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【R17:STORY】七色変化する音楽を届ける正統派ポップバンド・FeelAround

Vo.wataruとGt/Cho.Toshiを中心に活動しているポップバンド・FeelAround(フィールアラウンド)。近年は、ふたりだけのアコースティックな編成や、サポートミュージシャンを加えた形でライブ出演を重ねている。彼らの音楽への思いと、夢を聞いた。

カラオケから始まった、ボーカリストの人生

ボーカリストのwataruは、子どものころ、美容師になることを夢みていた。中学校と高校の部活はバレー部。歌う事には、あまり関心が無かった。

「今でこそバンドのボーカルをやっていますが、中学生ぐらいまでは、人前で歌うことが恥ずかしかったんです。友達とカラオケに行っても、順番が回ってきたら仕方なく歌うくらいで、消極的でしたね」と、彼は懐かしむ。

テレビ番組で流れる曲や、車のなかで親がかけるKinKi KidsのCDなどを、聞くともなく聞くだけだった。

そんな彼に転機を与えたのは、高校でできた親友だった。

「親友と時間を過ごすなかで、カラオケに行くことが増えました。ある日、Mr.Childrenの曲を…どの曲だったか忘れましたが、なんとなく覚えていた有名な曲を歌ったら『めちゃくちゃうまいやん』と褒めてもらったんです」。

当時のwataruには、これといった特技がなかった。

「『自分にも、他人から「上手い」とか「すごい」って言ってもらえることがあったんや』って、嬉しかったですね」。

歌うことの面白さに目覚めたwataruは「もっと上手くなりたい」と考え、意欲的に音楽を聴くようになった。特に、Mr.Childrenやスピッツに惹かれ、聞き込んだ。

とはいえ、その時点では、音楽は趣味の範囲にとどまった。高校卒業後は、幼いころからの夢を叶えるべく美容専門学校へ進学。美容師として就職し、働きはじめた。

だが、下積み時代の仕事は、想像していたよりも過酷だった。

「『このまま美容師という仕事を続けていいんだろうか』『自分の人生はこれで終わりなんだろうか』って、悩むようになりました」。

一方、歌への思いやバンド活動への憧れは、消えるどころか強まっていた。

「決定打は、そのころ付き合っていた彼女が『wataruは歌っているときが一番楽しそうな顔してるよね』と言ってくれたことです。自分の悩みを全て相談していたわけじゃないんですが、なにげない瞬間にその言葉を貰ったことで、『やっぱり俺は歌いたい』と、強く自覚しました」。

覚悟を決めたwataruは、すぐさま仕事を辞め、上京した。「せっかく音楽をやるなら、夢を持った人たちが一番集まる場所でやりたかったんです」。

とはいえ、知り合いすら一人もいない状態だった。

「なんとかなると思っていましたが、『歌が好き』ってだけじゃどうにもならないことが多かったです」。

「君は何ができるの?」と訊かれた時に、胸を張って答えられるようなプラスアルファを身につけたかった。しかし、改めて歌や楽器を習いに行くお金もない。安いギターと教則本を買い、一人で練習を積んだ。

並行して、あちこちのライブハウスに足を運んだり、バンドメンバー募集サイトを見たり、自分の歌える場を探した。

「『ボーカルを探している人はいないかな』『どんな人と巡り逢えるのかな』と思いながら、手探りで努力していました」。

不安と焦燥感に苛まれる日々が終わりを告げたのは、2013年ごろだった。

「募集サイトで、とあるバンドのベース兼ボーカルをやっている人と知り合ったんです」。その人物は「自分の歌では上に行けない」と感じ、ベースの演奏に専念するため、新たなボーカルを探していた。

「一緒にカラオケに行って、歌を聴いてもらったら、『ヤバいな』と言葉が返ってきて。『お前だったら、ボーカルを譲っていいと思える』と。僕はとても感動して、『がんばります!』と答えていました」。

ボーカリストとしてのwataruが、スタートラインに立った瞬間だった。

J-POPをこよなく愛するギタリスト

ギタリストのToshiは、幼いころから音楽に親しんでいた。「物心ついたときには、気に入ったCMソングや、流行りの歌を口ずさんでいました。ヒットチャートにあがっているようなJ-POPが大好きでしたね」。

中古のCDを買い集め、片っ端から聞きこんだ。最も好きなアーティストはGLAY。Mr.childrenやスピッツも好きだった。

ギターに触り始めたのは小学生のころだ。「兄も音楽に興味を持っていて、ギターやベース、ドラムなど色んな楽器をそろえていたんです。それを勝手に借りて、本を見ながら弾き方を覚えました」。

