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藤井聡太二冠に学ぶ次の一手(3) 早い局面での歩の突き捨て

藤井二冠は時折、3筋(後手なら7筋)の歩を早い段階で突き捨ててしまうことがある。

桂頭ががら空きになるし、角を交換したら角の打ち込み場所が相手にとって多くなるので、怖いといえば怖い作戦のように感じる(というかかなり怖いでしょ)。

一例として、2021年3月10日に行われた藤井聡太 王位・棋聖 vs. 中村太地 七段 第79期順位戦B級2組11回戦。

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第1図 31手目 ▲3五歩まで

31手目に早くも3筋の歩を突き捨て。ここでのごく一般的な手は、▲7七銀、▲4六歩、▲3七銀、▲3七桂あたりなのだが・・・。

ポイントとしては、飛車が2六の地点にいるので、後手が同歩と取ってもそれ以上進めにくいという点は重要。

で、この早い突き捨ての効果が日の目を見るのは実はずっと後になってからである。

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第2図 79手目 ▲3九飛

第2図のように、タイミングを見計らってドンと飛車を3筋に回る。ほぼ玉に直射するような形なので後手としてはこれは放置しておけなくなる。

実際、後手は継歩に継歩で先手の飛車をなんとかしようとするのだがうまくいかない。

3筋、7筋は互いに桂頭攻めの筋なので、中盤は当然のように突き合うことが多いが、その場合、このように筋ががら空きになることはあまりない。

さすがの藤井二冠でもいつも成功するわけではないみたいだが、破壊力のある指し回しである。

この棋譜はこちら

3筋の歩を早めに突く戦法はなにも藤井二冠の専売特許ではないので、他の一例として 斎藤慎太郎 八段 vs. 佐藤和俊 七段 第34期竜王戦1組ランキング戦 と比較しても面白いかもしれない。飛車を2六の地点に設定する順序などでその後の展開が変わってくるような気がする。

★ 藤井聡太二冠に学ぶ次の一手(1) 神の一手に至る過程

★ 藤井聡太二冠に学ぶ次の一手(2) 棒歩?戦法


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