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GIGAスクール構想の向かうべき方向

今回は、GIGAスクール構想について書きます。GIGAスクール構想の目的は、学校において、生徒一人ひとりが端末を持ち、子どもたちの学びを個別最適化することです。

GIGAスクール構想が実現すれば、生徒の力を最大限に引き出すことができるそうです。

1.ICTのメリット

では、ICTを導入すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

例えば、自分専用のタブレットやPCが使えれば、調べ学習やプレゼン、興味関心・学習習熟度に合わせた学習、グラフの作成など、学習の幅を広げることができます。

また、生徒だけでなく、校務にもICTを活用することで教師の仕事を削減、効率化し、働き方改革の推進を加速することができます。


それ以外にもICTの使い方次第では、これまでにはなかった学び方を生徒自身で創造して、将来への可能性を広げることができると思います。

タブレットやパソコンは、社会に出てからも必須の道具です。早めに使い方に慣れておき、学びの中心の道具としてどんどん使っていくことが大切です。

2.ICTを導入していくにあたっての課題

このようなメリットがある一方、ICTの活用には課題があります。

(1)生徒・教師がICTの使い方に慣れていない

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こちらは、文部科学省が平成25~26年にかけて行った「情報活用能力調査」からの引用です。

小中学生の1分間あたりの文字入力数を表したグラフです。小学生では、平均で5.9文字、中学生では平均17.4文字となっています。

少し古いデータであるため、調査が行われたときはまだ一人一台の環境が整備されていない状況だったかもしれません。

現在の状況が気になるところですが、あまり改善していないのではないかと推測しています。ICTを使うには、文字を入力する能力はとても大切です。

文字入力が苦手だと、コンピュータを使うことに抵抗を示してしまう子供がいるかもしれません。

それなら、学校でタイピングを教えればいいんじゃないか、と思うかもしれません。しかし、果たして学校の授業の中でタイピングを教える時間を確保できるかどうかは疑問です。

また、コンピュータを使うことに関して課題があるのは、生徒たちだけではないかもしれません。これまでの学校は、基本的にICTを活用してきませんでした。

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こちらは、OECDの調査結果です。学校の授業におけるデジタル機器の使用時間はOECD加盟国の中で最下位になっているとのこと。

※詳細なデータはこちらから。(「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)」)

つまり、生徒だけでなく、先生もICTの使い方には慣れていない可能性が高いです。もちろん、ICTの使用方法に長けていて、積極的に活用している先生方もいらっしゃいますが、学校の中でICT賛成派と反対派という派閥ができているのではないかと考えています。


(2)情報モラルをどうやって学ぶか

授業でICTを使うには、基本的な使い方を学ぶことに加えて、情報モラルを身に付けていかなければなりません。

インターネットを利用する以上、情報の信ぴょう性を判断したり、犯罪から身を守ったりする必要が出てくるからです。

日本ではICTが学びの道具として活用される以前から、娯楽の道具として導入されてきました。そのため、これまでの情報モラル教育は、ほとんどが家庭に委ねられてきたと思います。

GIGAスクール構想によって、学校でもICTを活用するとなると、学校で情報モラル教育をしないわけにはいきません。

では、このような情報モラルをどうやって身に付ければいいのか。

すでに、学校の授業の中でも、情報の取り扱いについて学ぶ授業が行われているとは思います。

ですが、SNSなどの大人の目が入りにくい環境でトラブルが起きやすいので、どうしても事後対応になりがちのような気がします。

他人を尊重する、ルールや約束を守るなど、インターネットに限らず日常的なモラルに加えて、ICTが持つ匿名性や流出性に注意して使用しなければICTが危険なものになってしまいます。(正しく使えば、とても便利なものだと思います)

情報モラルについては、学校はもちろんのこと、家庭との連携を密にして、犯罪やネット依存等を防ぐことが大切です。


(3)そもそもICTは学習を個別最適化するのか

ICTを活用すれば、これまで生徒の学力に関係なく一律に行っていた授業・宿題を個別最適化できる可能性があると思います。

しかし、ICTの操作が極端に苦手な生徒、画面に集中できない生徒に対して、ICTの使用を強制することは、本当の意味での個別最適化が果たせていないのではないかと思います。

板書を使った授業の方が理解しやすい、タブレットをずっと使っていると、目が疲れるなど、ICTを取り入れた授業が苦手な生徒がいることも想定されます。

ICTの操作が苦手というなら、ICTが使えるように基本的な使用方法を指導することで解決できると思います。しかし、目が疲れる、板書のほうが理解しやすいといったことはどうしようもありません。

そのため、本当の意味で生徒の学習を個別最適化するとは、「生徒の特性に応じて、学習の方法を選択できるようにすること」だと思います。

ICTの操作が得意で、どんどん使いたい!という生徒は、ICTで勉強できるようにする。

ICTを使ってみたいけど、少し操作が苦手という生徒には、ICTの操作を指導しつつ、アナログでの学習環境も整備する。

様々な理由でICTがどうしても使えないという生徒には、ICTを使わないことで不利益が生じないように対応する。


このようなことが、学習の個別最適化だと思います。


3.最後に

今回は主に、ICTを導入していくにあたっての課題について述べてきました。ICTはどんどん普及してきていて、メリットがたくさんあります。

それを踏まえた上で、生徒一人ひとりの学習を個別最適化するにはどうすればいいのかを考えてきました。

私は、ICTをどんどん使っていきたい派ですが、ICTを使うこと自体が目的にならないように、気をつけていきたいと思います。ICTはあくまでも、一つの手段です。