50人を超える、「プロダクトの成功のためになんでもする人」が集う組織をつくる|私たちの職務経歴書 ~ 広瀬 丈
こんにちは!
マネーフォワード ビジネスカンパニー(MFBC)コミュニケーションデザイン室の塩原です。
「私たちの職務経歴書」シリーズでは、面接の場でみなさんとお会いする社員のこれまでの経歴、マネーフォワード(以下:マネフォ)になぜ入社したか、今の仕事ややりがいなどをお伝えしています!
今回は、CPO室 室長の広瀬 丈(ひろせ じょう)さんです。
NTT西日本でSaaS事業の立ち上げやPdM/BizDevを経験したのちマネーフォワードに入社し、CPO室 室長を務める広瀬さんが、マネーフォワードを選んだ理由や、どんな方にMFBCで活躍いただきたいかなどを聞いてきました!
ーー前職までのお仕事内容について、教えてください。
広瀬:前職は、新卒で入社したNTT西日本で17年働きました。そのうち10年ほどは法人営業、7年ほどはプロダクト企画開発に携わりPdM(プロダクトマネージャー)に近い仕事をしていました。
印象に残っている仕事は2つあります。1つはNTT西日本で初めて行われたアジャイル開発のプロジェクトに携わったことです。当時、社内ではウォーターフォール開発があたりまえという環境において、スクラム開発におけるプロダクトマネジメントを担当し、私は東京、エンジニアは大阪という2拠点体制でプロジェクトを進めました。
アジャイル開発始動の社内決裁をとるのにも苦労しましたが、さらに大変だったのは開発プロセスだけがアジャイルだったことです。他の社内プロセスは今まで通りだったので、開発スピードに合わせて高速で承認を取る必要がありました。
例えば、ユーザーサポート部門にアジャイル開発の品質の考え方を伝えると、「本当に品質を担保できる?ユーザーの問合せは爆増しない?」と懸念されるわけです。担当していたサービスが、数百万の契約がある光回線に関わるサービスだったので、品質に問題があってユーザーからの問合せが1%増えるだけでも相当な影響があります。
これまでなら西日本エリアにある30府県域の支店への説明会を1ヶ月かけて行っていたところを、1日でクリアしなくてはいけないほどのスピード感でした。
塩原:大企業の中で1日で30府県域の支店の承認を得るなんて、社内の仕組みを熟知していないとできない技ですね。
広瀬:そうですね、でもそれをクリアしなければ開発が進まない状況でした。
もうひとつ印象に残っているのは、BtoBのSaaSプロダクトの立ち上げを経験したことです。立ち上げ当時、どんな体制や人材が必要なのかをリサーチしました。SaaSの場合はアジャイル開発でザ・モデル型の組織が当たり前という文化ですが、もちろんNTTには文化として内包されていません。
当時は課長の立場でしたが、プロジェクトオーナーである社長や経営層に「SaaSのプロダクトを実現するためには文化を変える必要がある」と直談判した結果、まずはスピード感を持ってトライできるようにと社長直轄の特命プロジェクトとしてスタートしました。その後、リリースして1年半ほどで100万IDを突破し、数名からスタートした組織のメンバーは3年間で100名規模まで拡大しました。
塩原:SaaSに携わった3年間で、何が一番大変でしたか?
