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【理学療法士の臨床と研究】確証バイアスに御用心

大学院で学んだ疫学・公衆衛生学の知見を元に、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。

新年度に合わせて進学や、キャリア形成に関する投稿が多かったですが、
たまには、自分の専門の事もお話しします。


今回は「確証バイアス」の怖さについて
です。


新年度になり、新しい臨床研究のキックオフや、部下や学生の指導、経験年数が上がって難しい症例を担当することになった人も多いと思います。

こんな時は、張り切ってたくさん調べ物をしたり、その内容を人に教えたりする機会が一気に増えると思います。

この時に、特に気をつけていただきたいのです。

私は、若い頃「確証バイアス」について、全く意識をしていませんでした。



‖  反抗期(25歳くらい??)の思い出


理学療法士になり3年目くらい経過し、職場でできることが増えてくると、もう大人なのに、どこか思春期の反抗期のような気分になってくるものです(私だけ?)。

先輩)ジローちゃん。このアプローチは、こっちの方がいいんじゃない?

ジ)最新のトレンドはこっちですよ。

先輩)でも、その考え違うんじゃね?

ジ)絶対に先輩の方が間違っているはず。(いちいちウルセー。)

後日
先輩が納得するように、関係資料をめちゃくちゃ検索、検索、検索。

ジ)ほれ、私の考えを補填する論文や資料がこんなにたくさんありますよ。先輩も読みますか?ドヤ!

先輩)・・・・。



‖  確証バイアスと、その恐ろしさ


自分の主張を正当化する情報だけを重用したり、都合よく解釈する認知バイアスの一つ。

*認知バイアス:本来望まれる理想的な思考から遠ざけようとする、無意識の心の働きや思考の癖


「確かに先輩が言う事も一理ある」とも思わず、とにかく自分が信じた情報だけ大量に手に入れ他を排除する。

ただ、自分の偏った考えの中で取り入れ、意見と違うものは、そもそも違うと勝手に決めつけ、、。

盲信している理論が破綻しても、それを信じない。など、など。

本当に手に負えないですね。


ある日、パッと目が醒めたんですね。
どれだけ自分が偏った思考に陥っていたかを。


やってしまった、、、。という情けなさとか、
今まで、何を言っていたんだか、、、。という恥ずかしさ


ブワーッと出てきて、とても落ち込んだのを覚えています。


‖  確証バイアス、どうしたら治る?


この「確証バイアスという名の頭の病気」の治し方を調べている中で、「疫学」と言う学問に出会いました。

私が、新たに学ぶフィールドを疫学に選択したのにも、上記の理由が大きく関わっています。

↓↓過去記事 実際にお世話になる研究室はどのように決めた??

大学院では、「疫学・衛生学分野」の教室にお世話になっていたのですが、
ゼミでは毎週 「医学論文のcritical appraisal」の時間が設けられていました。

医学論文などの学術論文では、「査読もあるし、言っている事が間違っていない」といった錯覚があります。実際には、質の低い情報もあり、玉石混交なのです。


批判的吟味(critical appraisal、クリティカル・アプレイザル)とは、仕入れた情報や文献の内容を鵜呑みにせず、論文の結果の妥当性を検証します。

論文を読むときに、ただ読み流すのではなく、データ収集や測定にバイアスが無いか交絡因子が考えられているか、統計手法は妥当か、研究課題に対する結論として正しいかなどをチェックしながら読み進めます。


以前、お伝えした疫学の入門書
13章にCAについて詳しく書いてあります!

2年間ですが、疫学教室でみっちりトレーニングしていただいた結果、一つの論文を読むにしても様々な角度から検討できてくるようになりました。

一つの強い主張があれば、必ず反対の立場は無いか検索するようになりました。


↓↓過去記事 文献検索苦手な方へ! エイゴムリな方も是非。

様々な角度から論文や資料に目を通すことで、視座が高くなり、実際の臨床現場でも良い判断ができるようになったと思います。

その点で、大学院生活は、私の理学療法人生の大きな助けになりました。



■まとめ


確証バイアスとは、自分の主張を正当化する情報だけを重用したり、都合よく解釈する思考の癖

若い頃の私は、これに自覚なくとらわれていた。

私みたいに、極端に偏った情報の取り方をしないように、気をつけて!

もし、その傾向があるなら、「疫学」の門を叩いてみてはいかが?


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