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地質観察旅行記:長瀞・皆野エリア
2022年4月30日に長瀞へ地質の観察に出かけました。
ここにその記録を残します。
郷平橋の砂岩と泥岩
まず皆野駅で下車し、皆野橋を通り、郷平(ごうへい)橋を渡ります。
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橋から見下ろす赤平川と荒川の合流付近、赤平川の右岸に露頭があります。
川の浸食を受ける場所にあるにも関わらず残っており、固い岩であることが分かります。
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この露頭には、黄褐色の砂岩や灰色の石灰質泥岩があるのが分かります。
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砂岩と砂岩泥岩の互層もあり、近くで観察すると葉理(ラミナ)の細かい筋や海緑石も確認できるそうです。
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川辺に下りないと詳細な観察は難しそうですが、降りれそうな場所が見つからなかったのと、時間がないため断念します。
実際に下りて観察した人の記録を見つけたので、ご参照ください。
前原の不整合
郷平橋を右なり歩き、道路脇にある見落としてしまいそうな小道に入るとジオパークの緑の立て看板があります。そこから少し先にある案内看板横の階段を降りると前原の不整合があります。
それにしても、この階段が本当に急傾斜で、手すりの紐にすがりつきながら滑るように降りるしかありませんでした。
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階段を下りてすぐの場所に前原の不整合を見ることができます。
不整合とは、海底で堆積した地層が、隆起して地上に出て浸食されて削れ、その後に沈降して海底で堆積することで、中間の年代がゴッソリなくなっている地層のことです。
この地層は、先ほどの郷平橋で見た地層より過去の地層になります。
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前原の不整合の地層区分は以下のようだと解釈しました。赤色の線が不整合部分と思われます。素人の私がヤマ勘で引いた線なので信用しないでください。
左下のへこんだ部分にある黒色の泥岩部が1億6000万年前の中生代ジュラ紀の地層で、その上に1700万年前の新生代第三紀の地層が重なっています。
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カキの化石が表面に見られるというので探したのですが、見つけることはできませんでした。
栗谷瀬(くりやぜ)橋の蛇紋岩
次は、栗谷是橋の蛇紋岩を見に行きます。
その道中、とても細くて車だけで道幅がふさがる道があり困りました。
車が行き交う中で、車の来ない十数秒の隙を見つけて全力疾走して通り抜けました。もし運悪く後方から車が来たら(丁度カーブで、しかも木が茂っていて通行人が目視しづらく)ひかれかねないので本当に怖かったです。
地方には人が徒歩で来ることを想定していない場所が幾つもあるのが悩みの種です。
栗谷瀬橋付近に到着すると川沿いでバーベキューをしている人がいて、肉の焦げる良い匂いがします。
そして川辺に目をやれば、大小様々な緑色の蛇紋岩が見られます。
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カンラン岩が水と反応することで、この緑色の蛇紋岩になります。
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蛇紋岩は風化しやすいので、蛇紋岩の多い地層は崩れやすくなります。実際に小さく砕けた蛇紋岩が地面にはゴロゴロしています。
この地層のもろさから大型建造物の土台にはできず、秩父鉄道もこの場所を迂回して走っています。
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石の表面には方解石の白い脈が入っています。これを鳩糞石とか蛇灰岩とも呼ぶそうです。
これら蛇紋岩は繊維状のクリソタイルという鉱物を含み、(現在では肺がんの原因になるので使用禁止されていますが)石綿の材料となります。
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紅簾石片岩(こうれんせきへんがん)
親鼻橋近くの坂を下ったところで入場料の200円を払って、川辺に入ります。キャンプ客や川下りの団体客がたくさんいて、木船が幾つも並んでいました。
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川を横切る鉄橋をSLが通るというので、何人もの鉄道ファンの人がカメラを構えていました。
彼らの撮影を邪魔しないように気をつけながら、私だけが彼らに背を向けて岩の写真を撮っていました。
彼らも一人だけ地べたばかり撮影している変な奴がいるので、奇妙に思ったことでしょう。
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ここでの私の目当ては紅簾石片岩です。紅簾石片岩はマンガンを多く含む結晶片岩です。
結晶片岩とは、地中の熱と圧力で再結晶化した岩石の総称です。詳しくは以下をご参照ください
地上に紅簾石片岩が露出しているのは極めて珍しく、1888年に小藤文次郎博士が世界で初めて露頭している紅簾石片岩をここで発見しました。
