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フィードバックとは

自分の今年度の目標として、「フィードバックの量を増やす」ことを意識し、実践してきた。今までに比べれば確かにフィードバックの量は増えたのだが、少しひっかかっている部分もあった。

・自主学習で漢字のやり方について、「丁寧に取り組んでいるね」とコメントを書く。
・算数の授業で、数学的な見方・考え方を働かせている部分に花丸を書く。そして、一言、「すばらしい!」「その調子」と書く。

果たして、これが自分が意識したかったことだったのだろうか。

子どもの様子を見ていると、一人の子どもが返されたノートを見て、「先生、今日はコメントないんですか?」と伝えてくれることもあった。言葉にしなくとも、ノートを返されるとすかさずノートを開いてどのようなコメントがあったか確認する子どももいた。

こういった子どものためになる言葉を届けられているだろうか。

そんな意識からフィードバックについて学びたいと考えていたところ、次の書籍について知った。

「これは、ドンピシャ!でも、高い。。。」

少しの迷いはあったが、自分の意識にここまでつながっている本は他にないと思い、購入をした。結果としてだが、自分の違和感の正体にも気づくことができた。

今回は、少しモヤモヤが晴れたフィードバックについて整理していきたい。

フィードバックとは

フィードバックは、課題に関する現状の理解と目標とされる理解の程度との間の隔たり(ギャップ)を埋め合わせるために提供する情報である。

ハッティ,クラーク(2023),p.4

例えば「分数÷分数」の算数の学習に置き換えてみれば、
フィードバックは、課題(分数÷分数の計算はどのようにすれば良いか)に関する現状の理解(何を子どもが知っているか、どのような見方・考え方をしているか。)と目標とされる理解(分数のわり算は、わる数を逆数にしてかける)の程度との間の隔たりを埋め合わせるために提供する情報である。

これは、何となくイメージがつく。

では、自主学習においてはどうだろうか。
課題とは?現状の理解とは?目標とさせる理解とは?
なかなか言葉にできない部分が大きい。

また、効果的なフィードバックを行うために、3つの要素で生徒の学習状況を確認することについて述べられている。

この3つの要素は、a)どこに向かっているのか、b)どのように向かっているのか、そしてc)次にどこに向かえばよいのか、どのようにすれば改善できるのか、である。

ハッティ,クラーク(2023),p.119

この部分についても、算数の学習で考えればしっくり来る部分も大きいが、自主学習や普段の日常生活になると言葉にできない部分が大きい。この感覚的な部分こそ、冒頭で感じていた自分の違和感につながってくる。

違和感の正体

「自分自身は、フィードバックの量を増やしたと思っているが、それは何につながっているのだろう。」
「このフィードバックで良いのだろうか。」

そのような違和感を6月下旬あたりから感じていた。

フィードバックが与えられても耳に入らなければほとんど役に立たないため、提供されたフィードバックを受け取り、解釈し、利用するように生徒に教えることは、教師から提供されるフィードバックの量に焦点を当てるよりもおそらくはるかに重要なことである。

ハッティ,クラーク(2023)p.7

「子ども自身が、私からのフィードバックを受け取り、解釈し、利用する良さを感じていただろうか。」

ここに自信をもってYESとは言えない。

フィードバックは、課題に関する現状の理解と目標とされる理解の程度との間の隔たり(ギャップ)を埋め合わせるために提供する情報である。

ハッティ,クラーク(2023),p.4

なぜなら、フィードバックの定義に立ち戻れば、子どもにとっての目標を捉えられていない場面が多かった。つまり、子どもが目標としているものに対する理解が不十分であったからこそ、現状とのギャップの捉えも甘くなっていたことが考えられる。そのため、独りよがりのフィードバックになっていないかという違和感があったのだと思う。

子ども自身が、その子にとっての目標を達成できるようにするためには、やはり次の要素で子どもを捉えることが重要だと考える。

a)どこに向かっているのか、b)どのように向かっているのか、そしてc)次にどこに向かえばよいのか、どのようにすれば改善できるのか、である。

ハッティ,クラーク(2023),p.119

見取りとフィードバック

効果的なフィードバックをするために、見取りは欠かせないと考える。

若松(2022)は、学習成果物を見取る際のポイントとして次のことを挙げている。

・何に注目しているのか。
・何を考えようとしているのか。
・自分の考えていることをどのように表現しているのか。
・何がまだよくわかっていないのか。
・次にどこに向かおうとしているのか。

若松(2022),p.160

振り返りを見取るポイントは、
・何を書いているか。
・今どんなことを考えているか。
・何ができていて、まだ何が理解できていないか。
・次に何を学ぼうとしているか。
・どんなことが気になっているか。

若松(2022),p.172

先ほどの効果的なフィードバックを行うための3つの要素とも重なる部分が多い。また、若松(2023)の中で、学習している様子を見取る際に、

すごくシンプルに書きましたが、「現在地を捉えて、願いを探る」という2つの視点はどの教科でも同じです。

若松(2023),p.45

と書かれている。もちろん、見取る視点をたくさんもつことでその子に必要なことは何かを考えることができることを述べられている。ただ、私の中で、この「現在地を捉えて、願いを探る」という表現が、フィードバックの定義の「課題に関する現状の理解と目標とされる理解の程度」というところと重なると思った。現在地を捉えること、願いを探ることが曖昧のままでは、その間にある隔たりが不明瞭になってしまい、適切なフィードバックを行うことができにくくなる。

私が足りなかったのは、まさに「願いを探る」の部分ではないか。

自主学習を通して、子どもはどうなりたいと考えているのか。
普段の生活をする上で、「こうなったらいい」「こうなりたい」という願いは何か。

この部分が抜け落ちてしまっているからこそ、現在地と目標としている場所への隔たりがわからなかった。

今後、取り組んでいきたいこと

まず、私自身が「自主学習を通してどんな姿になってほしいか。」「普段の生活の中でどういう姿を大事にしてほしいか。」という目標を言語化することから始める。

きっと子どもと重なる部分もあれば、重ならない部分もある。様々な考えを聞きつつ、私個人の想いを伝えていきたい。

また、見取りもまだまだである。引用・参考文献に載せた著書をもとに、1つずつ実践していきたい。

そして、子どもの思いや願いを聞きながら、子供にとっての理想と現在地をつなぐためにフィードバックにつなげていく。

【引用・参考文献】

ジョン・ハッティ,シャリー・クラーク著,原田信之監訳(2023)『教育の効果:フィードバック編』株式会社法律文化社

若松俊介(2022)『教師のための「支え方」の技術』明治図書

若松俊介,宗實直樹(2023)『子どもの見方が変わる!「見取り」の技術』学陽書房

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