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vol.18 睡眠と脳機能の関係

今回は「睡眠と脳機能」についてのお話です。

睡眠不足で働くことは、脳震盪を起こしている状態で働くことと同じ

寝る時間も惜しんで働く。
残業が当たり前。
定時退勤を許さない空気。

そのような状況が定常化していることは、おそらく、働き盛りの方々にとってみれば、当たり前の状況だと思います。自営業やフリーランスでお仕事をされている方は、決まった勤務時間がない業務形態ならば、余計にいつまでも仕事をしてしまうこともありますよね。

当然のごとく、睡眠時間が削られることになるわけですが、それは果たして仕事におけるパフォーマンスに影響しないのか? クリエイティブな発想は生み出せるのか。集中力は持続出来るのか? 「今」は大丈夫だと思っていても将来的に問題はないのか? そのような疑問はありませんか?

マサチューセッツ州にある米国科学研究所が行った、睡眠不足の患者のアイトラッキング・テスト(眼球運動を分析し、視覚的注意などを明らかにする生体計測手法)では、睡眠不足の程度が深刻であるほど、認知能力や注意喚起能力が低下するという結果が出ています。このテストでは、VR(バーチャルリアリティ)の器具を装着させ、回ったり、動いたりする小さな黒点を目で追わせて行い、動体視力ではなく、脳の状態を調べています。

https://academic.oup.com/milmed/article/179/6/619/4160779
出典:Predictive Visual Tracking: Specificity in Mild Traumatic Brain injury and Sleep Deprivation.Jun Maruta, PhD ; Kristin J. Heaton, PhD ; Alexis L. Maule, MPH ; Jamshid Ghajar , MD , PhD

また、研究結果として、脳震盪のような軽度の外傷性脳障害を負った被験者のテスト結果と似たパターンが出現しており、これは、つまり、睡眠不足により脳神経の一部の機能が乱れることを意味します。より分かりやすく言うと、“睡眠不足の状態は脳震盪を起こした人と脳の状況が非常に近い”ということを表していると理解することができます。

睡眠不足が続く=脳震盪に似たような状態で働き続けている。

これは、人間にとって、果たして正常なことなのかどうか?
ちょっと、立ち止まって考えてみて欲しいのです。


睡眠不足は脳疲労を引き起こす

この実験では、26時間連続起床時を被験者にしていますが、別の実験では慢性的な睡眠不足が溜まっていく“睡眠負債”によって、肉体的不調、精神的不調といった健康障害も引き起こすことが明らかになっていますし、さらには、長期的な睡眠不足は脳を縮小させるという研究結果も出ています。

睡眠時間を削ってまで仕事や勉強をする。それが、当たり前のように考えられている労働環境は、残念ながら、まだまだ存在していますが、それ以前に、個々人の認識や危機感が、おそらく、まだそこまでいっていないということも大いにあるのではないでしょうか。企業側から、各個人に睡眠をしっかり取りなさいと伝えても、なかなか実践に至らないのは永遠のテーマかも知れません。


睡眠は健康になるための重要な選択肢の一つであるということ

ですから、まずは、睡眠不足によって、自身のパフォーマンスが最大限に引き出せていないということをお一人おひとりに、是非知ってもらいたいのです。睡眠不足によって何が引き起こされるのか? それを伝える事で、健康になるための「選択肢」を増やすことができると私自身は考えています。

数々の身体の不調が睡眠1つで良い方向に向かう事でパフォーマンスは引き上げられる可能性は大いにあります。

次回は睡眠が記憶や感情にも影響がある、というお話をしたいと思います。

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