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1点残念なことに、紅簾石片岩を観察するには、この路頭に登らないといけません。私はこの路頭に近づく入口を見落としていたせいで観察できませんでした。
また、紅簾石片岩を登ったところにあるポットホールを見ることもできませんでした。
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実際に路頭に近づいて観察した人の記録があったので、ご参照ください。
さて、ここでの見どころは紅簾石片岩だけではありません。
川沿いには様々な結晶片岩を見ることができます。
茶色や黒の岩がミルフィーユのように層を成しているのが確認できます。
この構造は岩が地中にある時に、プレートが沈む圧力を少しずつ横に受けたことで、岩が少しずつ横にずれてできたものです。この構造は、薄く剝がれやすいという特徴を持ちます。このような現象を層理と呼びます。
褐色の結晶片岩は鉄やアルミニウムを含むスティルプノメレン片岩と思われます。
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この場所では、多くの種類の結晶片岩が確認できます。
確信はないのですが、黒いのは炭素を含む石墨片岩で、緑色のは緑簾石片岩か緑泥石片岩と推測します。
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プレートの圧力によって歪んだ褶曲模様も確認できます。
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虎岩
次は上長瀞にある虎岩を見学します。
宮沢賢治が虎岩の模様を博多帯の模様になぞらえて詠んだ詩が有名で、石碑にもなっています。
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肝心の虎岩ですが、これを見つけるのはとても難しいと思います。実は私が虎岩だと思って嬉々として見学していた以下の写真の岩が、帰宅後に虎岩ではないことに気が付きました。
他の人の旅行記を見ても虎岩を見つけるのに苦労していたり、私と同じようにこれを虎岩だと勘違いしていました。
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本当の虎岩はこちらです。たまたま撮影した画像に残っていたので気がつきました。
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茶褐色のスティルプノメレン片岩が水平に割れた隙間に、白色の方解石が入り込み縞模様を作っています
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岩畳と秩父赤壁
いよいよ旅の主な目的である長瀞に向かいます。ですが、予想以上に他の場所で時間を取ってしまい、長瀞に到着した時には午後3時近くになってしまっていました。やや急いで観察を進めることにします。
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長瀞の岩畳は1歩あるくごとに見どころがあり、どれを紹介するか迷います。
動画を撮影しながら歩いたので、岩畳を歩いた30分の道程を全て見ていただきたいくらいです。
観光客の人があまり写っていない岩畳の写真を何枚か選んでここに載せたく思います。
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これらの岩畳は、以下のようにしてできています。
まずプレートの移動にともない、地中の岩石が熱と圧力を受けて、親鼻橋で見たような片理構造を持ちます。
その岩石が地上に出た時に、地中の圧力がなくなり膨張することで縦方向に亀裂が走ります。これを節理と呼びます。
こうして横と縦の賽の目状に割れた結晶片岩は、荒川に流されて一部が崩れ、段々構造の岩畳になったというわけです。
長瀞の岩畳には黒っぽいものが目立ち、それらは石墨片岩だと思われます。
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時折、黒い片岩が剥がれているのを見ることができました。
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また、長瀞の対岸部は切り立った崖になっています。「秩父赤壁」とも呼ばれる断崖絶壁です。
先ほど、岩畳が荒川に浸食されてできたことを説明しました。この時、川のカーブする対岸側が浸食により崖となり、手前側には堆積作用で砂礫がたまったことで、この風景が出来上がりました。
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見れなかったもの
「蓬莱島」と「高砂橋下流の雁行脈」は体力の限界で見学できませんでした。
在宅勤務でめったに運動しなくなり体力がかなり落ちています。皆野駅で下車してから4時間歩き続け、道路を走ったり、岩畳を飛んだりしたので、長瀞駅に到着した頃には、足がガクガクになり座り込んでしまいました。とてもではないですが、更に歩くことはできないと判断して帰ることにしました。
案の定、翌日は筋肉痛でヨタヨタとお年寄りのように歩くはめになりました。今後は秩父の山の地層も見学に行きたいのですが、その前にまずは体力作りに励まないといけなさそうです。
また、埼玉県立自然の博物館は閉館時間になっていたので入れませんでした。前述した紅簾石片岩のポットホールを見落としたのも残念でした。
参考資料
日曜の地学1 埼玉の自然をたずねて【改訂版】
ジオパーク秩父公式ガイドブック 秩父に息づく大地の記憶
ブラタモリ18