見出し画像

アラフォー独女が人生見つめ直す話〜4話

ーー『好きなことを、好きな時に、好きな場所で、好きなだけ』ーー

私の母はちょっと変わった家系だと思う。
何が変わってるかっていうと、まず祖父(母の父親)が家業を継ぐのが嫌で家出して勘当されたってところ。
どうやら函館で家具屋さんを営んでいたらしい。
家出をして祖母と結婚し、戦時中は樺太に居たそうだ。
そこで長男が生まれている。
敗戦の折に北海道へ帰還する前後あたりで次男が生まれ、札幌に腰を据えた後に母と妹が生まれた。

母に祖父の思い出を尋ねると「子供の頃によく空の酒瓶もって市場に買いに行かされたわ。本当に昼間から飲んでた気がするわ。」という感じ。
昔は一升瓶を持って行ったら、そこにお酒を入れてくれたらしい。
まだ小さかった妹を連れて、よく市場までおつかいに行ってたんだって。

そんな祖父は60代で胃がんで亡くなっている。
母が結婚する前だったので、私の父も会ったことは無いし写真も殆ど残ってないので想像するしかない感じ。
そして2人の兄(私にとっては叔父)はどちらも社会人になって北海道を出ているが、こちらもまた大変な人生を歩んで終わっている。

上の伯父(長男)は結婚して家庭も持って娘さんが2人居たが、仕事中にトラック運転で事故を起こして退職。怪我の後遺症も残りつつ、多分金銭的な何かもあったのだろう。家庭崩壊してしまい晩年離婚。どうにも働けなくなり独りで札幌に戻ってきてからは、生活保護を受けて細々と暮らしていた。母と叔母(妹)が世話をしつつ見守っていたが、結局は朝から飲んだくれてアル中状態。食道がんで60代で亡くなった。伯父の葬儀には離婚した家族達は来なかった。

下の伯父(次男)は更に破天荒だと思う。なにせ「行方不明者」だったんだから(笑)。
私が小学生の低学年くらいに、一度私たちの家に現れた。
「さっちゃん!生きてたの!どこいってたのー!今何、どうしたの??」
母の驚きは今でも忘れられない。(母は上の兄をこうちゃん、下の兄をさっちゃんと呼んでいた)。
私はその時初めて、この伯父に出会ったんだから。
さらに衝撃は続く。
「帰る金が無いから貸してくれ」

後にこの時の話を聞いてみると、どうやら車と荷物をまとめて運ぶ仕事(日雇い?)で先方に車ごと納品。で、お金がなくて帰る足がないということだったらしい。
結局、返さなくても良いからと1万円ほどあげたそうだ。
ちゃんと生存確認で連絡してよねって言って。
そんな「さっちゃん」と次に会うのは、上の伯父「こうちゃん」が亡くなった時なんだけど。

相変わらずフラフラと何処で何してるのかよく分からないさっちゃん伯父ではあったが、ちゃんと連絡は取れるような状態だったみたい。
こうちゃん伯父が亡くなって、葬儀で久しぶりに再会したら「大きくなったなー、綺麗になったなぁ」って言われた。そらそうだ。
その後さっちゃん伯父は札幌に移り住んでのんびり暮らしていた。
祖父と祖母、こうちゃん伯父、3人分まとめて1つの納骨堂に入れていたので、盆や法事の度に私たち一家と叔母一家、さっちゃん伯父はゆるっと集まってご飯食べて近況報告するような感じになっていた。
そんな穏やかな日々も数年で、今度はさっちゃん伯父が大腸がんで亡くなった。またしても60代。
全然気付かなかったらしい。
たまたま検診で発見されたらもうステージ4で手術不可能なレベルまでいっていた。だからあっという間だった。


ーーまるで生活するように旅をして、旅をしながら仕事もして収入もあって、そんな生き方も最高じゃない?ーー

納骨堂は4人分になった。
とうとう2人だけになっちゃったねと、母と叔母が話しているのを聞くと、私もちょっと寂しくなってしまった。
ちなみに祖母は私が1〜2歳くらいで亡くなった。確か70代。
スピリチュアルな話で、先祖との縁が切れた血は続かないっていうのがあるけど、まさにそうだなって思う。
祖父と伯父2人、みんな早くに亡くなって伯父2人には息子もいないから。
私も一人っ子だし、叔母には一人息子がいるけれど、こちらもアラフィフ独身男性だったりする(笑)
因縁、因果、色々な見方があるかもしれないけれど、私はこの状況を悪いことだとは思ってない。
ただ、私自身がこの破天荒で行方不明になっちゃう人たちの血をしっかり継いでるなって自覚があるだけ。
「どこか遠くへ行きたい」「消えてしまいたい」「ここじゃないどこか」そんな思いは、ともすればさっちゃん伯父のように行方不明になる要素満載だったりする。
私は自分の中の「放浪癖ちゃん」が暴走してしまうのを恐れているのかもしれない。


ーーもしかしたら、消えないように、地に足をつけていられるように、私は無意識に自分自身に借金や苦労を与えて逃げられないようにしているのかもしれないーー

そんな風に思ったのは、母が亡くなって遺品整理をしながら自分自身も断捨離を続けていた時だった。

だったら。

ーー何もかも全部綺麗さっぱりローンとかが無くなったら、私はどう感じてどう生きるんだろう?ーー

そして私は今ここにいる。

ーー続くーー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?