「一般地質学」を読みながら地質の勉強4:変成岩と花崗岩化作用

アーサー・ホームズの「一般地質学」を読みながら地質の勉強をします。
今回は第8章「変成岩と花崗岩化作用」を読みます。

変成作用

変成作用とは岩石の再結晶化のことです。熱、圧力、化学変化による固体の再結晶化を変成作用と総称します。
例えば、雪の上に新たな雪が降り、下の雪が押しつぶされて氷になるのも再結晶化です。

結晶質石灰岩

大理石というのは、地殻中で石灰岩が再結晶化したものです。
地殻中の熱により、石灰岩中の細かい粒は一様な大きさの方解石に再結晶化されます。
このような熱による変成を熱変成作用と呼びます。

再結晶化する過程で、石灰岩からCO2が逃げるとブルーサイト大理石やカンラン石になります。

カンラン岩の化学式は以下になります。
2CaMg(CO3)2 + SiO2 = Mg2SiO4     + 2CaCO3 + 2CO2
ドロマイト     + 石英  = カンラン石 + 方解石    + 二酸化炭素
ドロマイトからCO2が逃げて、カンラン石が変成されるのを示しています。 

一方、地殻中で高い圧力がかかった場合は、CO2の逃げ場がなくなることでドロマイト大理石になります。
ドロマイトが高圧力の下で熱せられ続けると、最終的に石灰岩の中にある化石の痕跡が全て破壊されて、白色の粒状結晶質石灰岩(ドロマイト大理石)になります。
イタリア、カララ産の彫像用大理石が有名です。

他にも有名なのはイングランド北部のウイン・シルの石灰岩で、その一部が大理石に変成しています。

https://www.geologynorth.uk/the-whin-sill/

また、カンラン石は水と反応すると緑色の蛇紋石大理石になります。アイルランドの蛇紋石大理石が有名です。

化学式で書くと以下になります。
5Mg2SO4   + 4H2O = 2H4Mg3Si2O9 + 4MgO + SiO2
カンラン岩 + 水      = 蛇紋石              + (水溶性物質)
カンラン石が水と反応して蛇紋石になっているのを示しています。

粘板岩(スレート)

雲母、緑泥石、赤鉄鉱などの細粒を含んでいる頁岩、泥岩が地中の圧力を受けながら流動的に移動することで粘板岩(スレート)に変成します。このような移動による変成を接触変成作用と呼びます。

スレートは、薄く剥がれやすいという特徴を持ちます。また、層理と並行ではなく、斜交した劈開(へきかい)構造を持っています。この構造はスレート劈開(へきかい)と呼ばれます。

粘板岩の定義をWiKiから引用します。

粘板岩(ねんばんがん、英: slate、スレート)とは、泥岩や頁岩が圧密作用によりスレート劈開[1]を持ったもの。堆積岩がやや変成作用を受けたもの。元々の堆積面ではなく圧密作用に垂直に薄くはがれる。石英・雲母・粘土鉱物・長石・赤鉄鉱・黄鉄鉱などが含まれる

以下のサイトの説明もご参照ください。

日本では中央アルプスで、粘板岩などから成る黒い山肌を観察することができます。

結晶片岩

造山運動や貫入運動により、変成作用が広い範囲に岩石に対して同時に作用することを「広域変成作用」と呼びます。

なお、貫入運動の説明は以下をご覧ください。

貫入は主に火成岩に関係する地質現象で,すで に存在していた岩石に割れ目・すき間ができ,その中にマグマが入り込んで固まって,火成岩が岩脈状に生じることをいいます。
http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/tisitugensho/kannyu/kannyu.html


頁岩やスレートが200℃から500℃の「低温」の下、特定の偏った向きの高圧力で移動することで再結晶化すると結晶片岩(へんがん)になります。
この変成作用は広域変成作用です。
圧力の向きに沿って結晶化するので、縞模様や波打った模様の構造になり、模様に沿って剥離しやすくなっています。

日本は海洋プレートが沈み込む位置にあるため、広い範囲に結晶片岩が分布しています。プレートに乗った岩石が、移動しながら高い圧力を受けて変成しやすいからです。
例えば、長瀞の岩畳や虎岩と呼ばれる結晶片岩が有名です。

花崗岩化作用

花崗岩化作用とは、花崗岩以外の岩石が花崗岩になる変成作用のことです。例えば、雲母片岩は花崗岩化作用により片麻岩になります。
この変成は、化学組成変化を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

地殻に大量に存在する花崗岩がどうやってできたのかを、この花崗岩化作用により説明する仮説があるようです。この仮説が正しいかどうかを巡り、1950年頃に大きな議論となったそうです
以下のサイトではこの仮説は否定されていました。どうやら現在では、ほぼ否定されている仮説のようです。(花崗岩化作用があることは証明されていますが、地殻にある花崗岩は花崗岩化作用によりできたわけではないという意味です。)

花崗岩化作用は,大陸地殻が侵食されてたまった堆積岩などが,融解しない で直接花崗岩になるというモデルです.大陸地殻形成にはマグマが関与してい るはずですから,花崗岩化作用は地殻形成には直接は関係がないでしょう.
http://www.kazan.or.jp/J/QA/sr/qa-63.html

ミグマタイト

新しい花崗岩と古い岩石の混合した片麻岩をミグマタイトと呼びます。
変成岩と深成岩が混在しており、片麻岩と花崗岩の中間に位置する岩石です。

隠岐ユネスコジオパークで見られる隠岐片麻岩(ミグマタイト)が有名です。

広域変成岩類

広域変成作用による変成岩の分類はエクティナイトとミグマイトに分類できます。
化学組成変化のない片岩や片麻岩がエクティナイトで、化学組成変化があるのがミグマイトです。

ミグマイトは更にエンブレッカイトとアタナクタイトに分類されます。
先ほど紹介した船津の眼球片麻岩や縞状片麻岩がエンブレッカイトです。
不規則な褶曲構造を持つ花崗麻岩がアタナクタイトです。

変成作用の条件や成分により、様々な分類が可能です。