広瀬:一番難しかったのは新規事業の立ち上げにフィットできる人材の確保でした。
通信インフラの提供を中心とした事業を生業にしたNTTでは、品質に重きを置いた計画重視のマネジメントで、かつウォーターフォール的なプロセスや文化が主流でした。そこで、とにかく会社の中にいる「変わった人」を集めたんです。
新しい事業スタイル、アジャイルでスピーディーなプロセス、自律的に変化するオペレーションを1から構築できる、変化を楽しめる人ですね。ただ、このタイプの社員がそんなに多くいるわけではないので、組織拡大には苦労しました。
中途採用も活発に行っていたのですが、組織のカルチャー作りや、カルチャーにフィットする人材を集めるのは、私が在籍した3年ではなかなか難しかったです。
ーーマネフォに入社したキッカケを教えてください。
広瀬:NTTは3年に1度くらい異動があり、そろそろかなという頃に、マネフォの大倉さんから声をかけてもらいました。大倉さんは、先ほどお話しした、NTT西日本でのアジャイル開発のプロジェクトでスクラムマスターの役割を担っていた人で、そのときのご縁です。
・いまはマネフォの大阪開発拠点長を務める大倉さん
マネーフォワードは、NTTでSaaS事業を立ち上げるときにベンチマークにしていた企業でもあり興味はありましたが、実は声をかけられた時は転職する気は1mmもなかったんです。
でも、当時クラウドERP本部長をされていた峰島さんやカンパニーCPOの廣原さんなどさまざまな方にお会いし、話を聞けば聞くほど興味をもちました。
興味を持った理由の1つはマネフォには20を超えるプロダクトがあって、さらに10年以上運用しているものもある。それを50名ほどのPdM(プロダクトマネージャー)のもとで展開していることです。私もPdMをやっていた経験があったので、そんな人が50人もいるなんて面白いと思いました。
2つめは、社内の環境が整っていなくてカオスな環境であるという話です。走りながらプロダクトを作り続けてきたので整備してくれる人を求めているという話でした。そんな状況ならば、自分にとってもいいキャリアステップだし、力を発揮できることがありそうだと思い入社を決めました。
ーーマネフォに入社して驚いたことやギャップはありましたか?
広瀬:ギャップがあったのは、思った以上にカオスだったことです。私はカオスを整えていくのが好きなのでいいのですが(笑)
塩原:それ、この前守屋さんも言ってました(笑)
広瀬さんは、整備することが多くて、楽しくてしょうがないっていう感じですよね。
広瀬:そうですね。バックオフィス領域のプロダクト開発とも共通することですが、効率良く・生産性高くというキーワードが好きです。今でも社外の方からは「だいたい整ってきたでしょ?」と言われることも多いんですが、「いや、全くやで」と伝えています。まだまだやることがありますね。
逆に、ギャップがなかったのはカルチャーです。仕事を楽しむというファン、チームワーク、リスペクトなどのカルチャーは面談の時に感じた印象そのままでした。
ーー現在の仕事内容とやりがいを教えてください。
広瀬:現在はCPO室の室長を務めています。CPO室はPdMのバーチャル組織のような形で、主務としてはそれぞれの本部に所属するPdMが本部の垣根をこえて活動しています。
CPO室の役割は2つあり、1つは「マネーフォワード クラウド」のブランド全体のUXをあげることで、これは主にカンパニーCPOの2人、廣原さんと杉田さんが担当しています。
2つめは全体最適を考えた開発戦略と戦略を支える人事や組織運営で、この部分は私が強くコミットしています。
塩原:具体的にはどんなことをしているんですか?
広瀬:「マネーフォワード クラウド」に関わるPdMの採用活動をCPO室主導で進めていて、興味を持ってくださった方には、まず私がマネフォの会社紹介やプロダクト群などの紹介を行います。
「マネーフォワード クラウド」には20を超えるプロダクトがあるので、事業フェーズや組織体制によって求めているPdMのタイプが異なるんですね。なので、応募者の方のスキルセットや希望などをお聞きしたうえで、フィットしそうなポジションをご提案しています。
塩原:人事ですね、というか、社内エージェントのようですね。
広瀬:PdMが兼ね備えるべきスキルセットとして、ビジネスとユーザーと開発の3軸から成るプロダクトマネジメントトライアングルがありますよね。3つのどれが強いかは経験してきたプロダクトの体制やPdMになる前の職種によって違いがあるので、面談の際はどの軸が強いかをお聞きしています。
塩原:ほかには、どんなことをされていますか?
広瀬:PdM同士の横のコミュニケーションの場づくりも私の役割です。
PdMとのコミュニケーションの場は大きく2つあります。1つは月次で「CPO室代表者ミーティング」を開催していて、全プロダクトのPdMが今月の機能リリース結果、来月の予定などを共有しています。この内容は動画やドキュメントに残してカンパニー全体に発信もしています。
2つめは4ヶ月に1度の「全プロダクト共有会」として、PdM全員が集まり、それぞれのプロダクトについて、戦略やロードマップ、デモなどのプレゼンを行なっています。
塩原:それ、私も見てますよ!
