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Recycle Mafia #1-3ミミナシホウイチ

ボロロン♪ポロロン♪
シンゴたちが窓際のボックス席で壊れたラジカセを修理していると、どこからともなくギターのソレらしき音が聞こえて来た。

思わずシンゴとナチは視線をラジカセから離し、見つめ合ってしまった。

ナチが言った
「今の音、有線じゃないよね」
「でしょ。」

二人して目線でその音の鳴るほうを探した。
すると、3席くらい離れた窓際のボックス席に、真夏だというのにニットキャップを被って、髭伸ばし放題の浮浪者?風のその人はミッキーマウスのTシャツに迷彩のハーフパンツといった、なんともいえない服装だった。
しかし、その人から出ているオーラは人を寄せ付けぬ、鋭い「何か」があった。
警察とかヤクザが身に纏っているソレと同じような。しかし、また違ったオーラだ。

その人はこともあろうに、ファミレスでアコースティックギターをポロポロと鳴らしていた。
曲を弾いているわけでなく、ただポロポロとチューニングでもしているかのようだった。
するとおもむろに、被っていたニット帽を取り、頭を掻き毟りながら

「うーんちがうなぁ」

「あーうん」

などと、独り言をぶつぶつとつぶやいていた。いや、作曲でもしているのか?
どのみち、こういう人はこの辺では珍しくないので、関わらないことにして、壊れたラジカセをそのままにして、ピザを注文する事にした。

「すみません♪」

ナチが、店員さんを呼ぼうと手を挙げると
店員さんと、そのボサボサ男が一斉にナチを見た。
店員さんが来ると、シンゴはピザを注文し、ナチに「あのボサボサ男知り合い?」
と尋ねると。

「うーん・・・なんか知っているきがする」

とのこと。
すると、そのボサボサ男が、急に席を立ち、シンゴたちのほうに歩いてきた。
シンゴは、「あ!絡まれる」と咄嗟に思ったが、そのボサボサ男は、ナチに

「あのー・・・柔道部の皆川君?」
と聞いてきた。
するとナチも「は!」と目を輝かせ

「皆川じゃないけど、わかったぞ♪ 桜井君だ!」

「おーーーそうだよ。桜井だよ!皆川じゃなくて・・えーと、ま、いーや!ひさしぶりーー!」

と二人はシンゴをさておき、昔話をはじめた。
どうやら、二人は昔柔道部だったらしく、大会などでよく会う仲間だったらしい。
ちなみに、ナチは中学、高校と柔道部で主将。全国大会にも行っている猛者だ。
引きこもっていても、しっかりTVでは柔道の試合は観ていたらしい。

この桜井君も、かなりのやり手だと聞いた。
この再開を祝して、珍しくナチが居酒屋に行きたいと言い出したので、近くの居酒屋に行く事にした。

時刻は午後4時
この時間でも、競馬の客目当ての居酒屋は何件もやっているので、困る事はないのだ

三人はとりあえずレモンサワーで乾杯した。他愛もない話でも、結構盛り上がった。

レモンサワーが好きな人に悪い奴はいない。
ひとしきり、地元話で盛り上がると、桜井君はレモンサワーを5杯飲み干し自分の今までを語ってくれた。
酔って自分の過去を話したがる奴はあんまし好きじゃないけど、なんか彼は許せた。
また、その話の内容が内容だけに。

桜井君は、高校でも柔道をやっていて、卒業後も柔道をずっと続けながら、地元の先輩に誘われ、クラブで働きながら、普段はお酒などを運び、時には「セキュリティーチーム」の仕事をしていたという。
セキュリティーチームというのは、簡単な話、クラブ等で開催されるイベントなどの治安を守る為に、結成されたチームで、「喧嘩」が強くないと勤まらない大変体を張った仕事だ。

ある日、某有名大学のパーティーが開かれる事になり、その仕事の「セキュリティー」を桜井君のチームが任されることになったのだ。
当然引き受けたのだが、その日に限って主力の2人(先輩)が不在で一旦は断る話であったのだが、後輩や仲間の後押しもあって、桜井君がリーダーとして、引き受けた。「学生のイベントなら大丈夫。」と甘く見ていた。

イベントが始まったと同時に事件は起きた。
突然正面入り口から、10数人の黒ずくめの男たちが、異国語をわめきながら、乱入してきたのである。
勿論、これを止めるのが「セキュリティー」の仕事なのだが、想定外。
エントランス(入り口)には3人体制で任務に付いていたのだが、あっさり突破された。
通常、ボディーチェック2名 控え2名で配置につくのだが、今回は人数不足ということで、3人体制になっていた。
直ちに、10人総出で、その外国人達を取り囲んだが、その外国人達は一斉に刃物(包丁)を取り出し、切りかかってきた。
仲間のうち5人が切りつけられ、負傷したので、桜井君は、一旦仲間に「待て」をかけ、降参する形になった。
すると、一組のカップルを探し出し、この外国人集団はなにやら中国語で話はじめ、その二人を連れて行ってしまった。

セキュリティーのチームはというと、負傷した5人を含む10人全員呼ばれ、一列に並ばされた。
するとおもむろに、1人の片手の指を4本切り落とした。
仲間の悲鳴と、全員の悲鳴がクラブ中に響き渡った。桜井君は言った。
「俺が代表だ。やるなら俺だけにしてくれ!」
と頼んだが、奴らには言葉も通じない。

結局、メンバー全員、体の一部を失い、桜井君は両耳を削がれることとなった。
後から、同じパーティーにいた大学生に聞くと、連れ去られたカップルのうちの、男子大学生が、新宿でデートしていた女(連れ去られたカップルのうちの女子大生)が、不良中国人グループのリーダー(15歳)のバイト先の知り合いで、憧れる女子大生だった。
この女子大生に告白した15歳のリーダーは、こっぴどく振られ、子供扱いされたらしい。

新宿でこの2人を目撃したリーダーは大いに嫉妬していた為、この報復だと推測された。
しかし、このカップルは連れ去られてしまったので、事実は闇の中。
この事件がきっかけで、桜井君のチームは解散。
先輩からは逃げるように、地元に戻ったのだという。
長いボサボサの髪の毛は、耳が無い事を隠す為だという。
その後も、バイト先では、耳が無いことがばれると「耳無芳一」とバカにされることがあり、そのたびにそいつを殴っては、職を転々としていたらしい。

この話を聞いて
シンゴは酔っていた事もあり、大胆なことを言ってしまった。

「じゃーさー。これからも、遊ぼうよ。俺たちリサイクルショップの真似事やってるからさ、暇なとき一緒にやんない?」

すると、桜井君は、あっさり、イクイクと言った。別れ際に、シンゴはさらに大胆なことを口走った。
この口のせいで何度も痛い目みたのに・・・酒が入ると・・・

「耳無芳一ってなんかセンスないよな、うーん・・・じゃあさ、イチだけもらって、イチって呼んでいい?殺し屋イチってしってる?」
シンゴはまた、お得意の漫画の話をしだした。すると桜井君は笑顔で
「知ってる、知ってる。アレ俺も好き」
と言ってくれた。

これで、シンゴ、ナチ、イチの「RBN」のメンバーが揃ったのだった。

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