車業界が伸びる!」と脱サラし、自動車解体会社を創立。そして、いずれ会社を継ぐことを意識していた現社長の父であり現会長の剛さんは、20代後半で自動車ディーラーを退職し、中古タイヤショップを始めたそうです。
しかし祖父の満さんが亡くなり、父の剛さんが会社を継ぐことになった際、”3ヶ月で黒字転換できないと倒産してしまう”という状況が発覚したといいます。
「当時、解体用に保管されていた自動車が1,000台ほどあったそうですが、父は解体業だけでは黒字転換は難しいと判断したそうです。祖父の生命保険を充てても厳しい状況だったといいます。ただ、その時の3ヶ月を私たちは『奇跡の3ヶ月』と呼んでいます。相当厳しい状況だったにも関わらず、当時の社員全員が夜遅くまで毎日がむしゃらに働いてくれたおかげで、今があります。また、その時の1,000台の中にまだ走行可能で車検が付いていた車があり、日めくりカレンダーをプライスボード代わりにして(「30日」は「30万円」等)その車に付けて並べたことが、現在の中古車販売事業にも繋がっているんです」

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【会社の転機】社長室の窓から眺めていた4,000坪の倉庫

「祖父が創業したのが恵庭市ですが、会社の敷地が都市計画の対象となってしまい、引っ越しを余儀なくされたんです。市から提示された移転先が『山奥』と『工業団地1,000坪』の二か所で、最終的には工業団地を選択しましたが、当然工業団地のほうが土地代が高く、資金調達にかなり苦労したと聞いています。融資を受けるにも事業計画書などもなかったので、作成から始まり、本当にたくさんの方のご協力のおかげで事業の発展ができているんです」と石上社長は話してくれました。
移転後の社長室の窓からは、隣の会社が所有する4,000坪の倉庫が見えたそうです。約1,000坪からスタートし現在は約17,000坪まで成長できている背景には、「いつかはあの倉庫を絶対手に入れたい!」という現会長の強い想いがあったといいます。

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【会社組織運営】創業50周年を迎え、改めて”全員がやりがい・生きがいをもって働ける会社作り”をテーマに

現在、業務の内製化や社員向けの研修に力を入れている石上車輌。「特に幹部研修に力を入れています。その中に『有言実行研修』というものがあり、自然とやることを習慣づけるという仕組みを取り入れているんです。その他にも1年に2回、全体会議後に『石上学校』を開催して『人生においての〇〇』というタイトルで哲学的な話も含め、研修を行っています」と説明してくれました。

また、採用活動においては会長自らが会社説明会へ参加し、求職者の方に会社の雰囲気を伝えることも行っているとか。社員の福利厚生に関しても年間休日を増やすことや給与改定など、社員全員がやりがいや生きがいをもって働いてくれる職場環境を提供することを3ヶ年のテーマにされているようです。

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【現在の取り組み】15年続けている植林活動。年々増え続ける”美幌町のカラマツ”に感動

「2008年、北海道の東部にある美幌町と植林に関する協定を締結してから、お客様の愛車1台を廃車にするごとに、1本のカラマツの木を植えています。きっかけは、現会長が中国の砂漠で植林活動をしたこと。この体験を純粋に『いいな』と感じたそうです」と教えてくれました。
日本で国際基準の森林管理の認証を受けた場所は限られているそうですが、北海道には二か所あり、その一か所が美幌町だったそう。「管理は美幌町が行ってくれていますが、年一回社員も行って、植林活動をしています。新卒の方の志望動機にも『植林への興味』があるといい、年々意義深い活動だなと感じています」とも語ってくれました。

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【今後の展望】積極的に社内に電気自動車を導入し、EV解体のノウハウを先取りしたい!

「環境省の政策である『2050年カーボンニュートラル』の実現へ向け、自動車解体を行っている会社として、EV自動車の解体に将来的に着手したいと思っています。まずは役員が乗っている車を電気自動車にして、試行錯誤したいと思います」と石上社長は意気込みます。

また、ある時社員の方が整備工場にあった車のテールランプに溜まった水をみて「金魚飼えますね(笑)」とつぶやいたことがきっかけとなり、自動車部品の端材を利用した創作製品にも力を入れることも考えているといいます。「あの時、何気ないひと言にアイデアが転がっていることを実感しました。今後どんな製品ができるかが楽しみです」と笑顔で話してくれました。

【鉄リサイクル工業会に一言!】

「意見交換会を企画していただけるとありがたいです。例えば業種の範囲を広げて、『非鉄』を取り扱っている会社と『鉄』を取り扱っている会社、そして解体業者の交流を深めることができれば、新たな発見があると思います。道内でできたら最高です。そして、鉄相場のトレンドなどのセミナーがあれば積極的に参加したいです。
今後とも変わらぬご指導とお付き合いをよろしくお願いいたします!」

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【われらがスローガン】

「自動車解体業なので、解体車輌からどれだけの資源を取れるかが勝負だと思っております。『混ぜればゴミ・分ければ資源』という考え方にプライドを持っています」

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【取材後記】鉄リサイクル工業会北海道支部支部長

今回は、1月に社長に就任されました自動車解体業道内大手である石上車輌の石上義高新社長にお話を伺いました。
印象的だったのが、社長就任直後は自分色を出そうとしてしまいがちですが、石上会長の思いを継承し今までの石上車輌の流れに逆らうことなく経営し、今後も会長から多くを学ぼうとする姿勢です。これはわかっていても出来る事ではありません。この姿勢は見習うべきだと感じました。

会社の今後の方向性について伺うと、「100周年に向けて社員がやりがいをもって仕事が出来る環境作りをし、潰れない会社を目指す」と力強く語って頂きました。
創業から現在までの50年についてもたっぷり語って頂き、大変勉強になりました。
特に興味深いお話は、石上会長が創業者から会社を引き継いだ際の「奇跡の3ヶ月」や、恵庭工場移転の際のドラマです。池井戸潤の小説の題材に出来るような内容が盛りだくさんでした。

今回の記事では詳しくは触れておりませんが、「奇跡の3ヶ月」で石上車輌のビジネスの根幹となる自動車の国内中古部品、中古自動車販売も生まれたそうで、この3か月で本当に死に物狂いで次々と改革、新たなビジネスモデルを構築しました。
修羅場の時に必死に考え行動を起こしたからこそ、様々なドラマが生まれ現在の礎になったのだと思います。

会長からの社長交代までの9年間の経営計画である「サザンクロス計画」を無事計画通り遂行され、予定通り社長交代が行われました。
経営者にとって1番難しい決断が後継に引き継ぐタイミングだと言われております。それを石上会長は9年前から経営計画に落とし込み、見事に予定通り実行した計画力・実行力には驚かされます。

日本鉄リサイクル工業会に対しては、自動車に使用されている金属の勉強会や資料の作成、鉄以外の金属の相場情報発信が欲しいと要望を頂きました。
我々の会員企業で鉄のみを扱っている会社はないので、鉄以外の金属の情報も必要ですね。 

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今回も素晴らしいお話を聞くことができました。ぜひ講演の機会を設け、実際に皆様に石上車輌の50年を聞いていただきたいと思います。

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