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キャリコン的ブックレビュー『臨床のフリコラージュ』(1)

お疲れ様です、キャリアコンサルタントのタケシマです

以前心理士の東畑開人『ふつうの相談』というカウンセリングの名著をレビューしましたが、今回は東畑さんと、精神科医の斎藤環さんの対談『臨床のフリコラージュ』です
なんといってもサブカル好きのお二人の対談ということで、同じくサブカル好きのタケシマとしてはとても楽しみにしていた本です。

読後感として最高にスリリングで深く、かつ面白かったです。では中身を見ていきますが、多様な論点が提出されておりまして記事を何度かに分けます

まず、心理士(東畑開人)と精神科医(斎藤環)という立場の違いについて一般的にはあまり知られていないと思いますので簡単に整理すると。法的に医療行為をする/しない、という区分があります。精神科医の場合は投薬含め医療行為を行いますが、心理士は行えません。学部も医学部で学ぶ精神科医、教育学部などで学ぶ心理士と違いがあります。
同じようなメンタルケアに見えますが、精神科医は統合失調症、うつ病などの精神疾患を治療する、心理士はうつ病などだけでなく心の悩み全般を扱います。

もちろんクロスする部分も多く、今回の対談では両者のポジションの違いと共通性の話題が語られます。

さて、今回の記事で取り上げたいのは東畑開人さんが心理士の仕事として二種類の仕事があるという考え方です

心を可能にする仕事/心を自由にする仕事

心を可能にする仕事とは、心が危険な状態にある時環境にケアを配置すること。いじめがあるなら、いじめを止める、お金がないなら自治体などからお金を引っ張ってくる。個室を与えること、、など。環境を整備することで初めて人は「俺、不安だったんだ」、「私、傷ついていたんだ」と考え始めることができる。

一方の心を自由にする仕事とは、

安全を確保したのだけれども、その上で心の問題に取り組むというクライエントもいます。心を可能にする仕事をした後にある程度の落ち着きを得てから、自分の心を見ていこうとするクライエントたちとの精神分析的心理療法です

クライエントは、愛情や信頼、仕事などについての悩みを「贅沢な悩みかもしれないけど」と言ったりする事も多いようです、これは確かに人の生死に関わるような問題と比べると「贅沢な悩み」と言えなくもない、でも東畑さんによれば、

「贅沢な悩み」って人間的に切実な悩みでもある

と説明します。これはすごくよくわかる考え方ですね。
マズローの有名な図式で考えても、生理的欲求、安全の欲求に関わるのが「心を可能にする仕事」、それ以上のレイヤに関わるのが「心を自由にする仕事」と整理することもできそうです。

DVで深刻な被害を受けている人には、まず隔離した安全な環境を用意する必要があります。それを確保した上で心の悩み、実存的な悩みに向き合うというステップ。

キャリアコンサルタントの場合は、職務上「心を自由にする仕事」が多い傾向にあると思いますが、クライエントの状況がどの段階にあるのかをまずはしっかり把握することが大事ですね。もし仕事と家庭の両立でしんどい思いをしているクライエントが来談してきた場合、まずは「心を可能にする仕事」として、心の安全な場所を確保するような寄り添い方が重要。その場所を確保した上で、クライエントの自己理解や仕事理解、価値観に進んでいくというステップです。

今回は以上です、本書ではまだまだ重要で面白い論点が提出されていますのでレビューは続きます

ではでは





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