全体では相当ボリュームのある内容なので、さすがに全部は見きれないですが、気になるプロダクトの動向だけチェックさせてもらっています。
そういった「気になる部分だけ見たい人」向けにも、すぐに情報が探せるように、細かく区切った動画をUPしていただいているので、いつも助かってます!
ーーCPO室の活動を通じて、PdMの変化はありましたか?
広瀬:CPO室設立以前は、PdMだけで集まったり、横断的にプロダクトのリリース計画を対面で共有する機会がなかったので、実際に集まったら50人もいたのかとPdMたちも驚いたようです。
塩原:CPO室を立ち上げて初めて、50人もいたのかということが分かったという都市伝説もありますね(笑)。
広瀬:まだプロダクトが少なかった当時は、とにかく早く個別にPMF(プロダクトマーケットフィット)させることが優先で、そのプロダクトだけを見て必要な機能開発を行っていくということを進めてきました。
ただ、プロダクトが増え、ありがたいことに「マネーフォワード クラウド」の複数プロダクトをご利用のユーザーが増えてくると、個別プロダクトのUIUXだけでなく、連携した時の使い心地が大事になってきます。個別最適ではなく全体最適の考え方ですね。
そういう意味では、CPO室の取り組みによって他のプロダクトの話を聞く機会が増え、横断の視点で考える時間やコミュニケーションが生まれたため、全体最適の意識が高まったように感じます。
ーーCPO室の今後の展望を教えてください
広瀬:いくつかありまして、まずはPdMの育成です。CPOと一緒に体系的な育成プログラムをつくっています。
PdMはプロダクトマネジメントトライアングルのスキルセットが必要であり、意思決定をするために周囲から信頼してもらわないといけない職種です。そのために最適なプロセス、必要なマインドや振舞いなどを学べるようにと考えています。
プログラムの1つは、プロダクト作りに必要なマインドやロードマップやビジョンの作り方などを学ぶワークショップです。1コマ1〜2時間を全部で7〜9回行い、それぞれのコマで課題を設定する形式で3ヶ月かけて実施します。
2つめは、キャリアセッションというプログラムがあります。プロダクト開発の経験が豊富なPdMに登壇してもらい、キャリアや知見・こだわりを話してもらう内容です。参加者からは「すぐれたPdMの考え方や感じ方など本質的な部分を学べる」と人気のあるプログラムです。
そのほかには、メンタリングプログラムもあります。PdMの仕事はハードシングスに直面することが多いので、自分の悩みをみんなにシェアできてCPOからのアドバイスももらえる内容になっています。
塩原:PdM向けのプログラムがどんどん充実していますよね。
広瀬:先日、社外のPdMコミュニティーでCPO室での取り組みについて話したところ、ほかのSaaS企業さんから「マネフォさんが一番PdMの育成に注力しているよね」という感想をもらいました。
また、最近ジョインしたPdMがこの育成プログラムを入社前から知っていて「受けてみたかった」と言ってくれていましたね。
※PdM育成については、ProductZineでも取り上げていただきました!
もう1つの展望は、プロダクト開発のオペレーションをつくるプロダクトOps機能の拡充です。例えば、プロセスを合理化したり、プロダクトマネジメントの手法やツールを整備したり。PdMが本来取り組みたいけれどもなかなか時間をさけないことを集中して進めていきたいです。
塩原:ちなみに、この記事にも何度も出てきていますが、MFBCには2名のカンパニーCPOがいます。組織としてはCPO室があって、広瀬さんはCPO室長なわけですが、この3人の関係性ってどんな感じなんですか?
広瀬:なんだか複雑に見えますよね(笑)
ただ、割とシンプルな役割分担になっていて、カンパニーCPOのお二人は、プロダクト戦略の策定と実行がメインミッションで、SMB領域を杉田さん、中堅領域を廣原さんが管掌しています。一方、私はCPO室のマネジメントの部分です。そのため、定期的に3人でMTGもしますし、お二人の思いをCPO室の運営に反映しています。
塩原:広瀬さんから見て、カンパニーCPOってどんな方ですか?
広瀬:杉田さんと廣原さん、真逆だけど似ているところもあるお二人です。二人とも共通してすごいのが、ドメインの理解、ユーザー業務への理解度の深さで、知らないことはないんじゃないかってくらいのバックオフィス業界の知見をお持ちです。一方で、戦略性ももちろんあって、単純にスーパーマンという感じですかね。忖度でもなんでもなく、尊敬するお二人です。
ーー広瀬さんが、働くうえで大事にしていることはありますか?
