一端の表現者、捻くれ、かく語りき
私は一端の表現者であり会社員であり、ぬるい歌を歌って生きている。私は、ぬるいなんて思っていないし、一端だとも思っていない。だらだらと現状維持をしているようで腹が立つ。傍から見れば、一端なんだ。
誰も手を付けなかった仕事や仕事をサボって後に炎上させる達人の消火活動や諸々、渡すことの方が多い役割。ぞろぞろと定時で帰る人間たちを横目に、苛立ちが隠せない。別に予定がなければ私は淡々と終わらせていただろうが、時間が決まっている予定があったんだ。ライブを観に行く予定があった。何やってるんだろう、と半泣きになりながら慌てて飛び出した。
飛び出せばもう会社員は終わる筈なのに、私は私で志を持って働いているためやるせない気持ちになった。部下はどうしたらもっと頭を使えるようになるのだろうか、とかそもそも共有されている事項については頭に入れておこうよ、とか私よりも長く働いていてその適当さでよくまかり通ったなとか。
自分で言うのもなんだが、地頭は良い方だ。私だって沢山きっと迷惑をかけてきたし、そこから学び取っていったし、何かしてもらったらお返しもしてきたつもりだ。見返りを求めて生きているわけではないが、これ以上呆れさせないでほしいと切実に願った。
そんな気持ちを引きずる予定はなかったが、その足でライブハウスへ入ってしまった。
人が沢山いた。
私は話した事がない、そのバンドとは。だがかつて私がバンドをやっていた頃、知人からそのバンドを例えに出されて、ああいうファンが付きそうだよねと言われた事で私はそのバンドを認識した。確かに、熱狂的な人が沢山いる。
結局私のバンドはこわれ、ファンは付かず、終わった。いやそもそも私のバンドを引き合いに出してはならんくらいに長く頑張って来られているのが目に見えてわかった。
あとバンド時代にスタジオのロビーで見た事がある。一方的に知っていた。
あんな演奏を後ろに表現出来たら最高だろうな、と羨望の目で楽器陣を見ていた。
そして、ああきっとこの人たちは私のように会社員などしていないんだ。私は中途半端にイライラしながら働いている。クソダサい。
どうしたらあんなに人を惹き付けられるのだろうか、同世代であろう人間で自分よりも遥かに結果を残している者を見ると私はまだ純粋に楽しめないらしい。
バンドを辞めてソロになって、自分の音楽をより一層信じてきたし、磨き上げてきたが、他者を巻き込めなければひとりよがりだ。
こんなひとりよがりな人生は、終わらせたいとまで思った。
MCを聴きながら、こんな事を言ってみてえよ…と苦しくなった。曲を聴きながら、聴衆を動かすその力は何なんだろうと。純粋に楽しめない自分の性格の悪さに対して自己嫌悪が止まらなくなった。
才能に嫉妬?実力に嫉妬?正直な話はきっと成果と数字に対してだろうな。努力の賜物に対してこの端くれが何を言う。惨めだ。
音楽性は違うけれど、ソングライティング、シンガーとしてであれば、私には何が足りないのだろうかとずっとずっと考えていた。
私は真っ直ぐ過ぎるほどに負けず嫌いで自信がある分野に関しては盲目で、それはある意味ひねくれてもいて、私に足りない事を見つける作業の中で、他人を凄いと思えたらそれが見つかるのだろうなと思った。尊敬している人は沢山いる、勿論。だが、尊敬とはならなかったのだ、結論。
私だって負けてねえだろ。と、思えない人もいるし思ってしまう人もいる中で、私はそう思いました。
私は私なりの表現をして見たい景色を見てやりたくてたまらなくて、ゴミクズのような気持ちでライブを見ていました。
これがかっこいいと多数が言うなら、それはかっこいいなんだろうな。なんて私の感情は乏しくなったし、過敏にもなっていた。
無駄に培った頭の良さを発揮できる場所で私は報われる努力をしようかしら、音楽を辞めて、仕事で大成しようかねとも思った。だが、毎日の私の居場所は音楽で、きっとライブハウスに行ったら今よりもっと悲しくなるだろうか。それとも、それすらどうでもよくなるくらいに成功しているかもしれない。
楽しく生きているだけじゃ、悲しくなる贅沢病なのだろう。何か結果を残したくて、成功したくて、生きている寂しい人間です。中途半端な自分を上手く愛してやれない。
何年間これを続けるつもりなのか。
そういえば仕事では沢山自分の下の人たちに色々渡している。それで疲弊している。
音楽では私は下の人だが、上の人たちには、どうしてそんなに出来るのかとか特に教わった覚えがない。それで疲弊している。
今日も漠然とした死にたいを引きずるから生きてやると思える。
P.S.
批評のつもりはなくただの独り言であり、私の感情旅行を思い出しただけだ。きっとあのライブの感想は「最高」「よかった」「かっこよかった」「ありがとう」で溢れかえっているのだろう。結果的にそこまで考えられたのは沢山向き合わせてくれた訳だし、「よかった」んだと思っています。
私は、またやさしくなれなかった。クッピーラムネチューハイが、全然その味ではなく驚くほど酸っぱかったみたいな感情。可愛い顔してやるなお主は。
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