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【SR04】人生には黒と白がある・ZEBRA ROCK

社会人バンド・ZEBRA ROCK(ゼブラロック)を主宰する、Gt.&Vo.コバヤシケンヤ。埼玉県出身の彼は、アイドルに憧れて音楽の道を志し、ギター弾き語りシンガーソングライターやアコースティックデュオとして活動してきた。輝かしい青春と挫折を経て、2023年1月から開始した現在の活動と、目指す生き方とは。

アイドルの影響を受けた青春時代

埼玉県出身のコバヤシケンヤは、車や電車が好きな、普通の少年だった。

「もし音楽に出会ってなかったら、今ごろ、車に熱中してたと思います」。

音楽を聴くことも好きだった。

「ちょうどジャニーズのアイドルブームで、『SMAP×SMAP』などのテレビ番組をよく見ていました。木村さんと草薙さんが剣道をやっている姿に感動して、中学校では剣道部に入ったくらいです。結果として、身体と声量が鍛えられました」。

音楽活動の原点となるアーティストを知ったのも、同じ時期だ。

「藤井フミヤさんが、自身の主演されるドラマの主題歌として、『Another Orion』を歌われていたんです。『カッコいいなぁ』と思いました」。

さらに歌番組でチェッカーズを知り、「アイドル的なバンドをやりたい」と考えるようになった。

また、中学校2年生のとき、林間学校で歌を披露したことも、音楽活動を始めるきっかけとなる。

「各クラスから一人ずつ、ステージで出し物をすることになって、僕は猿岩石の『白い雲のように』を歌いました。同学年の生徒全員、300人くらいの前で歌うのは、驚くほど気持ちがよかったです。みんなも『こんなに歌が上手いとは思わなかった』と褒めてくれて、嬉しかったですね」。

高校へ進学すると、軽音楽部へ所属。L'Arc-en-CielやGLAYなどのコピーバンドを組み、ボーカルを担当した。

「基礎的な歌の練習をするために、合唱部も兼部してました。あとは全部、独学です。ギターは、父がバンドをやってて、家にあったのが大きいですね。好きな曲のコードを鳴らしてみるところから始めました」。

卒業後は、働きながら音楽を続ける道を選んだ。

「リスペクトしている藤井フミヤさんが、国鉄に就職してからプロになられたのを知って、『僕もそうしよう!』と考えました」。

就職直後は生活が慌ただしく、高校時代のバンドも解散してしまった。しかし通勤の合間に路上ライブを観覧するなど、音楽への情熱は失わなかった。

19歳ごろから、新潟県や埼玉県の路上で、ギター弾き語りシンガーソングライターとして活動を開始。川越 STUDIO CHIKOでのスタジオライブに出演するなど、経験を積んだ。

2006年には、路上ライブを通じて出会ったアーティスト仲間と、アコースティックデュオ・TAKE COLORS(テイクカラーズ)を結成。

「僕はハンドマイクで歌って、相方はギターに専念して、アイドルっぽい感じでやってました。『バンドよりも激しいライブやってやるぜ』って意気込みで、武道館とか、ホールツアーとか目指していました」。

川越市の路上やライブハウスを中心に演奏し、アルバムを発売するなど精力的に活動。しかし16年11月5日、西川口Heartsで解散ライブを行い、約10年の歴史に終止符を打った。

「年齢的な節目もあったし、やれることはやりきったかな、と。お互いの音楽性も変わってきたし、別々の道を進むことにしました。解散ライブのあとは、鶴ヶ島ハレっていうライブハウスに集まって、お世話になった人みんなと二次会のような配信ライブをして、盛り上がりました。青春でしたね」。

人生の頂点とどん底を知って、再出発

こうして2017年から、ソロのシンガーソングライター・コバヤシケンヤとして再出発。プライベートが忙しくなったため、ライブの回数は減らしたものの、YouTubeでライブ動画を公開したり、オリジナル曲のMVを発表したりと、工夫して活動を続けた。

「当時の僕のイメージカラーは、白。真っ白なイメージを前面に打ち出していました」。

ギター弾き語りはもちろん、打ち込み音源を利用して、ライブ感のあるパフォーマンスを披露していた。

「TAKE COLORS時代からオケを作っていたので、それを継承して、マイクスタンドを振り回して歌ったりしていました」。

だが20年春、コロナ禍が世界を襲う。さらに22年には、プライベートで失意のどん底に陥った。

「絶望のなかで、人生の本質、音楽とは何か、そういったことを初めて理解できた気がします。それまでの僕は謙虚さが足りなくて、地に足がついていなかったから、そんな状況になったんだとも思います」。

