【Meet Reapra】第2回 従来の交渉との違いとは!?建設的合意の学び合いのプラットフォーム(後編)
◎今回メインとなる読者:建設的合意というテーマに興味関心をお持ちの方・建設的合意チームと共同学習をしてみたい方
8月12日(木)に公開された前編に続き、建設的合意チームの活動内容をご紹介します!
前編では、「建設的合意」という造語に込められた思いや、チームの設立背景、これからチームとして実現していきたいことについて語られています。
後編では建設的合意チームとの協業に関心を持ってくださった方のために、チームの活動内容をより具体的に、深ぼって、お届けしていきます!
・建設的合意チームの具体的な活動内容は?
・研究実践から見えてきたもの:建設的対話を行うには何を意識すればいいの?
・どのような人と共同学習していきたい?
この記事をきっかけにReapraの建設的合意チームに興味を持っていただき、何らかの形でチームと関わってみたいと思ってくださる方がいらっしゃれば嬉しいです!
今回の記事は前編の続きになります。前編をまだお読みでない方はこちらから!
日々の活動
インタビュアー:
前回のインタビューでは、「建設的合意」という言葉の定義や、建設的合意チームがどのようなゴールに向かって走り続けられているのかについてお話しいただきました。建設的合意とは、「互いの意思決定メカニズムや心象風景を理解し、成したいこと・なりたい姿に近づくことを目指して、コミュニケーションを通じてWin-Win状態を紡ぎだし続ける活動である」とご説明いただきました。
ここからもう少し、日々の活動内容についてお伺いできればと思います。これまで建設的合意チームとして行なってきた活動について具体的に教えてください。
山田:
建設的合意の中で重要な要素だと思っているのが、「建設的対話」と呼んでいるものです。建設的な対話があってこそ、建設的な合意に到ることができると考えています。なので今は、「建設的対話」というものがどういったものなのかというのを、実践を通じて概念化しようとしています。
日々の活動のあらゆるところで、建設的対話を実践しています。例えば、学習伴走者としての起業家との対話、投資先とのセールスディスカッション、Reapra社内での部下との対話など、すべてが私にとって、建設的な対話を行うための実践の場になっていると認識しています。
1, 2年前から「自分の意見を強く主張するがゆえに人と対立を起こしてしまう」のが私個人の課題でした。その中で、建設的な対話を行うには何が必要なのだろうかと考え続けてきました。異なる環境で経験や自我を培った人間同士の対話なので、互いの意見が異なることは当然ですし、その意見同志のぶつかり自体は決して悪いことではないと思います。建設的な対話ができれば、そのエネルギーを活用できるものだと思っています。
でも、うまくいくことばかりではないので、そこでの失敗経験を建設的合意チームのインターンメンバーと、「うまくいかなかった要因は何なのか?」「改善するにはどのようなことをしたらいいのか?」と議論して、そこで出てきた施策を試しています。
加えて、より客観的な視点も入れて施策を練り出していくために、世の中で既に出回っているU理論※1、ネゴシエーション3.0※2、エニアグラム※3などの概念も活用しています。対話、人間心理、コミュニケーション、コーチングなどいうキーワードを中心に何か活用できる材料がないかというのを日々探索しています。
※1U理論:経営学に哲学や心理学、認知科学、東洋思想まで幅広い知見を織り込んだ、「未来から」学び手法を体系化した理論(参考図書)
※2ネゴシエーション3.0:ハーバード国際交渉プログラムの創設者でディレクターが、師匠に当たる故ロジャー・フィッシャー教授が確立したハーバード交渉学をさらに発展させた概念(参考図書)
※3エニアグラム:9つのタイプ別に個人の性格を診断するシステム(参考資料)
概念化の具体例
インタビュアー:
実践を通した概念化をされているということですが、実際に過去に起こった事例について詳しくお話いただけますか?
山田:
私とA社のCEOとの対話において起こった事例をご紹介します。その時は、相手が対話したい内容と、私が伝えたい内容にズレが生じたことで、相手にフラストレーションが溜まってしまい、対話の場としてはあまり建設的なものにならずに終わってしまいました。
過去の自分であれば、自分のスタイルを貫き通したり、相手の見えているスコープが狭いと批判的になってしまったり、憤って終わってしまったりしていたように思います。ですが、この時は、自分の対話の仕方にも、より良く進められる方法があったのではないかと内省しました。落ち着きを取り戻してから建設的合意チームのメンバーに、今回起きている事象を共有し、施策をチームメンバーと一緒に考え、次回の対話に臨みました。
今回の事例は、対話の内容がセールスでした。私はセールスの経験があり、相手よりも自分が見えているスコープがある程度広いと思っているがゆえに、相手の粗が気になってツッコミを入れたくなるという構造があると気付きました。相手が望んでいる話題よりも、他のところに原因を見出してしまって、無意識に、対話のテーマをずらしてしまっていたのです。
私のこの動き自体が、対話に対する相手のモチベーションを削いでしまっていたことに気づきました。相手に寄り添って、相手が受け取れる範囲で対話していくという方針を建設的合意チームの話し合いの中で見出ました。そして次の対話の場では、前回自分の中で起こっていたことも正直に伝えながら、相手の進めたいテーマで対話をしていくという方向に切り替えました。
建設的対話を実践するためのアドバイス
インタビュアー:
これまでの実践と研究を通して見えてきた、建設的対話におけるティップスをいくつかシェアしていただけないでしょうか?
