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アフターデジタルにおける転職エージェントの役割

「アフターデジタル」という本をご存じでしょうか。副題に、「オフラインのない時代に生き残る」を冠する、ウィズコロナを予見したようなコンセプトの本です。

この本を読んで、「転職エージェントの価値って何だろう?」と改めて考えたことを書きます。

アフターデジタルとは

OMO(Online Merges Offline)を分かりやすく表現するため、「ビフォアデジタル」「アフターデジタル」という言葉によって説明されています。アフターデジタルの世界では、デジタルとリアルを分け隔てすることなく、消費者にとって最適なチャネルでコンテンツを提供することについて描かれています。

アフターデジタルの世界では、消費者が常にデジタルでつながっていることで、日々の行動がデジタル上に記録され、「最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーションで提供する」ことが可能になると説明されています。

保有する求人情報に価値を置くエージェントは淘汰される

ここで、「転職」というイベントについて、アフターデジタルの世界を考えてみます。

これまで転職エージェントに求められた「求人情報のマッチング・提供」という役割は必要なくなるといえます。これは、かなり多くのエージェントが淘汰されることと同義です。

ビフォアデジタルの世界において、求職者が転職エージェントに求める役割ってなんでしょうか。第二新卒など、キャリアの方向性がそこまで定まっていない人を除き、3年以上の業務経験がある人についていえば、

・望ましい求人情報の提供

以上。だと思うのです。

求職者にとっていい情報を提供するため、転職エージェントは膨大な作業を行います。

・企業が求める人物像に合う人を探して、スカウトメールを送る(1日50~100通程度)
・スカウトメールの返信に対応する(返信率3~5%)
・求職者の方と面談する
・求人情報を収集・マッチングし提案する
・面談の日程調整をする
・面接など転職活動のサポートをする
・オファー条件の交渉をする

これらの作業のうち、「スカウトメールを送る」「求人情報を収集・マッチングする」作業は本当に膨大で、かつ多くが無駄になります。(スカウトメールに返信がない、マッチングした求人情報に応募承諾されない、など)

うまくマッチして選考に進んだ方の理由は何かというと、「その方に最適なタイミングで、最適な求人情報を提供できた」。それだけなのです。

でも、それって人間がやる意味あるのでしょうか?

デジタル上に記録された行動をもとに、最適な求人を、転職意欲の高い人に、その人のタッチポイントにおいて情報を提供できれば、それが最適な世界なのではないでしょうか?

ダイレクトメールの返信率は、およそ3~5%だといわれます。つまり、100人にメールを送ったとして、そのメールを必要とするのはたった3~5人だけなのです。

ただし、「必要ではない」と思われた理由が、「自分に適した求人情報ではない」だからなのか、「今転職したくない」からなのかは、人によって異なります。エージェントはそれを見抜いてスカウトメールを送ることはできません。

でも、デジタルならそれが可能なります。

今転職情報を必要とする3~5%の人にだけ、その人が必要な情報を届けられる。人材を採用したい企業と、個人が直接つながる。アフターデジタルの世界においては、そんな世界が実現するはずです。

アフターデジタルにおける転職エージェントの価値

では、アフターデジタルにおけるエージェントの価値はどうなるのでしょうか?

マッチングによる価値提供がなくなり、よりコンサルティングによる価値提供が求められるようになるはずです。

本の中で「無人店舗」の例において描かれていますが、無人店舗の目的は人件費の削減ではなく、レジ打ちや決済といったシステムのほうが正確にできる単純作業をデジタル化することで、顧客とのコミュニケーションや接客を増やし、顧客満足度を向上することです。

エージェントにおいては、求職者にとってのキャリアコンサルティングを提供することであり、求人企業にとっての最適な人物要件や採用のコンサルティングを提供することが価値になります。

提供価値の変化に伴い、従来の課金モデルであった「人材採用の成約に伴う成功報酬ビジネス」が変化し、プロジェクトベースのコンサルティング契約になると思われます。

はやさかも、しがないマッチングエージェントの一人ですが、コロナ後の世界で価値を提供できるエージェントの一人となるため、求職者お一人お一人に向き合ってまいります。


キャリアや転職についてブログを書いています。


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