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「料理の四面体」(玉村豊男 著)

料理エッセイスト、玉村氏の手によって今から20年程前に書かれた本。確か父の書棚でも大分前に見かけたような記憶もあるのだが、何かの書評で紹介されているのを読んで、改めて読んでみた。

これが面白かった。各国の様々な料理、調理法を俯瞰してみながら、最終的に料理は四要素によって構成されており、四面体の各頂点にその要素を配置することによって、その四面体上のいずれかに位置づけられるかによって、全ての料理が整理されてしまうという内容だ。

料理の四要素とは、「火」、「空気」、「水」、「油」のこと。

四面体上の頂点に「火」を置くと

「火」と「油」の組み合わせでは「揚げ物」
「火」と「水」の組み合わせでは「煮物」
「火」と「空気」の組み合わせでは「焼き物」

といったように、調理法が四面体に沿って3類型に整理される。

例えば豆腐を例にとって、「揚げ物」の線に沿わせていくと、油に近いところでは「揚げ豆腐」ということになる。

極めて明快なこの方程式。目から鱗だった。

これ以外にも、ソースづくりの方程式、酢料理の法則、卵料理のコツなどなど、それぞれに分析がされていて、料理本としては勿論面白かったのだけれど、その視点の取り方、切り方からもいろいろな気づきを与えてくれる本だった。

フランス料理等で使われるソースの作り方は、実はアフリカの民族料理で使われているものと原理的には変わらないなど、人類が生活の中で生み出してきた知恵は、ある意味で地域は違えど普遍的なところもあるのかもしれない。

原理さえ頭に入れてしまえば、ちょっとした工夫でレパートリーを増やしていくことは可能であろうという筆者の言葉に励まされ、普段何気なく作っている料理が、この本を読んでより一層楽しく感じられるような気がした。

正月太りをますます加速させてくれそうな一冊だ。



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