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オーガニックマーケットスタディツアー報告書2017伊仏 回想から発想へ

 本シリーズの第3回は第1回の独仏に連続してオーガニックマーケットの市場調査を兼ねながら、スローフードを世界に提唱したイタリアの有機農家、生産者協同組合、共同購入組織などを訪ね、再訪となるフランスでは大都市パリと地方小自治体での有機農業やオーガニックな学校給食の現場を訪問、体験するスケジュールを組み立てた。両国各4泊滞在したが、それでも時間が足りずに参加者からは、アッと言う間に濃密な時間が過ぎ去ったとの感想がもれていた。団長役の徳江さんを含め、11人の忙しいメンバーにとっては日本を10日間空けることのリスクは多大だったことは想像に難くないが、集まってきた皆様の報告書の原稿を読むと、その10日間を十分以上に元を取っていただいたことを察することができ、裏方冥利に尽きる。これも勤勉かつ明朗快活に旅を続けた11人の旅仲間同士のおかげでもあるだろう。

 最初の訪問国イタリアでのコーディネート兼通訳は日本に「スローフード」を紹介したエッセイストの島村菜津さんを通じて、彼女の大事なイタリア在住の仕事仲間の仲西えりさんにお願いすることができた。島村さんのイタリアを紹介した多くの著書の現地協力者でありオーガニック関係では人脈と知見の豊富な仲西さんだからこそ、この内容が組み込めたとも言える。また、アルチェネロ関係の視察や現地セミナーは日本の総代理店の日仏貿易さんにご協力いただいた。宿泊施設はというと、都市部にあるホテルを利用するのが効率的なのだがイタリア特有のアグリツーリズモをぜひ体験していただきたく、2泊をカシーナサンタブレナに滞在した。そのお陰で、短い滞在ながらもイタリアの農家のライフスタイルや農家経営のバックヤードと観光対応も見学し、まさにスローライフの一端を体験してもらえたことと思う。その他、視察内容は参加者メンバーの報告書にお任せして、おまけとしての観光をロンバルディアルネッサンス最大傑作パヴィア修道院(独居僧の晴耕雨読の生活で有名)を、閉門時間まで交渉して、熱心に案内してくれた共同購入組織GAS代表マウロさんの地元思いとサービス精神に心から感謝する。

2017パリ18区郵便局屋上農園

 もうひとつの訪問国のフランスには恒例のゼネストの影響で半日遅れの深夜にホテルに到着することになった。南仏ニースの空港には前回同様パリ在住のジャーナリストである羽生のり子さんが待ってくれていた。今回も彼女の精力的な交渉のお陰もあり、スケジュール変更が無事できたものも多かった。ムアンサルトゥーとパリ2区の学校給食は最も予定変更をしにくい類いだが、ぎりぎりの調整ができて無事、子供たちと一緒に食事もできたのし、客観的な視察だけでは得られない体験の成果を持ち帰ることができた。
 南仏からパリに移動する前、束の間の安息時間をアンティーブで設けた。ピカソ美術館と名もないレストランのワインと生牡蠣はメンバー全員にエネルギーを供給してくれたはずだ。五感を心地よく刺激されたメンバーは最後の訪問都市パリの灯を夢見心地で眺めたかもしれない。
パリの3泊は治安のいいヴァンセンヌの森の近くのホテルを確保できた。クラスは3ツ星だが、ロケーションが良く、清潔でこじんまりとしていてメンバーにとっては快適な滞在を楽しんでいただけたようだ。派手な宣伝はしていなかったが、朝食の食材はオーガニックでリネンなどのホテルの設備も環境対応に配慮した気持ちのいいホテルだった。

  前回同様、ミラノ合流、パリ解散の方々もいて、11名での濃密な時間の前後は皆さんが精力的にそれぞれの目的を果たされたことを期待しつつ、毎回のことだが、もっと、もっとと沸いてくるスタディツアーならではの向学心をエネルギーにして、次回に生かせるネタも収集できた。報告会ではそのあたりも発表させていただこう。メンバー11名の皆様とコーディネーターのお二人に心から感謝したい。

そんなに長くない残りの人生、これからは、いかに自分が幸運な人間であったかを勝手に伝えたい。たとえそれがささやかな幸せであったとしても、それを誇ることでこれまでの恩人たちに謝意を表したい。