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マンガの配信の歴史 中編(ジャンプ黄金期~マンガアプリの台頭)

マンガはいよいよ国民全体の文化に

by RECOMAN

こんにちは。株式会社RECOMANのCMO兎来と申します。
CMOは一般的にはChief Marketing Officer(最高マーケティング責任者)ですが、弊社においてはChief Manga Officer(最高マンガ責任者)です。

現在RECOMANは、
「マンガの力で世界を変える」
というヴィジョンを持ち、
「人生を変えてしまうような、人とマンガの出会いを一つでも増やす」
「世界中の人々が、マンガを読める・描ける世界にする」
というミッションに挑むため、新しいマンガアプリ「RECOMAN」を開発しています。

そんなRECOMANにはどんなメンバーがいて、どんなことを考えているのかを知っていただくためにこのノートを立ち上げました。

今回は、コアメンバーであるCEOの細川とCMOの私による対談形式で、「マンガの配信の歴史」の中編(全3回)をお届けします。

前編はこちら



ジャンプ黄金期

細川
前回は週間少年誌の台頭のところまで話ましたので、
次は『ジャンプ』黄金期の話をしますか。
『ジャンプ』黄金期っていつからなんですかね?

兎来
定義は人によって変わりますが、部数が200万〜300万に伸びたあたりが、ひとつの区切りだと思います。

1971年にはもう100万部を突破していて、その頃が『侍ジャイアンツ』とか『ド根性ガエル』とか『マジンガーZ』、あと『はだしのゲン』とか『プレイボール』とか『包丁人味平』とかそういう時代ですね。

『リングにかけろ』が1977年ぐらいから始まって、『コブラ』や『キン肉マン』などもあって1978年に200万部突破していく辺りを黄金期と言う人が多いんじゃないでしょうか。

細川
なるほど。
そのころは『ジャンプ』は収益的には雑誌で大きく黒字だったんですかね?
それとも今みたいな単行本モデルになってたんですかね。

兎来
当時1冊150円だったとして、200万部売れれば3億円、月商12億円で年商140億円くらい。
雑誌だけでも十分黒字だったと思いますね。
初めて初版100万部を超えたのが『Dr.スランプ』だったそうなので、それに加えて単行本の売上が乗っていったと考えるとそれはビルも建ちますよね。

『キャプテン翼』、『キャッツ♡アイ』、『3年奇面組』などもその後に出てくるんですけど、1980年代にはもう300万部突破なのでもうここは完全に黄金期の一角ですね。

細川
『ジャンプ』は80年ぐらいになると、もう社会現象ですよね。
マンガにあまり興味ない人も『ジャンプ』は無視できない、そういう時代ですよね。

兎来
1980年代からは鳥山明さんの担当で有名な鳥嶋さんが台頭してきました。

この時代からメディアミックスも強化され、アニメ化も盛んになり、
『ファミコンジャンプ』という『ジャンプ』を元にしたゲームも発売されました。
この流れは、後の『Vジャンプ』などに繋がっていくところです。

そして91年には600万部に到達します。
最盛期には1995年3・4号が653万部でした。

マンガの広い意味での二次流通

細川
昔って『ジャンプ』とかが、山手線のラックにたくさん置いてあったじゃないですか。
あれは、つまり社会人が買ってたってことですよね。
学生はもったいないので、そんな読み方しないじゃないですか。

だからその頃にはもう小さい時に『ジャンプ』読んでて、社会人になっても読んでて、っていう時代になってきたってことですよね。

トラックの運転手さんとかも結構多いんですよね。

兎来
ラーメン屋とか喫茶店とか床屋に入って読むとか、そういう感じもありますよね。

細川
床屋でマンガ読みますよね。
『ナニワ金融道』は子供の時は、自分で買うのは恥ずかしかったので床屋で読んでましたね。

兎来
『ナニワ金融道』はいい経済マンガですよね。
床屋には、大人向けのものも置いてあるので、普段は読まないものに出会えるのもいいですよね。

細川
まさに配信の話になって来たので、ここの部分深堀りしますか。

販売と購入、これが最も正攻法の流通だと思います。
ただ、それだけじゃなくて、電車の棚に置いてあるマンガや、床屋のマンガなど、買わずにそのマンガを読む。
こういったものも非常に大事ですよね。

兎来
大事ですね。
いろいろな業界の方々のお話とかを聞いても、子供の時はお金がないので立ち読みしてましたとか、そういう人も多いですよね。

細川
そうなんですよ。
友達から借りるというのもありますね。

ただ、これはどうなんですかね?
例えば『ナニワ金融道』は、僕は小学生の時は買わなかったわけですが、そうやって読まれるのは、作家先生的にはどう感じるんでしょうか?

