ジムに通うと本当に暮らしは変わるのか問題

2023/06/04 日曜日

 このところ体の疲れがひどく、休日は一日中眠いし平日も帰るとすぐに寝て一切勉強もせず、このままでは自分の人生計画がめちゃくちゃになるという悪い予感がしたので、その靄を振り払ってエナジーみなぎる素晴らしく明るい毎日を歩もうという意思で、ジムに行くことにした。

 なぜジムなのか。それは人に己の体力の低下をぼやくと必ず「ジムに行け」の五文字が返ってくるからだ。そんなに効くのか、鬱々した気分が晴れるのは本当か。筋肉は本当に全てを解決するのか。

 人生初めてのジム。自重トレーニングと軽いダンベルを持つトレーニングぐらいしかしたことがない。一番近いジムに行って、体験パーソナルコースを受けた。パーソナルってのはマンツーマンの指導のこと。なぜただ通うだけのコースじゃなくてトレーナーのいるコースとしたのか、その理由は単純で自分は体を使うのがひどく苦手だからだ。昔から筋肉自体は普通程度にはつくし、マラソンもぼちぼち普通の順位で済むが、それ以外の球技やら跳躍やら柔道やらはからきしできない。本気でやってるのに動きがコミカルやなと友達から言われたのはいまだに覚えてる。だから多分トレーニングもプロに教えてもらいながらじゃないと上手にできないんだろうなと感じて、トレーナーをつけることにしたのだった。

 受付を済ませると背の高い頭の小さなお兄さんが出てきた。トレーナーのようだ。もちろん体格も良い。目の周りに日焼け跡があるのは、屋外でサングラスをするからか、水泳でもしているのだろうか。爽やか男子ってこれかあと妙に納得した。並んでガラスに彼と己の姿が映るとその人生の違いさえ感じてしまった。多分彼は小さい頃から運動が好きで、中学高校も休まずに野球部に通い続けて、大学でもサークルや部活で趣味のスポーツを続けていて、あまり人生にクヨクヨすることはなく……もうやめよう。

 まず体の状態をなんか体重計みたいなやつに乗って計った。それから得たデータをもとに30分くらい面談があった(ながい)。
 僕の体はBMIは標準で、脂肪が少なくて代謝が高いらしい。筋肉量は人並みで、足の筋肉が少しだけ多いくらい。そんなところだった。トレーナーからの話を聞きながら、これで運動神経があったらなあともう今更考えても仕方のない人生に考えを巡らせていた。

 カウンセリングの中で自分がジムに通うことでどうなりたいかという話をされた。僕は答えた。眠りにくい体、疲れにくい体がほしい。姿勢をよくしたい。腹が出てる気がするので絞りたい。がたいが少しよく慣れば嬉しいがムキムキになりたいわけではない。これは口に出してはないが、鬱っぽいのも無くなってほしい。もはや腹とがたい以外のことは筋トレや運動でどうこうなるものなのか疑問である。でもこういう切ない願いを、筋トレしたら叶えられるよ!といったささやかな希望がないとトレーニングなんてする気になれないのだ。

 面談は気だるいスピードで間伸びし、はよ体動かさせてくれやと思っていた。やっとこさでは実際にやってみましょうかのフェーズに入った。

 足きたえるやつ、背中と腕きたえるやつ、肩と胸筋きたえるやつの3点セットを合わせて30分程度して終わった。早い。

 その後は事務手続きと施設案内だった。それが45分くらいあった。長い。

 斯くして、いちかわのジム生活が始まった。いつまで続くのか。ささやかな願いたちは叶えられるのか。体力がついて勉強に充てる時間は増えるのか。第二話へ続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?