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内部監査 DX化の課題

はじめに

私は現在、小売業の内部監査室で業務監査を担当しています。
当社は、GМS、SМ、小型SМ、DS等*多岐にわたる業態の店舗を運営しています。店舗数は合計で160を超えますが、これらの店舗へ足を運び、店舗運営の業務監査を行っています。
今回は、当内部監査室のDX化への課題にフォーカスして、5W1Hで分析したいと思いますが、その前に、内部監査について、少し説明をしたいと思います。
*GМS等の業態は下記の記事を参考にしてください。

内部監査について

内部監査*を一言で表現すると『リスクに応じた客観的な立場で、保証と助言及び洞察を提供し、組織体の価値を高めること』です。
これを、私の担当である業務監査にまで分解すると、店舗での作業状況や管理状況の適正性を評価したり、改善策を助言したりすることになります。
*内部監査の背景については下記の記事を参考にしてください。

内部監査とDX化

例えば、管理状況の確認というと、紙の書類を目視でチェックする印象を持たれるかもしれません。
しかしながら、平成28年3月の金融庁による「会計監査の在り方に関する懇談会」提言*に「監査によるIT**の活用」が含まれて以来、特に会計監査を中心にIT化が進みました。
*金融庁による報道発表資料(下記)を参照してください。
**IT(Information Technology、情報技術)

「会計監査の在り方に関する懇談会」提言の公表について

平成28年3月8日「会計監査の在り方に関する懇談会」提言の公表について 金融庁

更に今日では、業務プロセスのデジタル化が飛躍的に進歩しています。
具体的には、決裁書や会計処理をはじめとする電子承認システム、人事関連の勤怠データ管理システムの導入により、脱ハンコ、ペーパーレス化が加速しています。
そのような流れから、内部監査の世界には『DX化の課題』、『デジタル監査への取組み』というキーワードが溢れています。
先の記事、『内部監査の必要性と実効性を改めて考える』においても、内部監査のデジタル化について触れています。

5W1H分析

1.業務プロセスのデジタル化への対応

現在、社内各部署の業務プロセスが、いわゆる「紙とハンコ」による管理から、電子承認等へ変更される過渡期に入っています。

  • 誰の課題か?

各監査員の課題です。

  • いつ起こる?

本社監査及び店舗監査で発生します。

  • どこで起こる?

本社対象部署及び対象店舗で発生します。

  • なぜ解決されない?

本来、業務監査は主に管理をしている部署(店舗)が管理体制を整え、その管理状況を評価するものです。
例えば、従来の業務監査は、書類の承認状況を決裁者の押印の有無で評価をしていました。
理由は、書類を管理する過程において、鍵となる決裁者の承認の履歴として押印を残しているからです。
しかし、現在進行形でシステムが変更されている現状では、評価する対象がまだ確立されていないのです。
先ずは、主管部署による管理体制の構築状況をモニターしなければなりません。

  • どのように解決するか?

主管部署による管理体制の構築状況をモニターしつつ、新システムの仕組みを把握しなければならないと考えています。
具体的には、そのシステムの運用方法(マニュアル)、管理の鍵となる操作の特定、システム内データの管理状況の確認が必要です。
また、どのようなエラーが発生するのかの情報収集も大切です。

2.デジタル化に対応した監査手法の確立

これまでの書類を確認する監査手法が成立しなくなります。

  • 誰の課題か?

各監査員の課題です。

  • いつ起こる?

本社監査及び店舗監査で発生します。

  • どこで起こる

本社対象部署及び対象店舗で発生します。

  • なぜ解決されない?

課題1とリンクする部分が多いのですが、課題2は課題1の問題点であった主管部署の管理体制が構築された後、具体的に監査手法を構築する行程と考えています。

  • どのように解決するか?

主管部署が行っている管理方法を、システム内のデータを分析する方法に応用します。
例えば、決裁書の承認ではデータから承認者のアンマッチを抽出することができますし、勤怠データから基準外の勤務履歴を抽出することが可能です。
よって、監査員がシステム内に直接アクセスしてデータの抽出し、自動でデータを処理する方法を確立すると監査業務の効率性が向上します。

3.書類とデータの連携

足元を見た時に、現在の作業にもデジタル化の余地がありました。
デジタルリテラシーを身に着けて、作業の軽減と正確性を両立したいと思っています。

  • 誰の課題か?

業務監査は通常、監査員2~3名で行います。
このメンバーにとっての課題です。

  • いつ起こる?

監査業務の終盤です。
業務監査は2日間または3日間をかけて行います。
監査日程の中盤までは、監査対象になる内容を作業状況、書類の管理状況から判定していきます。最後に監査講評会を行い、監査結果を対象店舗の方々に伝え、業務監査は一区切りとなります。
その、監査講評会用に報告書を作成する作業が煩雑であり、エラーが発生します。

  • どこで起こる?

監査対象の店舗です。
各監査員がそれぞれのPC端末で書類を作成します。
評価用のワークシートと結果報告用の概況報告書は、エクセルに入力して作成します。
特にワークシートは、つい7、8年前まではエクセルで作成したフォーマットを印刷し、それに鉛筆で記入していました。
それらの結果を、概況報告書のエクセルに入力して、報告用の文章も入力していました。
ただ、現在もワークシートと概況報告書はつながれていないので、手入力の作業が煩雑でありエラーも発生します。

  • なぜ解決されない?

様々なツールを使えばもっと効率的になるという情報が足りない。

  • どのように解決するか?

このままエクセルを使うのであれば、根本的には、現在の書式が手書きに適したフォーマットなので、それを入力しやすいフォーマットに変える必要があります。
そして、それぞれを同期させ、入力からデータ集計まで自動化できるとエラーがなくなります。
最終的には、タブレット端末を使い、タッチパネルで情報を選択して、自動集計されるのが理想です。

最後に

内部監査の背景からはじめ、実務レベルの課題を採り上げました。
これまでの内部監査室は業務プロセスを理解し、その管理状況を評価してきました。これからは、業務プロセスのデジタル化により、デジタルリテラシーも必要とされます。また、不正のデジタル化への対策も喫金の課題です。


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