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オープンな性

前から不思議なのは、コンプライアンス等が厳しくなって世の中の表向きな発言は慎重になっていく方向なのに、インターネット上や文学の世界では生々しい描写が許されていたりすること。
特に性的なコンテンツが老若男女問わずたくさんの人に届くようになったと思う。
昔なら必死で作戦を考え周りの目を盗み鑑賞していたものも、今なら手軽に手元で手に入る。
大人になる上で正しい性教育というのはとても大事なことなので、早い段階から知識を得るのはいいことだけど、インターネット上には品のない性コンテンツが溢れている。
ドラマや映画などでも昔よりオープンに性描写がされているように思う。
人は少なからず見ているものに影響を受けてしまうので、メディア自体がオープンにしている以上、社会はそのような方向に動いていくのだろう。
倫理観は時代によって変わっていく。

とはいえ、歪んだ、屈折した性質を持っている人もいるので、特に女性はその怖さを拭えないし、心の傷にもなりうるので性がオープンになりすぎると、正しさと間違いの線引きがむずかしい。
性とは、食べることや寝ることと同じくらいの欲求なのに、社会のルールに強く抑圧されている。
男女の問題はいつの時代もトラブルを抱えているし、メディアのゴシップネタはいつだって人気だし、映像も音楽も恋愛事情をテーマにしたものが多いし、抑えられた欲をそれらのコンテンツで発散しているのかもしれない。
いくつ歳を重ねても“ときめき”を切望している周りの人たちを見ていると、男女関係の裏側にある性という欲の引力の強さを感じてしまう。

話題の芥川賞受賞作の「ハンチバック」を読んだ。
読んだというか聴いた。
耳読書という言葉があるけど、耳で聴いた本を読んだということに違和感を覚えつつも、中身で表現されている性描写が実に生々しい。
このような本を小学生が読むことだってあるだろう。
芥川賞という権威ある賞が、そのような作品を選んだことに今の社会の世相が顕著に表れている。
この本の大きなテーマは障害なのでなんとも言い難いけれど、読後感(読んでないけど)の性描写の生々しさが妙にこびりついている。
これが時代の変化なのか。
なんとなくまだ馴染めずにいる。

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