兎来
「図書館に自分の本は置かないで欲しい」という方もいますし、人それぞれではありますね。
その時は直接的な利益にはならなくても、読んで知ってくれて、その後に購入してくれたり、作品を口コミで広げてくれたりするケースもあるので、まず読んで面白いと思ってもらえたら、嬉しいという人も多いんじゃないかなと思います。
マンガサロン『トリガー』でも、置いてあることを喜んでくれる方がほとんどでした。

細川
そうですよね。
実際、僕は『ナニワ金融道』を、大人になってから電子版で買ったんですが、結局小さい時に記憶があって好きだったから買ったわけで。

兎来
私も耳鼻科に通っていた時があって、耳鼻科になぜかやたらと楳図かずおさんの本がたくさん置いてあったんですよ。
待ち時間にすごく怖い思いをしながらいろんなトラウマを植え付けられて(笑)。
でもやっぱりそれがすごく深く記憶に残っていて。
今も懐かしいなって思い出せるんで、そういう体験も大事ですよね。

細川
今だとスーパー銭湯とかマンガ喫茶で、という人も多いですよね。
マンガが読めるホテルとかもありますよね。

兎来
多いですね。
何万冊と置いてあるところがすごく増えましたし、それを目当てに泊まりに行く人もいて。
地方で本当に十何万冊とか置いてあって、行ってみたい、なんなら企画運営に携わりたいぐらいに思ったところもあります。

細川
一般的には、中古販売を二次流通といいますが、
これまで出てきた、お店で読む、借りて読むといった、
広い意味での二次流通もマンガを知って貰う、認知度を上げるという意味では無視は出来ませんよね。

兎来
二次流通を完全に止めることは無理ですからね。
どうやって折り合いをつけていくか。

細川
そこは本当に難しいですよね。
マンガってすごく高いのにまだ売れるじゃないですか。

音楽は段々売れなくなってきて、逆にライブとかそういうその他のところで儲けましょう、みたいな形になってきたりしてるんで。
マンガがそうなってもいいのかというと、そうではないと思うし。

ただ、広い意味での二次流通が、むしろマンガの売上を促進している側面は絶対にあると思う。

兎来
『鬼滅の刃』がなんで流行ったかっていうのも、多くの家庭で元々入っているサブスクでほぼ追加投資なくアニメ版を観られたこともすごく大きいと思ってるんですよね。
そして皆が観ているという強いシェアが築かれたので、あれだけ広まった。

細川
そうなんですよね。
正直マンガよりアニメの方が何倍もお金かかってるわけじゃないですか。
でもアニメの方が安く観られるんですよね。

マンガの電子化が進んでいますが、
広い意味での二次流通は紙の方がしやすいんですよね。

兎来
そこですよね。
電子書籍の欠点として、貸し借りができず布教がしにくいっていうのは結構大きいところなんで。

細川
紙の世界で起こっていた、広い意味での二次流通のポジティブな面の役割を、
電子の世界でどうやって代替していくか。
これは大きなテーマだと思います。

ポストジャンプ黄金期

細川
話を『ジャンプ』に戻しましょう。
『ジャンプ』全盛期、大人も子供も『ジャンプ』を読んでる時代があった。
その後、『金田一少年の事件簿』などで『マガジン』に抜かれる時があるんですよね。

兎来
そうですね。96年ぐらいになってくると、『幽遊白書』が終わって『ドラゴンボール』も終わって『スラムダンク』も終わって。

それで『ジャンプ』がちょっと部数を落としていったところで、『マガジン』が『金田一少年の事件簿』や『サイコメトラーEIJI』や『GTO』などを出して、それらを実写化してさらに盛り上げながらどんどん部数を伸ばして、98年ごろには部数で『ジャンプ』を逆転するという。

