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「紫陽花をドライフラワーにしちゃいけないよ。そのまあるい花は、雨でできているから」
雨傘を避けると、おじいさんがわたしを見下ろしていた。
「ドライフラワーってなに?」
わたしが尋ねると、おじいさんは目を細めた。
「お花をミイラにしてしまうことさ、お嬢さん」
ミイラってなに、と聞いたけれど、わたしの声は雷に打たれて流れていった。
梅雨の頃になるといつも思い出すこの秘密の記憶は、セピア色に乾くことなく鮮やかに蘇ってくる。
おじいさんの言った通りだ。あのときドライフラワーにしてしまわなくてよかった。
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