「ガチャゲー」とはなにか? ~前編~
ガチャはあるけどガチャゲーじゃない
古参D2ユーザーの方々には僕のこの発言はよく覚えておられるのだろうと思う。ちなみに、出どころはリリース前に出したこの動画だ。
どうでもいいが、髪が長いな。忙しくて全く散髪にいけなかったのを思い出す。
結構インパクトがある発言だったようで、取り上げていただいた複数メディアの見出しに「D2はガチャゲーではない!」と書かれていて、叩かれる要因の一つとなってしまった。つまり電撃オンラインが悪い。(まり蔵さん嘘です。すいません。)
伝えたかったことはこの動画を見てもらえれば全部しゃべっているのだが、D2において、当時の他の日本産スマホゲームのような感覚でガチャを回してほしくなかったのは確かだ。
僕の中では日本産のスマホゲーによくみられる運営スタイルのものを「ガチャゲー」という言葉で表現したのだが、そこは良くなかったところだなと思う。実装面でそう感じさせない作りにすべきだったし、そうなっていなかったのが誤算だったのだが、その話は続きのnoteで書くとしよう。
本稿では、まず僕が「ガチャゲー」と呼んでいるものの定義を示したい。そこがはっきりしない限り、この話の理解は得られないと思っているからだ。D2で直面した問題も、説明しないと、何が悪かったのか判然としないだろう。
正直、あまり面白い話ではないかもしれないので皆に見てもらえるかはかなり怪しいのだが、これを読むとスマホゲームの構造がわかると思うので、ゲーム開発に興味がある人や、業界を目指してる人には興味深い内容になるかもしれない。ということで一つ気合を入れて書くこととする。
家庭用ゲームとスマホゲーム、どっちが作るのが難しい?
たまにこういう質問をされることがある。双方苦労するポイントが違うので一概には言えないのだが、プロデューサー/ゲームデザイナーとしては、スマホゲームのほうが難易度が高いと感じる。
家庭用ゲームのほうが開発規模が大きく、見た目にリッチであるので「スマホゲーなんて作るの簡単だろ」と思うかもしれないが、実際にはそうではない。家庭用ゲームの開発が豊富な人間がスマホゲームにトライしたとき、上手く行かないケースは結構多い。自分自身もそうだった。
家庭用ゲームに代表されるような「売切タイプ」のゲームの開発をしている場合は、我々プランナー(ゲームデザイナー)は「ゲームデザイン」をして「レベルデザイン」をすればよい。
ゲームデザインとはゲームの面白さを設計する、すなわちゲームシステムを作ることであり、レベルデザインとはそのシステムを生かしてプレイヤーに楽しさを提供する行為だ。どのようなマップやクエストを設計するかがそれにあたる。
だが、スマホゲーム(=Free To Playゲーム)場合はそうではない「デザイン」をゲーム内でしていく必要がある。家庭用ゲームを作ってきている開発者はその「デザイン」に対する能力がないか、経験がないことで苦労することが多い。
では、いったい何を「デザイン」しているのだろうか。それを説明していきたい。
Free To Playが成立するわけ
「Free To Play」とは基本プレイ無料ゲームのことなのだが(以下F2P)、なぜ無料でも商売が成り立つのだろうか?「ガチャがあるからだ」という答えは間違っていて、ガチャがなくても成り立っているF2Pゲームはいくらでもある。
一般にF2Pとして成立しているゲームの多くは、以下のような構造を備えている。
「プレイすることで、ユーザーの資産を増やしていく」
というものだ。そういうものでないと、マネタイズが成り立ちにくい。
ゲームというのはなにかしらの「目標=クリアする対象」が存在する。プレイヤーは「資産」を使って「目標」を「クリア」する。つまり、資産の量は「強さ」とほぼイコールである。
そしてプレイ=時間をつかうという行為なので、FtoPゲームの構造はもっと言ってしまうと
「時間を使うことで強さを手に入れてゲームを攻略する」
ということを繰り返している、ということが言える。
なんのために課金をするのか?
F2Pは聞いたことがある人が多いと思う。では、「Pay To Win」という言葉は聞いたことがあるだろうか?
Pay To Winとは、お金を払うことによってゲームバランスが有利になるゲームのことを指している。どの程度有利になるかはゲームによって違うが、F2Pスマホゲームの大半はこの形だ。(以下P2W)
先ほどの話合わせてみよう。
・F2Pではプレイヤーは、時間を使うことで資産を増やす構造
・資産は、強さと密接な関係がある
・F2Pゲームは、大半はP2Wとなっている
わかるだろうか。P2Wは強さを金で買っている。つまり、P2Wのゲームにおいては、課金要素は基本的に「時間」を買っているのだ。
「ガチャは時短じゃないだろう」という意見もあるかもしれないが、基本的な概念としてはランダム性がある強力な時短行為に過ぎない。
この質問でもらった内容も、今の前提を踏まえれば理解しやすいだろう。「スキン」や「ルームアイテム」といったものは「強さを時短して手に入れる行為」とは別のベクトルなので、そこまでユーザーに売れないのだ。
「D2はガチャゲーじゃない」と言ったわけ
長々と語ってきたが、まとめると
FtoPではユーザーに「資産」をどのように形成させるか、それをどの程度どの場所で「時間短縮させるか」とう構造を備えている
ということである。
つまり、FtoPゲームではこの構造をデザインしなければならないのだ。冒頭に述べた、家庭用ゲーム開発者に足りないのは、このデザインの能力になる。
D2においてのこの「資産形成のデザイン」は、それまでの日本の一般的なスマホゲームとは似て非なるものだった。
だから僕は
「D2はガチャはあるけれどガチャゲーではない」
と言ったのだ。
「日本で一般的なスマホゲーの資産形成デザイン」=ガチャゲー
これが、僕の定義である。なので「結局ガチャゲーやん」と言われても、僕の中では「いや、違いますよ」というかみ合わない回答になってしまう。質問箱程度の長さでは答えられない内容だ、というのはなんとなく理解いただけると嬉しかったりする。答えを濁していたわけではないのだ。
では、具体的にどう違うのか・・・ということについては長くなったので次回に続く!
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