彼は苦笑いしながら、「チューニングからハードモードでした。僕が持っていた教則本には、チューナーのことが載っていなくて、音叉を使えと書いてあったんです。何も分からないので、鵜呑みにして、楽器屋で音叉を買って頑張りましたよ」。

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音楽で生きていくことしか考えられなかったToshiは、高校卒業後、音楽専門学校のギター科へ進学した。

専門学校では、同級生とのギャップに驚いたと言う。

「みんな上手いのはもちろん、好きな音楽やギタリストの話題になると、洋楽のことばっかり語るんです。僕は日本語の響きが好きで、日本語詞に触れるのが楽しかったので、洋楽はあまり聴き込んでいませんでした」。

周囲についていけないと感じたToshiは焦り、様々な洋楽を聞き漁った。

「それで気づいたのが『僕はあまり、ギタリストとして音楽を聴いていないのかもしれない』って」。

彼が惹かれたのは、洋楽でも、ポップスの歌だった。

「ロックなサウンドでガツンと来るアーティストより、人の心を幸せにするような歌が好きだなって。ベタなところではビートルズ、マドンナ、シンディ・ローパーとか。自分もバンドをやるなら、そういう音楽をやりたいって思ったのが、今も原点にありますね」。

実際にバンド活動を始めたのは、専門学校を卒業してすぐのことだった。

2010年3月、Toshiとボーカル、ベースの三人を中心として結成したFeelAroundは、彼にとって二つ目のバンドだ。

FeelAroundという名前には、「波紋が広がる」「思いが伝わっていく」という意味をこめた。当時のキャッチコピーは『七色変化のカメレオンポップバンド』。現在まで使用し続けているロゴにも、カメレオンのモチーフが組み込まれている。

「一つのジャンルにこだわりたくないっていうコンセプトがあったんです」とToshiは語る。

「僕がずっと聞いてきた、J-popのヒットチャートに乗るようなアーティストって、色んな楽曲をやっているんですよね。バラードが得意な人でも、ロックやパンク、ジャズを歌ったり。

僕たちも、曲ごとに歌詞やメロディを伝えられる最良のアレンジをしたいから、ジャンルにこだわらない『ポップバンド』。イメージアイコンとして、体の色が様々に変化するカメレオンを選びました」。

結成後は、赤坂clubTENJIKUをはじめ、渋谷や下北沢など都内各地のライブハウスへ出演。2016年には白鴎大学学園祭の特設野外ステージでトリを務め、RO69JACK 2016 for ROCK IN JAPAN FESTIVALの一次選考を通過するなど、意欲的に活動していた。

しかし紆余曲折あって、16年秋、ボーカルが脱退してしまう。

「急なことだったので、しばらくの間は、僕がギターボーカルとして歌っていました。歌うのは好きなんです。そんなに上手くないけど」。

活動継続の危機に見舞われたToshiたちだったが、「まだFeelAroundとして前に進みたい」という想いで結束し、新たなボーカルを探し始めた。

Vo.wataruが加入し、新生FeelAroundの活動開始

「16年ごろまでの僕は、別のバンドでギターボーカルをしていました。FeelAroundとも何度か対バンをしたことがあります」と、wataruは振り返る。「自分のバンドが解散してしまって、次はどうしようかなと考えていた時に、声をかけてもらいました」。

wataruを勧誘したのは、当時のベーシストだった。

「普通、ボーカルが抜けたら、バンドを解散する流れになりますよね。だけど、FeelAroundのままで活動したいという強い気持ちを説明してもらって、感じるものがありました」。

「僕も歌が好きだし、バンド活動を続けたいと思っていました。FeelAroundの曲もメンバーも知ってるし、一緒にやれるなら頑張ってみようと決めました」。

wataruの加入について、Toshiは「新しいメンバーが彼でよかったです」と言う。「技術があって上手いのはもちろん、アコギ一本でも寄り添っていける、楽曲の柱としてドンと構えてくれる歌声なんですよね。ボーカルとしてじゃなくても、人として尊敬できる部分がたくさんあります」。

こうして2017年2月11日、下北沢ReGで主催したイベント『Chameleon's Party Night Vol.2』にて、Vo.wataruが加入した新生FeelAroundとして活動を開始。同日に1st Single『POWER SONG』を発売した。

9月には2nd Single『EVE』をリリースし、11月に表題曲のMVをYouTubeにて公開するなど、勢いは止まらなかった。

さらに2018年2月に発売した3rd Single『Pastel Films』を引っさげ、約5ヶ月間にわたって全国15か所以上のライブハウスへ出演するツアーを敢行。同年7月にはZepp Tokyoで行われたオーディションライブにも参加した。