深く思い悩んだ末、22年9月1日、西川口Heartsでのワンマンライブをもって無期限の活動休止を宣言する。

「コバヤシケンヤとしての活動は破綻してしまいました。ただ、音楽は続けたいという気持ちがあったんです。ミュージシャン仲間とお酒を飲んでいたとき、『改名したら?いっそ、バンドを始めてもいいんじゃない』と言ってもらったことが、再出発のきっかけになりました」。

準備期間を経て、23年1月1日から、社会人バンド・ZEBRA ROCKのGt.&Vo.コバヤシケンヤとして、音楽活動を再開。

「どん底のなかで、『人生には良いことや白い部分だけじゃなくて、黒い部分もある』と身に染みました。混ざり合うでもなく存在するそれらを、そのまま表現したいと考えたとき、ゼブラ柄が浮かびました」。

バンドではあるが、正規メンバーはケンヤのみ。他は準メンバーとして、ライブごとにサポート演奏を依頼するという、珍しい形態を選んだ。

「正規メンバーを揃えると、自由さがなくなるんですよね。スケジュールが合わなくて、ライブできなくて、解散してしまうのは嫌です。たとえば有名な吹奏楽団でも、コンサートごとに構成員は入れ替わりますよね。ZEBRA ROCKは、そんな概念に近しいものです」。

ZEBRA ROCKとして、持続可能な音楽活動を

23年3月には、東名阪ツアーを敢行した。

「心機一転、やってみたかったことをやろう、と。20年ほど音楽活動をやってきましたが、西日本で歌ったことがなかったんです。ちょうど仕事の休みが取れたので、突発的に行ってきました。名古屋も大阪も、それぞれ文化が違って面白かったですね」。

ツアーファイナルとして、東中野オルトスピーカーで開催した『39 TOKYO CITY 2023春』は、盛況に終わった。

「ソロ時代からのアーティスト仲間と、オルトスピーカーという場所を通じて知り合った方々と、半々くらいで集めました。熱い人ばっかりの、良い夜になりました。歴史的瞬間でした」。

6月3日からは、全国ツアーを決行する予定だ。

「まずは東京の新宿からスタートして、7月1日には群馬の前橋、20日には福岡の天神、8月7日は新潟、9月10日は茨城。最後は9月24日に、埼玉県の川越で締めます。川越では、バンドで演奏するつもりです」。

さらに、ツアーに合わせて、100枚限定無料配布シングル『人生はいつだって』をリリースする。

「22年の夏ごろ、どん底に落ちていたとき、不意に、歌詞とメロディが一緒に出てきたんです。あのころは、リスペクトしている矢沢永吉さんの音楽を聴きまくっていたので、その影響もあるかもしれません」。

シンプルながら心に残るメロディーと、「人生はいつだってやり直しできるんだ」というストレートなメッセージが胸に刺さる楽曲だ。

「正直なところ、自分はまだ、回復しきっていません。この曲を歌って、もちろん聴いてくださるお客さんに元気になってほしいと思っているけれど、自分自身に言い聞かせている部分もあります。ZEBRA ROCKの出発点、という曲ですね」。

全国ツアーの先の展開も考えている。

「今年の冬に、40歳になります。40代最初のワンマンを、自分の拠点である川越でやるつもりです。その後は、社会人として生活を安定させながら、マイペースに活動を続けていきたいです」。

リリースする楽曲やライブの本数が少なくなっても、開店休業のような時期があっても、寿命が尽きるまで音楽を続けたいと語る。

「ミュージシャンって、高い目標を掲げがちですよね。僕も、若いころはそうでした。武道館とか、ホールとか。でも、今は違うんです。一歩引いたところで、人生として音楽をやっていきたいですね」。

彼が情報発信を行っているTwitterやInstagramなどが、全て鍵付きとなっているのも、この姿勢が関係している。

「さっきの目標の話に繋がりますが、多くのミュージシャンは『不特定多数の人に自分を知ってほしい』と言って、SNSなどをやります。でも、その立場から引いた僕にとっては、リスクの方が大きいんです」。

自分のファンに、安心できるコミュニティを提供したい。クローズドな空間で絆を育み、快適にライブを見てほしいと考えている。

「一般的に、SNSは不特定多数と繋がるツールですが、僕はそういう風に使いたくありません。ライブやオープンマイクの場で、実際に出会ったお客様やアーティスト仲間と繋がる手段にしたい。顔が見られる、温かい関係で、活動をしていきたいです」。

良い意味で時代に逆行したスタイルかもしれない。

「人生って、上手くいかないことがありますよね。落ち込んでいる人や、元気をもらいたい人が、僕の歌を聴いて、少しでも気が楽になったら嬉しいです」。

彼の音楽が、多くの人の心の支えとなり、彼自身をも救うことを願う。

text:Momiji

INFORMATION

全国ツアーの詳細は、特設ページからご確認ください。下記バーコードからもアクセスできます。

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