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「4TEEN」―4人。14歳。青春グラフィティ―

今回読んだ本

石田衣良(2003) 4TEEN

 人生で楽しかった時っていったいいつなんだろうか。14歳のころを思い返すと、早く大人になりたくてそれでいて子供のままでもいたいそんなことを二律背反的に持っていたことを思いだす。

 14歳。中学二年生。すっかり死語に近づきつつある「中二病」どんぴしゃな年齢である。小学生よりも行動範囲が広く、高校生より大人びていない中学二年生というのは、自分の人生が拡張されて何だか世界のことを知った気になれるものなんだと思う。

 本書は、4人の14歳、中学二年生の爽やかで甘酸っぱい、そしてちょっぴりエッチなストーリーが紡がれた連作短編集である。
 著者は、池袋ウエストゲートパークでお馴染みの石田衣良。著者のすらすらと読みやすい軽やかな文体は、本書ではより瑞々しさをもつものになっている。
 所々、漢字ではなくひらがなを多用しているところは、読みやすさだけではなく、語り手のテツロ―(14歳)の視点に読者をなじませるテクニックのひとつであると考えられる。

 本書でスポットライトを当てられる4人は、語り手のテツロ―、太っていて家庭環境に問題のあるダイ、ウェルナー症候群という早老症を患う金持ちの息子ナオト、切れ者で策士なジュン。
 舞台は、東京はもんじゃ焼きが有名な月島。かつて石田衣良自身が住んでいた町でもある。
 開発にともない、金持ちから貧乏家庭までもんじゃ焼きのようなグラデーションを持つ月島を舞台に、4人の友情、淡くて爽やかな青春の短編たちが、読者の心をぽっと火が灯るようにあたたかくさせてくれる。そんな一冊になっていると感じた。

最後に

 中学を卒業して早うん十年。大人になった自分が、はるか年下の4人にここまで感動させられるとは、正直思っていなかった。SF、ホラー、ミステリー、アクションものなどジェットコースター的展開、衝撃というのも悪くないが、マックシェイクのような軽やかに飲み込めてそれでいて濃厚な余韻を持たせてくれる本書に出会えて良かったなと感じる。

 実際にそこにある・いると思わせる文章は、良き小説の要素の一つであると考えている。月島に行けば、生き生きとした4人がマウンテンバイクに跨って走っているのを見かけられるのではと感じさせられた一作であった。

 

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