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篠田麻里子さんの不倫疑惑報道、会社はどう対応すればよいのか?

元AKBメンバーとして活躍していた篠田麻里子さん。彼女の夫が不倫相手を提訴しているということで、不倫疑惑の報道が加熱しています。

篠田麻里子さんはこの騒動に対し、本日ご自身のInstagramで
「ひとつだけはっきりとお伝えします。私が不倫したという事実はありません。今後、私が法廷に立つことになっても、そう主張していきます。」と疑惑を完全否定しました。

しかし、YouTubeに修羅場の音声データ動画が公開されたり、滝沢ガレソさんをはじめとするインフルエンサーやYahooニュースなど、さまざまなメディアの報道によって事態がどんどん大きくなっています。

会社の役員が不倫疑惑報道の渦中の人になったら

今回、篠田麻里子さん側は完全に広報対応を間違えていると思いますが、生々しい音声データの内容に驚愕したものの、まだまだ真相も解明されていませんし、芸能人の方の私生活に言及するつもりはありません。

しかしこの報道を見て、もし自分の会社の役員が不倫報道の渦中の人になったらどうすればいいんだろうと、少なからず不安を感じた広報の方もいたはずです。そこで今回は「レピュテーションコントロール(評判や世論のコントール)」の視点から、会社としてこのような場合どう対応すればよいかまとめてみたいと思います。

※真相は解明されていませんので、ここでは報道が事実と仮定してお伝えします。

対応その1:事実確認して、経緯を整理

問題が発覚した時は、まず最初に事実確認を徹底的にやります。
今回の経緯をまとめてみました。

(今回の経緯)
・今年8月「NEWSポストセブン」によって、浮気を疑ったとして別居が報じられる
・「女性セブン」(2022年9月8日号)が報じる浮気疑惑について、事務所は「事実無根」と回答
12月1日付けで、篠田麻里子さんの夫は“不倫相手”とされる相手に対して、不貞行為の有無を明らかにするために提訴し、民事訴訟を起こした。
・12/23 「文春オンライン」の取材により民事訴訟が発覚
・「週刊新潮」の2023年1月5日・12日新年特大号で、音声データの内容が報じられる
・12/28 篠田麻里子さんが自身のInstagramで報道を完全否定
・同日にYouTube上に音声データが公開 →報道が過熱(今ここ)

とにかく出来るだけ早く当事者本人に話を聞く機会を設けて事実確認を行いましょう。もう個人だけの問題ではない事態になっているので包み隠さず全部正直に話してもらい、会社としてワンチームで事態の収束をさせます。

対応その2:対策委員会を設置して方針を決める(ただし危機を検知してから出来るだけ早く)

経緯を見る限り、比較的早い段階から予兆は検知できたのかなと感じます。レピュテーションコントロールを成功させるためには、とにかく対応のスピードが命なので、本来であればどんなに遅くても民事訴訟を提訴された時点で、会社に共有して対応の方針を立てるべきだったと思います。

その上で会社としては、次のような選択肢があると考えます。
①完全に静観する
②会社のいろんな関係者に直に謝罪&ペナルティ付きの謝罪声明を一般公開

現時点で取材に対し渦中相手の会社は「私的な事柄について、弊社はお答えする立場にございません」と答えていますが、報道が事実と仮定した場合、(起訴されている関係で、法的観点から情報開示に制限の問題はあるものの)②の選択が賢明なのではと考えます。方針をどうすればいいか迷った時は「一般の人の目線」になって考えると良いですが、今回の場合は特に出資してくれた方や従業員の方の気持ちを想像してみると、自ずと理想的な方針が決まると思います。そして出来れば、対策委員会のチームには弁護士以外にも外部の専門家を加えると客観的な判断をしやすいです。有事対応のお仕事では法的な観点からの判断と、会社への評判や世論の観点からの判断がズレているな〜と感じるケースが少なくありません。このあたり多分全く違う軸なんだと思います。

対応その3:まずはいろんな関係者に出来るだけ直接会いに行って謝罪をする(謝罪は内から外に、報道より先に)

