見出し画像

なぜ、理想の間取りに出会えないのか

ある調査によると、新築した注文戸建住宅を建てた人の4割が後悔している点があり、そのトップが間取りということです。一方家づくりの際一番こだわった点のトップ項目も間取りという調査結果もあります。
自由に間取りを作れる注文住宅での間取りへの後悔がこの数字ということは、建売住宅やマンションを購入した人の間取りへの不満はもっと高い数字ではないかと思います。

ではなぜ、理想の間取りに出会うのが難しいのか、住宅業界側からの事情で説明してみたいと思います。



間取りは不動産の価値に反映されない

家を購入する人にとって間取りは立地と同じくらい重要なのですが、一方売る側にとってはほとんど考慮しない項目なのです。
なぜなら不動産の価格は立地と面積で決まり、不動産の価値には反映されないので、不動産業者や売主にとっては興味がないのです。

また、間取りは生活や家族構成などと密接に関係しているので、良い悪いの評価が難しいという点もあります。だから、建売やマンションの間取りは、当たり障りのない、コストがかからないものとなってしまうのです。

建売やマンションの場合、間取りはどうやって決まるか

建売やマンションの場合、まず最初に敷地に対して、最大どのくらいの規模の建物が建つのか、そしてそれをどのように分割して売るのが最も利益が出るのかをシミュレーションします。そして、周辺のニーズから単身者用、ファミリー用の割合、どのくらいの価格帯なら売れるか、そして建設コストなどを考慮しながら最後に何LDKを何戸で、という風に決まっていきます。使い勝手など住み手への細かい配慮はお構いなし、いかにコストを抑え、見栄えのする(流行りの)間取りであるかが重要なのです。

だから、時によって広さと間取りのミスマッチが起こり、狭小な土地に3階建ての戸建てを建てたり、65㎡の3LDKのマンションになったり、ということが起こります。

注文住宅の場合、打合せをする人のスキルを見極める

それでは、注文住宅なら大丈夫かというと、こちらも注意が必要です。
なぜなら、間取りの打合せを建築士の資格がない営業が行うこともあるからです。

まあ、経験とスキルがものをいうところですから、建築士なら絶対大丈夫という保証はないのですが、資格のない営業の場合、ちゃんと建築の勉強をしているかどうか、またはバックにに建築士が付いているかで、だいぶ出来上がる間取りの質が違ってきます。

ただし、バックに建築士が付いていても、法規や構造チェックのみで、間取りに関与しないこともあるので、少なくとも1回は建築士との打合せがあるところで建てるのが安心です。
経験のある営業ほど独りよがりになりがちなので、話していると安心感があるのですが、注意が必要です。

建築士の数は年々減っており、会社としても打合せに出せるほど建築士を抱えてなかったりします。法規や構造は建築士でなければできないけれど、間取りの打合せは建築士の資格がなくてもできるので、営業任せになっているという、業界の事情があります。

注)2級建築士試験合格者数は令和4年約5,700人 平成10年約15,000人、1級建築士試験合格者数は令和4年約3,500人 平成10年7,200人

結局のところ、住宅を建てる人、購入する人が賢くなるしかない

お金も広さも十分ならば、間取りについて悩むこともないかもしれませんが、現実には限られた条件のなかで、いかに納得できる間取りにできるかが、住み始めてからの満足度につながります。

残念ながら、これはちょっと可哀そうと思える間取りをときどき見ることがあります。そうならないためには、建て主や住宅を購入する人がよく勉強して、自分で判断しなければなりません。時は外部の設計士にプランを見てもらうなど、相手任せにしないことです。

また、いくら立地がよくても、間取りがよくない住宅は購入しない、こういったことが、業界の意識を変えることにもつながるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?