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「生態系のつながり」水槽

 水族館では、生態系を切り取ったような水槽が観られる。例えば「サンゴ礁水槽」、「黒潮水槽」、「岩礁水槽」、「○◯湾水槽」のように、生態系単位で展示する水槽。生態系なので、岩や砂、水などを含んだ「環境」と、そこに暮らす植物や魚などの「生き物」を同時に見られるのが特徴。

サンゴ礁
岩礁
川(湧き水)

 生き物がどんな環境で暮らしているのか、環境とどんな関係を持っているのか、こういったことが、生き物だけを展示しているよりもよく分かる。そのため、僕は生態系水槽が大好きだ。

 でも、これまで訪れたほとんどの水族館が、一つの水槽で一つの生態系を展示するに留まっていたように思う。(たぶん)

 これに関して、日本の水族館に対してさらなる進化を期待したい。つまり、複数の生態系をひとまとめに展示できたらおもしろいだろうと考えている。

 僕は一度だけ、そんな展示を見たことがある。葛西臨海水族園の特別展示(2018年11月)では、海草藻場とサンゴ礁を一つの水槽で展示していた。実際に、熱帯・亜熱帯の浅い海では、陸側から海側に向かって海草藻場とサンゴ礁が並んでいる場合がある。(河口から順に、マングローブ林⇒海草藻場⇒サンゴ礁と並んでいるとパーフェクト)

手前がサンゴ礁、奥が海草藻場
水槽は縦3m、横1.5m程度

この展示が示そうとしているのは、

  • 2つの生態系が隣接していること

  • サンゴ礁に暮らす魚のうち潮流が弱い海草藻場に卵を産むものがいること

  • 幼魚のうちは隠れ家や食糧を求め海草の茂みの中でも暮らすものがいるということ

  • 海草が失われると、サンゴ礁に暮らす魚も失われるということ

と認識。つまり、2つの生態系は、海水や砂など物質の流れだけでなく、成長に伴う生き物の移動によっても、つながりをもっているということ。展示のスケールは小さいけれども、「生態系同士の位置関係」、「生態系間の生き物の動き」を表現しようとした展示は珍しいんじゃないかと思う。

 このように、色んな生態系はつながっていて、互いに物質をやりとりしているので、山も森も川も海も深海も、みんな繋がっているということ、地球は一つの大きな生態系であることを改めて認識させられる。

 生き物を守るためには、生き物だけではなくて、生態系と、そのつながりを知らないといけないと思う。例えばサンゴは、陸から川に、川から海に流れ出る土砂の影響で、海水が濁り、光合成がしにくくなる等の影響を受ける。サンゴが死ぬとサンゴ礁に棲む魚たちの暮らしも脅かされるだろうから、生き物を守るためには、生態系のつながりを知らないといけない。

 生態系同士がつながっていることを当たり前に考えるためには、その例を知ることが大切。頭で想像してみるのも良いけど、目の前に見せつけられることが効果的だと思う。水族館には教育という役割があって、さらに、(生き物に関しては)実物を見せることができる。(Wonderful!!)

 そんな水族館には、いずれ生態系のつながりを展示することが求められる時代が来てもおかしくないと思う。

 あくまでも個人的な理想だけれど、いつか、色んな生態系をひとまとめにした、ミニチュア地球みたいな水族館を見れる日を夢見ている。

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