細川
その後、また『ONE PIECE』が出てきて『ハンターハンター』が出てきて。

兎来
そうですね。『ナルト』や『ブリーチ』なども出てきて。

2005年ぐらいは『ジャンプ』はもう300万部部くらいだったんですよね。
全盛期から見れば半分ではあるんですけど、それでも1位を奪還しているという。

そもそも雑誌が650万部売れてたというのが凄まじいんですけど。
国民の20人に1人が買ってたという計算ですからね。

細川
娯楽が多様化していく中で、いろいろと分散していくのは当然ですし、今はそもそも子どもも少ないですからね。

兎来
そうなんですよね。『ジャンプ』は大人も読んでますけど、編集部自体はあくまでも子供、小中学生に向けて作っているので。

ただ今は『ジャンプ+』というアプリで毎週の『週刊少年ジャンプ』も読めるようになっていて、そちらで読んでいる人も相当数いるので、現在『ジャンプ』がどれくらい読まれているのかって結構わかりにくくなってるんですよね。

細川
紙の部数が落ちて来ていて、既存の流通を維持するのは困難で、変えていかねばならない、みたいな話が出てるというのは聞きますね。
全国に毎週同じ曜日に同時発売、というのはいつかなくなってしまうかもしれませんね。

マンガアプリの台頭

細川
『ONE PIECE』があってまた『ジャンプ』が復権して、しばらくすると段々マンガアプリが出てくるんですよね。

兎来
2008年にスクウェア・エニックスが『ガンガンONLINE』を始めて成功を収めたのを皮切りに、WEBマンガも台頭してきます。

『マンガボックス』とか『Comico』とかがちょうど2013年ごろから出始めて、スマートフォンの普及っていうのがその時期にあってそこからですよね。

2012年くらいはまだスマホの普及率も15%とかだったので、出版社の人はスマホでマンガが読まれてヒット作が生まれるようになるなんて全然思ってなかったんですよね。

細川
そうですよね。
逆に言えば、当時すごい抵抗感を示していたのに、これだけ縦読みだとかwebtoonを押すのはちょっとびっくりするというか。
IT化を拒んでいた人ほど、今はより期待するように見ていますね。

兎来
結局、実体がよくわかっていないからなんでしょうね。

細川
マンガに限らずITの新技術って「ハイプサイクル」っていうのがあるんですよ。
最初は全然信用されなくて、途中から一回過剰に持ち上げられる。
その後に幻滅期というのが来るんですよ。
で、その後もう一回立ち上がってきて、それで世の中に定着するっていうのが、IT技術でのパターンでは一番多いと。

出典:https://www.gartner.co.jp/ja/research/methodologies/gartner-hype-cycle

これも一般論なんで、個別だと全然立ち上がってこないのもあるし、全然違うパターンのもあるんですけど。
そこの見極めが難しいですよね。

兎来
やっぱり大きいのが隣の韓国のマンガ事情で。
韓国は一回社会的な情勢によって出版社がみんな潰れてしまった時があってものすごい危機感に襲われていたところで、その復活再生の道はウェブにしかないというのを早い時代、2000年代から盛んにやっていて、それでwebに特化したマンガをすごくやってきている。

それこそwebtoonの先駆けみたいなことをずっとやっていたので、将来はwebマンガを制すればマンガ界を制するということをもう肌感覚でわかってる人が多かったと。
日本はweb化は遅くてもコンテンツは潤沢にあるので、そこを自分たちが取り込めれば絶対に勝てるという勝算があって、それを巨大資本でやり遂げたというところなんですよね。

細川
『ピッコマ』なんかそうですよね。
それこそ政府系ファンドって言われてますけど、資金状態として信じられないぐらい。

兎来
『ピッコマ』のあの資本力には日本の出版社は勝てないですよね。

細川
でも逆に言えば、僕『ピッコマ』とか『LINEマンガ』とかはほとんど読んでないんですよね。
ラインナップ的に。
これは『RECOMAN』やってるやってないとか関係なしにですけど。

兎来
作品のタイプやテーマが均質化しているというのはありますよね。

細川
そうですよね。
次回はこの韓国を中心としたWeb化・アプリ化の話を詳しく話しますか。
文化的な背景の違いや、強み弱みの両面で深堀りできるといいですね。

後編に続く>

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