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短編小説⑤ そして、はるかも毒親になった(後編)

「転写の絶対法則」

はるかは、キッチンのテーブルに座っていた。目の前にはカップから湯気が立ち昇るコーヒーが置かれているが、その香りさえも気づかないほど、彼女の心は別の場所にあった。娘たちの言葉が、心の中でぐるぐると反響している。

「お母さんってさ、毒親だよね。」

まーちゃんのその一言が、はるかの心に深く突き刺さった。それは何気ない言葉だったのかもしれないが、はるかにとっては衝撃だった。毒親──そう呼ばれる存在に、自分がなっていたとは。

彼女は思い返してみた。娘たちに対して、何度も口を出してきた。「こうしなさい」「ああしたほうがいいわよ」と、アドバイスを装っていたが、それはただの押し付けだったのではないか。のんちゃんと取っ組み合いのケンカをした時期もあった。反抗的な娘に苛立ち、どうしても自分の意見を通そうとするその姿は、まるで自分が母親にされたことをそのままなぞっているかのようだった。

「いつの間に、私は自分の母親と同じことを…?」

ふと、はるかは思い出した。「転写の絶対法則」。心理学で知ったこの言葉が、今の自分に重くのしかかる。人は自分が経験したことを無意識に他者に投影し、それを繰り返す傾向がある。この法則は絶対的だとされ、特に親子関係では顕著だという。子ども時代に感じた喜びも、苦しみも、大人になったときに他者に転写される。自分の両親から受けた厳しい愛情を、無意識のうちに娘たちに押し付けていたことに気づいた。

はるかは自身の母親との関係を思い出す。厳しかった母、いつも完璧を求められ、失敗を許されなかった。はるか自身も、母の期待に応えようと必死で生きてきた。その影響は、長い年月を経てもまだ消えていない。そして、自分が同じことを娘たちにしていたことに気づいた瞬間、はるかは愕然とした。

「私は、のんちゃんにも、まーちゃんにも、自分の価値観を押し付けていた…」

のんちゃんは社交的で繊細だ。夢中になると周りが見えなくなってしまうが、その情熱を失いたくないからこそ、家事や生活のスキルを軽視している部分もある。高校時代の激しい思春期を越え、ようやく大人になったのんちゃんに、はるかはもっと自由を与えるべきだったのかもしれない。

一方、まーちゃんは冷静で大人しい。感情を表に出さないが、それは母親に対してだけだ。堅実で正義感が強いまーちゃんは、母親に対して距離を置いているように見える。しかし、これもまた、はるかが無意識に与えてきた影響ではないだろうか。

「どうすれば、私の娘たちは私のような苦しみを繰り返さずに済むのだろう?」

はるかは深くため息をついた。これ以上、娘たちに同じ苦しみを与えたくない。転写の絶対法則は無意識に働くものだが、気づいた今、変わることはできるはずだ。まずは、自分自身の心の中を整理し、過去と向き合うことから始めなければならない。

「お母さん、これからは、あなたたちの自由を尊重するわ。」

はるかは娘たちと過ごす日々を、もう一度新しい視点で捉え直すことを決めた。そして、少しずつでも、自分の言動を見つめ直し、娘たちに本当の意味での愛情を伝えていくことを誓った。過去は変えられないが、未来はこれから作っていける。

コーヒーのカップから湯気はもう消えていたが、はるかの心には新たな希望が灯っていた。

以上は、原作:はるか 脚色・イラスト:ChatGPTで作成しました。


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