会社には実にさまざまなステークホルダー(関係者)の方がいますが、レピュテーションコントロールを成功させるために、この「マルチステークホルダーマネジメント(いろんな関係者をもれなく丁寧に対応する)」もとても重要なポイントになります。

特に会社に出資してくれた方パートナー企業の方には出来るだけ直接会って、謝罪できる機会を設けましょう。そして顧客従業員そのご家族の方々にも同様に誠心誠意、謝罪とこれからの対応の方針をお伝えします。多くの人は、身近な人のスキャンダルに不安な気持ちになります。報道を見て事態をはじめて知るなんてことがないように、ステークホルダーの対応の順番は近い人(内)からと覚えておきましょう。もちろん私的な部分にはなりますが、渦中のご家族に対して誠意ある対応をお薦めします。

今回はすでに報道が加熱状態にあるので、もし事前に知っていなかったステークホルダーの方には謝罪と、今後会社としてどうしていくかの説明をした方が懸命です。危機はなぜかほとんどの場合終業時間外に起こります。しかも前触れもなく唐突に。実際に本件も報道が加熱したのは、仕事納めで年末の休みに入るタイミングでした。対応される方を思うと心が痛みますが、有事対応は待ったなしです。最優先事項として会社のチームを駆り出し対応しましょう。

対応その4:できればペナルティがある謝罪を公開する(とっても勇気が必要なところ)

内からステークホルダーの方へ謝罪の後に、世間に対して情報公開を行います。報道が事実なら潔く認めて「謝罪、現状と経緯の説明、責任の所在、今後の方針」の内容を盛り込んだ声明を作成し、出来るだけ丁寧に詳細に伝えましょう。その際は、出来るだけペナルティ内容も一緒に公開出来ると尚良いです。

ペナルティとは次のようなことです。この内容は事態の大きさによって決めます。
・役員報酬の返上
・無報酬での勤務
・ストックオプションの放棄
・代表取締役の異動(辞任)など

詳しい説明は省きますが、この場合の情報公開におけるペナルティは「え?こんなことまでするの?」とやりすぎな印象を持ってもらえるくらいがちょうど良いです。

今年9月にスノーピークが社長を、会社が“既婚男性との交際及び妊娠を理由”として辞任させるとIR情報を公表したことが話題になりました。この異例の情報公開は、週刊誌記事を“第1報”としたくない会社の考えによってと報道がありましたが、とても勇気ある迅速な対応だなと思いました。個人的には都心ではなく地方にある優良企業として、いろんな価値観を持つステークホルダーに対しての説明責任も同時に果たせたのかなと感じました。レピュテーションコントロールは、迅速な情報開示によって、報道が長引く事を回避して、出来るだけ早く世の中から忘れてもらうことがポイントです。実際にスノーピークの社長辞任の件は報道が長引いて過熱することはなかったという印象でした。痛みは大きく短く。リスクを正しく取りにいきましょう。

最後に

もしあなたが自分の会社の役員が不倫報道の渦中の人になったら、まず自分に大きな不安の感情が押し寄せてくることに驚くと思います。人は有事のとき、往々にしてパニックに陥りやすく、通常の精神状態と全く異なる状態になります。対応を失敗させてしまった企業の中の人も、後から冷静になってよく考えてみると、あんな対応をしなければよかったと理解できるものです。しかし残念ながら、広報担当者に危機が起きてから、ゆっくり対応を考えている時間はありません。万が一の対応は「準備が9割」です!万が一の時に慌てず迅速な対応ができるように備えをはじめてみませんか。

【書いた人】
大杉 春子/コミュニケーション戦略アドバイザー

民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで支援。コミュニケーション戦略における「攻め」と「守り」の両軸から経営広報の施策をサポート。2020年に専門家らとともに、日本リスクコミュニケーション協会を設立し、リスク管理から危機管理広報までを網羅した、リスクコミュニケーション人材の育成を展開する。

内容についてのご意見やご質問はinfo@razer.co.jpにお願いします。

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