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「ガチャゲー」とはなにか? ~後編~

という前回記事の続き。まとめると

■FtoPは時間で資産を積み上げていくゲーム
■ガチャゲー=当時の日本産ゲームでよくある資産形成モデル(山田的に)

という内容だった。

今回は後編として、「ガチャゲー的形成モデル」と「D2で目指した資産形成モデル」の違いを記したいと思う。

ちなみに、前回記事に対しては結構Twitterで反応があった。

これは本当にその通りで、「目指したのだがそうならなかった」という形になっている。それによってみんなに迷惑をかけてしまったわけなのだが、「なぜ、そうならなかったのか」はD2の記事で書いていくとして強調しておきたいのはこういうことだ。

「ガチャゲー」であるかどうかは「面白いか面白くないか」とか、「いいとか悪い」とかいう問題ではないのだ。あくまで、どのような運営をするかというモデルに過ぎない、というところは抑えておいていただきたい。

「ガチャゲー」の資産形成モデル

このタイプが当時の日本産ゲームに多かった理由は、日本のFtoPゲームがいわゆる「ソシャゲ」で大きく拡大したからではないかと思っている。今はだいぶ変化してきているのだが、少なくとも当時はこのタイプが圧倒的だった。

これらの資産形成モデルは、一言でいうと

「資産を切り替えさせることを前提にしたモデル」

と言える。

攻略目標がどんどん切り替わっていったり、あるいは「イベント」によって定期的に提供されていく。ユーザーはその都度新しい資産を手に入れる必要がある。この資産がどんどんガチャで追加される、というものだ。

「特効イベント」という存在があるゲームはこのタイプの典型的なものだ。イベントに対して特別な倍率効果があるものがイベントガチャとして提供されていく。イベント報酬を得るためにはそのキャラが必須になっている。

そもそもそのキャラが引けなくてはゲームに参加できない形になるので、おのずと特効対象キャラクターはガチャで出やすく設計されたり、配布されたりする。こういうサイクルを高頻度で繰り返していく。

もう一つ「育成深度が浅い」のも特徴の一つだ。「キャラゲット」→「育成」→「コンテンツで活躍」というサイクルを短期間でさせなければいけないので、あまり深い育成をさせるのは好ましくない。

なのでこのタイプのゲームは

・インフレが加速しやすい
・得た過去の資産が無駄になりやすい
・攻略コンテンツをどんどん追加しないと飽きる
・ガチャをメチャクチャ引かせるので、被る前提の設計が必要

というようなことに対応しないとなりゆかない。各社工夫をしてそこを乗り越えていっているわけだ。ただし、いいところもあって

・資産切り替え前提なので初心者でも入りやすい

ということがある。「今がリセマラ時!」と言ってゲームを始めてもOKなケースが多く、追いつきやすいのだ。

D2で目指した資産構成モデル

大して、D2で目指したモデルは違うものになっている。この違うタイプのモデルは中韓のゲームに多い。参考にした「サマナーズウォー」は韓国製のものだ。

なぜ中韓国のゲームで多いのか、というとこれは元々のベースがFtoPのMO/MMOPRGからきているからではないかと思っている。その国で流行っていたPCやブラウザゲームで行われていた仕組みをスマホに持ってきたから、というのが個人的な見解だ。

これらの資産形成モデルを言語化するならば

「資産を複数パターン所持させ、複数のコンテンツの攻略にあてるモデル」

ということになる。

D2は、リリース当初から複数のクエストやコンテンツが内包されるゲームだった。たぶん、当時ここまでリリース時にコンテンツを内包しているゲームはあまりなかったと思う。

なぜそうしたかというと、「資産を複数構成することを要求したかったから」だ。こんな感じである。

・対レベリング周回
・対アウラゲート周回
・対烙印周回×2
・対じごくパーク
・対デュエル(攻撃、守備)

これらに対して、違う悪魔の編成を要求する、というのが当初の狙いだ。簡単に完成してしまうようだとコンテンツと悪魔の追加をどんどんしなければならないので、育成深度は深く作る形となる。

なので、イベントに関してはどちらかというと「育成を捗らせる」タイプのものが中心になる。通常で他にやること(育成や周回)があるのだから、攻略タイプのイベントを作る意味があまりない、というか、費用対効果が悪い。それだったら新しいコンテンツを作ったほうがいいのだ。

D2リリース直後には「なんでイベントがないんだこのゲームは!!」というご意見も結構いただいたのだが、こういうモデルだったのでそもそも想定していなから、ということになる。

このタイプの特徴としては

・エンドコンテンツ含む、複数のコンテンツが必要
・複数コンテンツに対して、それに応じた資産が必要な作り
・プレイ時間と強さの関係性がすごく強い(=時短なので課金も同様)
・資産の入れ替えと蓄積、その両方が重要

となる。前者のモデルとは違い、初心者が追いつくのは至難の業だ。半年もすると、「今からリセマラしてやり直そう」というユーザーなど存在しなくなるだろう。

育成深度も深いため、インフレ速度もある程度抑えることが出来る。というか、インフレを抑えないと攻略コンテンツをどんどん追加しなくてはならないので運営が成り立たなくなる。そのため、ある程度、計画的なキャラクターの追加や緻密なコンテンツの設計が必要になってくる。

ガチャでレアなキャラクターが当たれば強いに決まっているのだが、それが全体に行きわたりすぎては問題なので、自然とガチャは渋くなるし、ガチャイベントの頻度も少なくなるのだ。

サマナーズウォーが本当にすごいと思うのは、このサイクルが徹底して完成されている点で、ゲーム自体も飽きさせない作りになっている点である。

さすがに今は強い新キャラが多く追加されているものの、リリースから3年ぐらいまでに初期の★5はずっと強かった。★5確率は0.5%。光と闇という属性のガチャに関しては★5確率は0.36%でも成立させているのは見事とした言いようがない。

D2も目指すところはそれだった。強い★4、★3でプレイしてもらいつつ★5悪魔は引けたら本当にラッキー。そして時間をかけることで作ることが可能になる、というものだ。

だが、そういう器は作ることが出来たのだが、その完成度が少し足りなかった。少し足りなかったが故に、僕が目指してるものにはなり切れなかったのだ。「なぜ出来なかったのか」はD2のお話で今後語っていくことにする。

長くなったが、僕が言った「ガチャはあるけどガチャゲーではない」という言葉の意味はこのような理由による。

質問箱に「ガチャゲーじゃないって、なんだったんですか?」という質問が結構寄せられたので、本稿を書くことにしたわけだが、「結果そうなっていないんだからお前の発言は間違っている」と言われると、「すいません」としか答えようがないのだが、「作りが違うので、よくあるスマホゲームのような感覚でガチャを回さないでほしい」「リセマラ頑張ってするよりも育成に時間を使ってほしい」というような意図からあの発言は出ている。少なくとも、その当時は「そうでないものを作ろうとしていた」ということだけはお分かりいただけるとありがたい、とは思う。

そして繰り返しになるが、強く言いたいのは「ガチャゲーだろうがガチャゲーだろうが、面白いかどうかには関係がない」ということだ。

当初目指していた形とは違うが、今のD2も十分面白い。既にプロジェクトは離れているが、楽しんでいただけたら幸いである。

そしていばらの道であっても、やっぱりデュエル上位を目指そうと、書きながら改めて思った。ホントに辛そうだけど。

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