移住したい、と思ったことがなかった。
移住したい、と思ったことがなかった。
いや、というより、「移住したい?それともしたくない?」という選択を、自分に投げかけたことがなかった。
だから、その結果、移住したい、と思うにも至らない。
コロナが流行り、世間が移住に目を向け始めている、という情報は、
移住に関する仕事をしていなくても、どこからともなく入っていた。
リモートワークの普及から、どこでも働けることが分かった。
密で狭い東京よりも、広いところで暮らしたくなった。
世界の変化をきっかけに、これからの人生を見直したら、生きたい場所はここじゃなかった。
理由は人それぞれだろうが、コロナによってもたらされた変化から、移住に繋がることは不思議ではない。
※出典:『コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果を発表 | 移住転職者は「仕事のやりがい」を最重視。転職なき移住者は41%にのぼる』
(wantedly)
ただ振返ると、移住の波は、過去からじわじわと広がっていたようだ。
2000年代前半には、団塊世代の大量退職が問題に上がり、地方自治体が移住獲得に乗り出した。
2000年代後半には、総務省が地域おこし協力隊事業を開始し、地域づくりにおいて、国としても補助金から人的支援へと移行しはじめた。
2011年には東日本大震災がおこり、ファミリー層を中心に、安心安全な住処を求めて移住した。
2014年には、「まち・ひと・しごと創生法」が制定された。この創生法をきっかけに全国各地でも本格的に移住施策が策定され、地方創生に取組む地域が増えた。
人口減少や超高齢化といった課題の解決方法の一つとして、地域を担う人材の確保が掲げられたといえる。
さらに、地方でのネット環境の整備や、ブログ・SNSの発達から個人単位の情報を取得できるようになったことも相まって、若者のライフスタイル転換としての移住も増加している。
図:地方移住推進への希望(三大都市圏)
※出典:『【地方移住特集:前編】若い世代で高まる“地方移住願望”。半数以上が「関心あり」』(EL BORDE by Nomura)
過疎過密、とか、超高齢化社会、とか、限界集落、とか。
聞いていても、都会に住んでいたら、感じることは正直まだ多くない。
定年後の暮らしを求めて、安心な土地を求めて、理想のライフスタイルを求めて、
その結果移住した人たちは、地域を担う、なんて思っていないかもしれない。
だけど意外に、彼らの動きは良いことだったりするものみたいだ。
(もちろん中には、地域でチャレンジしたい、この地域を何とかしたい、という人もいるだろう)
移住を深く調べるまで、
なんとなく、最近田舎暮らしフォーカスのTVが多いなぁ、とか思っていた。
でも、それを見ても、こんな生活もあるんだなぁ、という感想で終わっていた。
移住の背景に、国・自治体の動きや時代の流れがあるように、
自分の思考の背景にも、育った環境や考え方の癖がある。
だから、まだ、移住したい、とは思っていないけど。
将来に「移住したい?それともしたくない?」という選択を投げかけられるようになったのは、進歩だと思っている。
※参考文献
山崎義人・佐久間康富編著(2017)『住み継がれる集落をつくる 交流・移住・通いで生き抜く地域』学芸出版社
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