広瀬:大事にしていることが2つあります。1つは「凡事徹底」で、平凡なことを徹底してやり抜くこと。CPO室の運営は、定期ミーティングの主催やさまざまな通知・取りまとめなど凡事が非常に多いです。凡事であっても50名ほどのPdMに影響することであり、雑な仕事をしてしまうとプロジェクトマネジメントの粗さにつながる可能性もあると考えています。
実はこの「凡事徹底」は、NTT時代に福岡でバックオフィス(総務/経理/人事労務)のマネジメントを担当していた時に教えてもらったことなんです。当時35歳くらいでメンバーは平均年齢が50歳台の方々だったんですが、当たり前のことを徹底的にやることが必要だよと。このときのバックオフィスの経験は、今の仕事を選んだことにもつながっています。
2つめは「守破離」。前職でSaaS事業の立ち上げをしているときに特に意識していました。ゼロから作ると言ったりしますが、因数分解すると世の中にはゼロイチってあまりないんじゃないかと思ってまして。
というのも、どんなチャレンジも、先人がすでに挑戦していたことに近い可能性はあって、だとすると先人の経験値は使わせていただいた方がいい。なので、まずは「守」としてベストプラクティスといわれているものを正しく身につけ、そこから離れて自己流をつくっていくことが最短ルートになると考えています。
ーー最後に、広瀬さんのプライベートについても教えてください!
広瀬:プライベートと言っていいのかわかりませんが、プロダクトマネージャーの集まりには、できるだけ顔を出すようにしています。
<クライス&カンパニー社執筆の『プロダクトマネージャーになりたい人のための本』出版記念パーティにも広瀬さんの姿が!
(中段右から4人目くらいのデニムシャツ)>
今後の採用に向けた人脈作りという観点もありますが、それよりも、プロダクトマネジメントについて語るのが単純に好きなんですよね。
塩原:もはや仕事とプライベートの境目がないですね(笑)。もっと完全なるプライベートの話も聞きたいです!はまってるYouTubeとかないですか?
広瀬:YouTubeだと「SUSURU TV」というチャンネルが好きです。その影響で家系ラーメンにすっかりハマってしまい、ラーメンの食べ歩きをしています。
これは、家の近所で発見した家系です。
ーー編集後記
広瀬さんといえば、マネフォ社内では「Kibela職人」としても有名です。
Kibelaは、社員誰でも情報を書き込んで共有できる社内コミュニケーションツールで、マネフォでも導入しているのですが、広瀬さんが執筆した記事は、おそらく100本ほど(正確には数え切れませんでした)。
その内容は、社内の情報まとめ記事のようなものから、毎月定期配信される「月刊CPO室」などのシリーズものまでさまざま。ポエムもいくつか配信しています。
見る側にとっては、情報をまとめていただけるのは、ただただありがたい限り。でも誰もがあったらいいなと思うものの、なかなか自分で実行までは辿り着かない性質のもの。
「なんでそんなに投稿しているんですか?」と聞くと、「単純にドキュメントの整理整頓作業で、まとまっているのが好きなんですよ。この作業って結構プロダクト作りに近くて、このKibelaがあればみんなの効率性も生産性も高くなるなと思えば、すぐやりますね」とのこと。
どれだけプロダクト作りへの愛が深いんだ・・・
CPO室では、プロダクトマネージャーを「プロダクトの成功のためになんでもする人」と定義しているそうですが、まさに広瀬さんこそ、なんでもする人だなと思います。
難航しそうなプロダクト現場があれば自ら飛び込み、一見関係しなさそうなエンジニア課題を解決する社内プロジェクトでもなぜか広瀬さんがファシリをしていたり。
ご自身でもおっしゃっていましたが、CPO室長は、究極的にはいらない役職だけど、究極のファシリテート役であり、究極の調整役なのかもしれないと。きっと今後も、まだ誰も気づいていなかった課題を人知れず発見し、いつの間にか解決に動いている、そんなアクションを取り続けてくださるのだろうと思います。
「マネーフォワード クラウド」のPdMに興味のある方は、ぜひ広瀬さんと一度話をしてみてください!