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「Rebirth(仮)」(3)発病

(2)幼少期~

兄は大学3年の終わりから、1年間大学を休学して、オーストラリアへワーキングホリデーに行きました。帰国子女や留学経験者が多い学部だったので、自然な流れなのかな、と私はさして気にもせず、「帰ってくる頃には英語ペラペラになってんのかな~」くらいにぼんやりと考えていました。

オーストラリアに行ってから半年ほどが経った頃、たまに近況報告など兄とやり取りをしていた母が、兄から「最近少しリンパが腫れている」と連絡を受けたようで、家族で「大丈夫かな?」と話していました。

そんな連絡があった数日後、私と姉が四国旅行に行っていた帰りの前日に、母からLINEのメッセージが届きました。

「明日祥一が帰ってくる」

私と姉は「え???だって、1年間じゃなかった?なんでもう帰ってくるの?」と訳が分からず理由を聞くと、

「向こうの病院に行ったら、お医者さんにすぐ日本に帰って詳しい検査をするように言われたみたい」と。

「え…、そんなに悪かったの?わざわざオーストラリアから帰ってくるって、絶対普通の体調不良じゃないでしょ…」と凄く心配になりましたが、詳しく検査しないことにはわからないし、家族があまり心配すると本人が余計不安な気持ちになるのでは、ということもあり、姉と「なるべく普通に迎えようね」と話しました。


私と姉が予定通り旅行から帰り家にいると、両親と一緒に兄が帰ってきました。久しぶりの実家にも、兄の顔に笑顔はなく、表情が強張っているように感じました。
「おかえり」と言うと、「ただいま」とだけ返し、それ以上は喋ろうとしませんでした。

母から兄の首付近にしこりが出来ていることは聞いていたので、見せてもらうと、私が想像していたより3倍くらい大きなしこりがあり、ゴツゴツとして硬いのが見ただけでもわかるほどでした。

「これは大変なことになったんじゃないのか…」と感じましたが、しこりがある以外にそこまで体調は悪くないということで、「じゃあ明日病院で詳しくみてもらおう」と、その日は終わりました。

母は、兄から状況を聞いた時から血液系の病気だと踏んで病院を調べていたらしく、血液内科で有名な都内の病院へ次の日検査へ行き、そのまま兄は即入院。


翌日、「急性リンパ性白血病」と診断されました。


「白血病」と聞いて、「白血病って、あの白血病…?」と、頭の中で小さいころに映画やTVドラマで見た「世界の中心で、愛をさけぶ」が浮かんできました。
そんな物語の中でしか聞いたことがなかった病名に、私はなんだか信じられない、フワフワと現実感のない気持ちでした。

ただ、「白血病って今では治る病気だし、治療は本当に大変だろうけど、お兄ちゃんは若くて体力もあるし大丈夫でしょ!」と当時は考えていました。


家族で話し合い、兄の入院中、毎日できるだけ家族の誰かがお見舞いに行くことになりました。両親は平日は仕事で忙しく、姉も美容師の仕事をしており、当時家族で一番自由がきくのは私でした。
都内の大学に通っていたので、バイトがない日は授業が終わってからよく病院へ行きました。

入院当初、兄の友達が頻繁にお見舞いに来てくれて、それが凄く有難かったです。友達と話したり楽しく過ごすことが、兄にとって一番の入院中の癒しになっていたと思います。

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