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小林賢太郎を好きな女のとりとめのない話


【小林賢太郎】サブカルのメッカ。幻の存在。想像上の生き物。ほぼ麒麟と同意。マカ。


小林賢太郎、生きていました。現実でした。そんな小林賢太郎の舞台「うるう」を2/4〜5の2日間観てきたお話。


初めての観劇に感激、言うとりますけども。観劇の師匠にチケットを取ってもらい、へろへろとついて行き、あれよあれよという間に舞台が始まりました。人生初の観劇が小林賢太郎で良かった。舞台処女を小林賢太郎に捧げました。責任…とってよね…?(上目遣い)


開演前アナウンスが流れた数分後、自然と静かになる客席。全てが初めての経験でぞわぞわしちゃうね。静かだけど、もう時間なはずなんだけど、始まらない。恐らく、2日間通して開演時間の19:00過ぎてたと思う。(暗くて時計は見えないし、もちろんスマホは電源切ってるから多分だけど)2日間共にギリギリに入ってきたお客さんがいたの。その人たちが席に着いてから鳴り始める音楽。やってくれるね小林賢太郎。両日の観劇で分かる小林賢太郎のニクイとこ。まあ、多分なんだけど。多分なんだけど。こちらで勝手に補完して好きになっちゃうじゃん。 やるよね〜!うちの賢太郎!そういとこあるよね!賢太郎!


ずっしりとしたチェロから始まる「うるう」タイトルの通り2/29、閏年の閏日を軸としたお話。だから4年に一回の公演。千秋楽は2/29。DVD化はされない。かぁ〜 たまらないねえ!ファンはヨダレものの舞台じゃなかろうか。じゅるり。


暗転から現れる小林賢太郎。うわ、動いた。うわうわ、喋った!うわうわうわ、生きてる!!ずっと画面越しにみていた人が生きていて、同じ空間にいる!同じ空気を吸っている!それだけで概ね満足でした。でもそれだけじゃ終わらないよねえ、しっかり面白い。舞台上には2人だけ。舞台中の音楽をチェロで演奏する徳澤青弦氏と、作 演出 出演 そう、Mr.全部俺 小林賢太郎。


ちょっと作られた感じのするあの声と、ちょっと作られた感じのする表情。ちょっと作られた感じのする動きの中で、作られていない観客の笑い声。全部小林賢太郎の緻密な構成によって作られた空間。少し異様でした。どれもこれもぞわぞわが止まらない。


わたしはみた。2日目の序盤の暗転中、まだ着替えなくていい衣装に袖を通した後、違うことに気が付いて静かに脱ぎ、ハンガーに戻すところを。そんなことも出来るのか小林賢太郎。そういうのをわたしは欲しがっているぞ。舞台袖にある大道具の裏に要所要所で登場する、その間違えた衣装が見えないように掛けられていたんだけど、また着替える時に取りやすいように脱いだあと一回一回ハンガーにかけるんだよね。そこに生活感があってたまらなく心がぎゅうっとなってしまった。小林賢太郎、ハンガー使うんだ!小林賢太郎ってハンガー知ってるんだ!暗転中で見えにくいところもまた良い!見えそうで見えない俺たちの楽園、と言ったところでしょうか?(違いますね)


他に2日間で分かることは、どこがアドリブで、どこが台本通りなのかということ。凄いよあの人、全部アドリブですみたいな顔して台本通りだし、台本通りですみたいな顔してアドリブかますんだよ。作り込まれすぎて全然分からない。わかった時の感動たるや。そして、日替わりのアドリブにまた涙を流して笑ってしまう。毎日会いたい賢太郎。一家に一台賢太郎。小林賢太郎です、名前だけでも覚えて帰ってください。


そして特筆すべきはパントマイム。小林賢太郎のパントマイムったらもう。裁縫シーンの布の動きが格別。う〜!小癪ぅ〜!あのマイムだけでも2時間観れる。繊細な指先の動きに興奮冷めやらないってわけ。わかる?あの手に首絞められて殺されてえよなあ。小林賢太郎の綺麗な手が大好き!(あと全然関係ないないけど、床に横たわるシーンで生足がみれたので感動した)


わたしとっても好きなシーンがあって、チェロに合わせながら喋るように、歌うように、リズムを取りながら自分がどんな存在かを語るんだけど、真っ青な背景の中、所狭しと舞台上を歩き回ってテンポよくキャッチーに振舞っていたかと思えば、苦悩や葛藤なんかがじわりじわりと見えてきて、こういう楽しいのに悲しい、とか、泣きたいけど笑いたい、みたいな複雑な感情を演じるのがとてもうまいなあと思った。


そうやって、劇中ではまるでミュージカルのように歌っていたり、踊ってみたり、おじいさんや、お姉さんを演じていた小林賢太郎。(このお姉さんがまた、そこはかとなくいい女なのだ)舞台が終わった後のカーテンコールでの挨拶では「自分こういうとこ苦手なんで」みたいな感じで言葉を探すように、じっくり選ぶように、ぽつりぽつりとなんだか水槽の中の熱帯魚に話しかけるような、世界にわたしたちしかいないような話し方で、少し声も小さかった。どれが小林賢太郎?どれも小林賢太郎!恐ろしい男だ。カーテンコールのあのたどたどしさも演技なのではないかと思ってしまうくらいには別人格。そんなミステリアスなところがMr.perfect 小林賢太郎の魅力の1つですね。


そんなMr.perfectは水分補給もperfect!暗転もしていない舞台真っ最中に大道具の裏に隠してあるペットボトルを堂々と取り出し「これも台本通りです」みたいに飲み始める。この世には水を飲むだけでも笑いを取れる人間がいるらしい。Mr.perfect。全てが計算通り。こ、小癪ぅ〜!


小林賢太郎はこの完成に持ってくるまで、きっと寝ないで机に向かったり、ずっと頭の中でぐるぐるぐるぐる考え事をしていたんだろうけど、それを表に出さない完璧さ。最初から何でもできるわけじゃないけど、努力の影を人に見せない故に完璧に見えるんだろうな。努力の天才、小林賢太郎。きっと上演を重ねるごとにどんどんどんどん良くなっていくんだろうなあ!とっても面白かったです、ありがとう。


今回舞台「うるう」の恐らく元ネタであろう「うるうびと」がYouTubeにあがっておりますのでぜひ。舞台と話は少し違うけど、同じところもたくさんあって、これはこれでまたいろんな気持ちになっちゃうコントです。最早、小林賢太郎の作品はコントと言ってもいいのかも分からない。お芝居?まあ観て決めてください。


ずっと生で見ると思っていなかった小林賢太郎。ずっと行くと思っていなかった舞台。この2日間でたくさんの経験をして、またひとつ大人になりました。また何か違う作品で新潟に来たら、行こうと思います。今回観劇の師匠に連れて行ってもらったので、次回はわたしが誰かを連れて行こう。


2日間とも小林賢太郎に手洗いうがいをしろと言われたので、自宅に帰ってまっすぐ洗面台に向かった。ついでにメイクを落とそうと鏡を見ると、心なしか嬉しそうなわたしが映っていた。楽しかったんだね、よかったよかった。またいつもの日常に戻るけど、この2日間のことを思い出しながら頑張ろうね。4年に一度のこの日のことを。