折々のチェスのレシピ(378)少しだけ高度な知識をあなたに
攻めと受けのバランスがテーマです。
黒はキャスリングを手抜いてNc5としてきました。これは攻めが続くでしょうか? たしかに黒は相手陣近くに駒を集めています。しかし、次に白からBg5とされた時、黒にうまい受けがあるかどうかを問われてもいます。
ポーンで受けてしまうとルークが通ってしまい、かなり痺れてしまいます。では、ナイトで受けてみます。
これでもやはり、
ルークの効き筋が痛いです。
この対局は序盤の早い段階でお互いにセンターポーンを捌き合う展開になりました。
こういう展開の時には、なんらかの形でキングの守りを早く決定しないと今回ご紹介したようなまずい駒組みになりやすいです。その点では白はf1のビショップを動かすだけでキャスリングが可能になるため、すでに有利に戦いを進めています。
ちなみに、本局ではここで白はd4のポーンをナイトで捌きましたが、クイーンで捌いてしまったほうがよりいい形になります。なぜなら、黒がクイーンを交換してきた時、
この駒組みになるからです。一目瞭然とはこのことで、黒はほとんどまったくと言っていいほど手を作ることができていません。白はこの時点で先手の利に加えて二手ほど手得している計算になります。
ちなみに、黒がクイーンの交換に応じてこない場合にもあります。例えば、
この局面で白にはQe4と一旦チェックを掛ける手とクイーンを交換してしまう手があります。どちらも悪い手ではありません。どちらを選択するかは、その先をどちらで深く研究しているかによるでしょうし、棋風みたいなものも関わってくるでしょう。
しかし、いずれにしても、序盤早々にセンターポーンを捌き合う展開になった場合、この例からも明らかなように、先に手を作ることができる白が有利なことは、先人の叡智や近年のAIやソフトの発達により、すでに判明しています。逆に黒はその進行を避けなければいけないということになります。
センターポーンを失った黒は、第1図のように強引な攻め手を繰り出したとしても、もう間に合わなくなってしまっています。攻めと守りのバランスが明らかに崩れています。
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