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地獄の果て

この世が地獄だと思えてしまう。
そんな自分が嫌い。

僕は家族にも友人にも恵まれている。
人に恵まれている。
別れてからというものの、ひたすら友人と時間を共にした。似たようなメンバーばかりだが。
おかげですごい楽しい思い出が沢山増えた。ただそれでも、心がどこか晴れない。きっと付き合っていた頃の自分を忘れられないんだ、自分を受け入れてくれる他者がいた自分を、身体が、脳みそが。

最近、虐殺器官というSF小説の一節をよく思い出す。

「地獄はここにあります。
 頭のなか、脳みそのなかに。
 大脳皮質の襞のパターンに。」

小説上では、戦いが終わったとしても、頭の中に戦いの、殺し合いの光景が残り続けているという文脈に出てきていた(と思う)。
本来の文脈とは違うが、今の自分頭の中にも地獄がある。
別れてからというものの、友人と色々なとこに出かけ、美しい景色を見て楽しい経験し、美味しいものをたくさん食べた。どれもいい思い出だ。
ただどの瞬間でも元恋人のことを思い出してしまいとても辛くなってしまい、心の底から楽しめなくなっている。自分には何も持ちえておらず、ただ無力で出不精な、価値のない存在に思えてしまう。
目の前には確実に幸せがある。なのに頭の中では地獄が渦巻いている。

せっかくこんな自分を過ごしてくれている友人にすごく申し訳ない。そして元恋人との思い出すら地獄と思えてしまう自分が嫌だ。本当に嫌だ。これだと当時の未熟な自分のままではないか。いつになったら成熟するのだろうか。いつになったら俺は心の底から、目の前の友人と感情を素直に共有できるのだろうか。
地獄が頭から消え、目の前の美しい景色と脳みそが調和する。

そんな果てが、どうかありますように。



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