「演奏した時間は短かかったですが、とてもいい経験として記憶に残っています。ぜひまたあのステージに立ちたいですね」。

FeelAroundは、wataruにとって4つ目のバンドである。

「3つ目のバンドまでは、ギターボーカルをしていました。はじめてマイク一本になったので、最初は戸惑いましたね。振付や立ち居振る舞いなど、よりアクティブな表現を試行錯誤しました。パフォーマンスが板について、歌にも余裕がでてきたのは、一年ほど経ってからです。お客さんから『今日のライブはよかった』という声をもらえることが増えて、嬉しかったです」。

加入してからの日々を振り返り、wataruはしみじみとする。

「まさか今ここで、自分が、FeelAroundとして歌っているとは思いませんでした。色んな縁が繋がって、ここまでこられてよかったです。高校生のころ、カラオケで僕の歌を褒めてくれた親友は、今もFeelAroundの曲を聴いてくれているんですよ」。

人生を彩る音楽を届けたい

wataruはいつも、お客さんにライブへ来てもらった数十分間、支払ってもらった数千円に対して自分が与えられる価値を考えている。

「きっと誰もが『切ないときに聞いたら癒される曲』とか『頑張りたいときに聞きたい曲』を持っていますよね。ほんの数分間で感情が変わったり、強いメッセージを伝えたり、受け取ったりできるのが、歌の魅力だと思うんです。だから僕は歌うのが好きだし、その気持ちを軸に言葉やメロディを乗せて、『もっと上手く歌いたい』『もっと感動してもらいたい』と考えながらステージに立っています」。

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Toshiもまた、ファンへの思いを語る。

「ライブハウスに来てくれる子も、遠方の子も、心があったかい人たちばかりです。ファン同士のいざこざもなく、和気あいあいとしてくれていて嬉しいですね」。そうしたファンや、サポートしてくれる人々の期待を裏切りたくないという気持ちが、活動を継続する原動力になっている。

wataruは、過去の音楽仲間たちにも思いを馳せた。

「バンドを脱退したり、音楽を辞めちゃった仲間がたくさんいます。みんな、やりたい気持ちがなくなったわけじゃなくて、色んな事情で辞めざるをえなくなったんだろうけど。僕のなかにも、一緒に音楽をやっていた仲間に辞めるという決断をさせてしまったことへの悔しさがあります。そういうのも全部背負って、続けていきたいですね」。

彼らの夢は、武道館でライブをすることだ。

「大きい場所でライブをしたい、って昔から思っていて、ずっと一致している目標が武道館です。まだまだ先の話かもしれないけど、いつかそこに立てる日がくるように。夢を持って活動したほうが、絶対に楽しいですしね」とToshiは笑う。

数年内の目標として、ワンマンライブの開催を掲げる。

「今の体制になってから、一度もワンマンをできてないんです。200人くらいのキャパを目指して、少しずつファンを増やしたいです。コロナ禍もあるので、まだ、明確な時期は決められませんが」。

コロナ禍以前は、毎月のようにライブハウスへ出演していたFeelAround。20年はツイキャス配信の回数を増やし、ネットショップを開設するなどの試みを行った。情勢が落ち着いた暁には、またバンドとしてステージに上がれるよう、メンバーの募集を含めて準備を整えている最中だ。

「新しいMVを撮れたらいいな、とも思います」。

どんなバンドでありたいですか?と訊ねたところ、「誰かの青春の一曲に選ばれたいです」と、彼らは口を揃えた。

「『なんとなく歌詞が好きだな』『カッコいいメロディだな』『声が良いな』みたいな、断片的な好きでもいいんです。若いころに聞いていた曲って思い出に残りますよね。年を重ねてから『これってこういう意味だったんだ』とか、『昔、この曲好きだったな。今でも好きだな』と思ってもらえるようなバンドになりたいですね」。

wataruの言葉に、Toshiも頷く。

「ライブのMCでも言っていることですが、僕たちの音楽をきいてくれている人の人生を彩りたいんです。目の前にいる人はもちろん、ヘッドフォンの向こうにいる人も。みんなの生活や感情に寄り添って、それこそカメレオンのように色を変えながら、音楽を届けられたらいいな」。

かつて『色んなジャンルの音楽をやりたい』という思いをこめた『カメレオンバンド』というキャッチコピーは、バンドの歴史を重ねるとともに、新しい意味をもつようになったのだ。

七色に変化する彼らの音楽が、より多くの人の日常を、鮮やかに彩ることを願う。

text:momiji photo:Ikue Asaka

INFORMATION

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1stCD『Chocolate Puzzle Piece』(全6曲)1,000円
ラバーバンド(緑・ピンク) 各色500円。2色セット800円

ライブ会場およびWEB SHOPにて好評販売中!

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[総合受付]下北沢MOSAiC ※計12会場同時開催
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