ある夏の散文
憧れ、という暴力を理解しながらも、やっぱり、わたしが憧れてたまらないひとたちは、みんな美しい言葉を紡いでいる
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文庫本に、鼻をびたぁびたぁと浸してみます
ことばの絡まりが、こそばゆい
券売機に吸い込まれていく千円札、あたしより必死に生きてて笑っちゃった
もっとここにあいまいな嘘が残り続けてもいいよ
そう思えた午前9時、ドアが閉まる音にあなたを感じる
ことばで括られたの、わたし
だからこの世界からことばがなくなった瞬間、消えるね
あなたと空気を共有することでここは安全地帯になる
夏休み
汗がからだにまとわりついて、ちゃんと動物だって思った
ひっくり返ったセミ、君の分まで生きるね
3日後、セミ、10cm移動
世界を信じて自転車漕いでたら、車に轢かれた
君の肥大化した自己愛に飽きたから、タオルケットかけてもう寝ようって言った
あなたの息遣いだけ、真似するね
それくらい、許してね
絶望は長続きしないことが長所
幸せは忘れてしまいがちなのが短所
届かないかもしれないけど、あなたと文通したい
あなたの書く文字に、見慣れてみたい
君にとっての最低な日ばかり集めたインスタグラムがあるなら、ぜひ見てみたいと思う
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もがくほどしずむかなしい海だから
力を抜いて浮かんでいてね
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木下龍也(2021)『あなたのための短歌集』より
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