山田:
今共有できるティップスは、3つあります。
1つ目が、相手の立場に立つということです。話してる時はどうしても自分の視点に偏ってしまいがちですが、相手の意見の背景や、相手の感情を相手に寄り添って感じ取ることが重要だと思います。私もうまくできているわけではないですが、相手に「憑依」するというのが、建設的合意においては重要になってきます。相手を自分自身に、もしくは自分の大切な人に置き換えてみて、相手の心象風景を味わってみるのです。
2つ目は、大事にしているマインドセットとして「共感と共存」があります。先ほどの読み取った心象風景に対して「そういう気持ちにもなるよね」と共感をします。ただ、共感して相手の意見にすべて合わせるのではなくて、自分の意見も押し殺すことなく両者を共存させることが重要です。相手の意見を尊重しながら自分の意見も尊重する。どちらが良いか悪いかという判断をいれず、それぞれが存在しているものとして、共存させるというようなスタイルです。
3つ目は、「建設的中断」です。対話がどうしてもうまくいかない時もあります。いくら片方が建設的なスタイルで臨もうとしていても、相手が破壊的なコミュニケーションを取ってくる場合は対話がうまくいかないこともあります。他の場で起こったトラブルに対して苛立っているがゆえに、対話の場に対して建設的に臨めないというケースもありますよね。そういう時は、そのコンディションのまま無理に話を押し進めるということをしないというのも建設的なオプションの1つです。勇気を出して1度その場を中断し、時間を置いてみるということも、対話をうまく進める方法として活用できるのではないでしょうか。
ゴールからの現在地「始まったばかりである」
インタビュアー:
現在、実践と研究を通じて、共有いただいたように概念化を進められていると思うのですが、改めて、「プラットフォームを作る」というミッション・ビジョンに立ち返った時に、現在の進捗状況を共有いただけますか?
山田:
プラットフォームを作るという目標で行くと、まだ道半ばかなと思っていて。現在は、建設的合意とは何か?というのをダイナミックドラフト※4にまとめながら、概念化を行なっている段階です。今年はまだ残り半分あるので、概念化を行いながら、プラットフォームの礎を作っていきたいなと思っています。
今は私とインターン4名で学習しているのですが、まだ学び合いの場というより、私が1人で主体的に進めているものをサポートしてくれるような形になっています。
今回のこの記事がきっかけで、この概念を面白いと思ってくれたり、自分も実践を通じて学びたいなと思ってくれたりする人がいたら、一緒に共同学習していきたいです。
※4ダイナミックドラフト:Dynamic (動的に)= 構成や内容が時間とともに変化していくこと、Draft(下書き)= 将来的に加筆・修正される余地はあるという前提で執筆したもの。直訳すると「動的な下書き」
親和性の高い人
インタビュアー:
動機のある方と是非共同学習できたらということだと思うのですが、実際に建設的合意チームと親和性の高そうな方というのはどのような方だとイメージされていますか?
山田:
建設的合意というテーマだけでもとても広い概念だと思うので、今はセールスにおける建設的合意というところに絞って学習しています。それで言うと、セールスという場において、お客さんとwinwinになるようなゴールを紡ぎ出すというプロセスを、実践を通じて学んでいきたいと望んでいる人や、既存のセールスのあり方に対して疑問を持ってるような人は相性が良いと思います。それ以外にも、対話・ダイアログ・コミュニケーション・コーチング・コミュニティ作りといったキーワードに、興味関心がある方であれば、何かしら一緒に取り組みができるのではないかと思います。
どのような人とも、先生と生徒のような教える側・教えられる側という関係性ではなくて、フラットに横の繋がりで、テーマに対してみんなが同じように実践して学びあえるような関係性をイメージしています。全員が先生でもあり生徒でもある。つまりは、先生のようなパワーのある存在からしか学べないというスタイルではなく、いかなる者からも学べるという状態に興味がある方は、親和性が高いと思います。
メッセージ
インタビュアー:
最後に、建設的合意チームに興味を持ってくださった読者の方に一言お願いします。
山田:
建設的合意というもの自体が、これから作っていきたい新しい対話のあり方だと思っています。まだ自分たちも不慣れな中で、学習している途上にいます。多種多様な人から学びを得たいので、少しでも興味を持っていただけた方々と一緒に学習していけたら嬉しいです!
インタビュアー:
建設的合意チームの山田さん、本日はありがとうございました。
連絡窓口
この記事をきっかけに建設的合意チームに興味を持ってくださった方はぜひこちらのinfo.ventures@reapra.sgにご連絡ください。
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